第02回 アリストテレス:『心とは何か』
発達科学の先人たち
第02回 アリストテレス:『心とは何か』
1.アリストテレスとその時代
2.『心とは何か』を読む
3.アリストテレスが心理学にもたらした影響
1.アリストテレスとその時代
アリストテレス
前384年 – 前322年3月7日 アリストテレス
プラトン:思弁を好み、理想主義的で、心理を追求するには直接経験を無視
アリストテレス:実証性を好み、現実主義的で、自然観察を通じてこそ心理を到達できる考えた。
アテナイの学堂(画家ラファエロ・サンティ)
プラトンが天を指している(理想主義)のに対し、アリストテレスの手は地に向けられている(現実主義)
逍遙学派(しょうようがくは)、またはペリパトス派
(アリストテレスが創設した古代ギリシアの哲学者のグループであり、彼の学園であるリュケイオンの学徒の総称。)
2.『心とは何か』を読む
1.1題名と構成
『心とは何か』
・世界初の心理学書
・人間の心の問題を体系的に初めて論じた
・psyche「魂」、「霊魂」、「魂について」、「霊魂論」と訳されることが多かった。
・英語の心理学を意味するサイコロジーpsychologyは、このpsycheとロゴスlogosから成り立っている。
http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/koneko/2rekis.html
●第1巻
第1章 心についての探究法と、それに関連する諸問題
第2章 心についての先人たちの見解
第3章 心を運動するものとする説の批判
第4章 心を調和とする説、心を自己自身を動かす数とする説の批判
第5章 心を自己自身を動かす数とする説、諸元素から成るものとする説、万物に内在するとする説の批判
●第2巻
第1章 心の一般的な定義
第2章 原因としての心の定義
第3章 心の諸能力と種に固有な定義の与え方
第4章 栄養摂取能力、生殖能力
第5章 感覚について論じるための重要な術語 ほか
●第3巻
第1章 感覚の種類の数、共通感覚
第2章 共通感覚のはたらき、判別する能力
第3章 感覚と思考の区別、心的表象
第4章 思惟するものとしての理性
第5章 作用する理性と作用を受ける理性 ほか
2.2心を探究するということ
「心に関する研究に第一級の地位を与えるのは当然のことだろう、、、、心はいわば生物の原理だからである。」
心の本質は何かを見極め、それを分類、定義することが必要としている。
可能態
終局態
2.3心の本質(第2巻)
「心」の暫定的な定義「可能的に生命をもつ自然的物体のいわば形相」
物体:「身体」に近い意味を含むが、「命あるもの」という意味が最初から付与されるので物体としている。
形相:アリストテレスが物事の成り立ちを説明するのに提案した4つの原因の一つで、形を与えるものとしての原因や、物事が持つ能力、機能、形式を意味する。
質料:材料としての原因、すなわち事物の素材(物資的成分)である。
プラトン:すべてを物質に還元することはできず、事物を成立させるには、それを支える機能や形式が必要だと考えた。それは感覚によって直接、知覚されない事物の本質であり、これをイデアと名付けている。形相を質料から分離できるものと考えた
アリストテレス:イデアの考えを受け継いでいるが、眼前にある物、それ自体に含まれており、感覚を通じて理解できるとしている。形相と質料の両者は分かちがたく結びついていると考えた
「可能的に生命をもつ自然的物体の第一の終局態」と言い換える
終局態:終わりや目的といった意味を含む造語である。
実現態:終局態と同じ意味で使われる
可能態:能力や可能性を意味する。対語「終局態」及び「実現態」
形相:終局態
質料:可能態
第一の終局態:ある能力や機能が備わった状態
第二の終局態:その能力が発揮されている状態
アリストテレス:心を「生命体がある能力(機能)を備えた状態」と言い換えている
「可能的に生命をもつ自然的物体」を(生きるための)「道具としての器官をもつ自然的物体」とも言い換えている。
心身の同一性、一体性を明言している。
心というのは、第一の意味で「それによって私たちが生き、感覚し、思惟するもの」であり、したがって、一種の定義内容であり、形相であって質料すなわち基体ではないことになる。
具体的に生命を与える能力として
栄養摂取能力
感覚能力(視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚)
欲求能力
場所的に移動する能力
思考能力
アリストテレスは、植物にも動物にも心は宿っている。すべての生物に宿る心はまったく同じと考えではなく、心の諸能力には階層性がある。
植物:栄養摂取能力
動物:感覚能力、欲求能力、場所的に移動する能力 ユングの言う、「おそらくすべての動物にとっても共通するようなもの」第10回 ユングのとらえた自我と無意識の相補的関係 – LIFE-SHIFT (lifeshift.site)
人間:思考能力、理性
http://saintcross.jp/kaian/book/2_4.php
植物に「意識」はあるのか?
植物は音を「聞く」ことが可能と判明
2.4感覚と理性(第3巻)
共通感覚:複数の感覚を統合するもの
受動的理性:身体とともに死滅
能動的理性:死滅後も、生き残る
意識は「物質と電磁気エネルギー」であるとする新理論。もしそうならAIに意識を宿すことも可能となる(英研究)
3.アリストテレスが心理学にもたらした影響
「心とは何か」がもっとも有名だか、
「自然学小論集」には
「感覚と感覚されるもの」、「記憶と想起」「睡眠と覚醒」「夢」「夢占い」「長命と短命」「青年と老年」「生と死」「呼吸」のように心理学に関係が深いトピックがある。
「政治学」に「人間は社会的動物である。」社会心理学 (心理と教育へのいざない。第08回)
Love is composed of a single soul inhabiting two bodies.
Aristotle
愛とは、二つの肉体に宿る一つの魂で形作られる
アリストテレス
We are what we repeatedly do. Excellence, then, is not an act, but a habit.
Aristotle
人は繰り返し行うことの集大成である。だから優秀さとは、行為でなく、習慣なのだ。
アリストテレス
The greatest virtues are those which are most useful to other persons.
Aristotle
最大の美徳は、他人の役の立てることだ。
アリストテレス
Dignity does not consist in possessing honors, but in deserving them.
Aristotle
威厳とは、名誉を得ているという事ではなく、名誉に値するという事から成る。
アリストテレス
He who is to be a good ruler must have first been ruled.
Aristotle
人に従うことを知らないものは、よき指導者になりえない。
アリストテレス
アリストテレスの名言をすべて見る
発達科学の先人たち
目次
1 発達科学と先人の足跡
2 アリストテレス:『心とは何か』
3 貝原益軒:『和俗童子訓』
4 ダーウィン:『人及び動物の表情について』
5 ヴント:『民族心理学』
6 デュルケム:『道徳教育論』
7 シュタイナー:『子どもの教育』/『教育術』
8 モンテッソーリ:『子どもの発見』
9 バートレット:『想起の心理学』
10 ピアジェ:『思考の心理学』
11 ハーロウ:『愛のなりたち』
12 アリエス:『〈子供〉の誕生 アンシァン・レジーム期の子供と家族生活』
13 清水義弘:『試験』
14 土居健郎:『「甘え」の構造』/『続「甘え」の構造』
15 先人たちと現代社会
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