第1回 精神分析とユング心理学―その出会いからそれぞれの展開へ
2023.11.11 一回目
2024.01.02 二回目
精神分析とユング心理学は、自分自身の心を見つめ、その無意識と意識のあいだに生じる相互作用に着目する心へのアプローチである。ユングとフロイトの出会いから訣別までをたどりながら、二人の間に何が起こったのか、精神分析とユング心理学の理論やアプローチの相違点を理解し、それぞれの理論の発展過程を概観する。
【キーワード】
フロイトとユング、精神分析、分析心理学、無意識、転移、リビドー、欲動
無意識とは、意識を失っている状態(ふつうの心理学や精神医学での用法)、または精神分析学を創始したジークムント・フロイトの発見に始まる心的過程のうち自我では把握できない(意識できない)領域を言う。
転移 クライエントが、過去に重要な他者(両親など)との間で生じさせた欲求、感情、葛藤、対人関係パターンなどを、別の者(多くの場合は治療者)に対して向ける非現実的態度を転移と呼びます。
過去の重要な他者に向けられていた愛着欲求や依存欲求が向けられることを陽性転移、敵意や攻撃欲求が向けられることを陰性転移と言います。
リビドー(欲動)性に関する述語
はじめの問いは、何が私たちを不安にし、葛藤を引き起こし、発達の契機となるのだろうか?
欲動は身体的な基盤をもつが、それそのものの知覚はできない。欲動は、それが心理的な表象内容と形式を得るに至ったものであり、その根底を動かしているエネルギーを”リビドー”と呼んだ(第4回 心の構造をとらえる)
精神分析では、夢であっても面接中に伝えられるイメージや表象内容であっても、いま・ここで展開している転移とつなげて解釈されなければ、知的なものになってしまうと考えている。(第2回 精神分析臨床がめざすもの、第6回 内的世界の理解:対象関係論、第7回 精神分析的心理療法の実際)
「リビドーの変容と象徴」(第9回:近代的パーソナリティ研究の先駆者としてのユング)
この研究上の意義についてエレンベルガーは次のようにまとめている。
1)リビドーは、心的エネルギーとして拡大解釈して扱っている。
2)リビドーは、普遍的な象徴の形で現れると考えた。
3)母からの解放を求める英雄の闘いが中心テーマとなっている。
フロイトと出会う以前のユングによる心の探求は、(第9回:近代的パーソナリティ研究の先駆者としてのユング、第10回 ユングのとらえた自我と無意識の相補的関係の)言語連想検査研究やオカルト現象の心理研究として紹介。
フロイトの精神分析活動に参加する中で明確になってきたパーソナリティの類型論(タイプ論)や自我と無意識の相互的関係については第10回 ユングのとらえた自我と無意識の相補的関係
フロイトの精神分析活動から離れて以降のユング独自の集合的無意識や元型の理論については、第11回 ユングによる無意識の探求―集合的無意識の発見、第12回 ペルソナ形成と影の出現、第13回 心の中の異性像アニマ/アニムスがもたらす心の発達過程
ユングによる生涯発達理論や心理療法において生じる転移の意義については第14回 ユングの個性化理論―自己を生きるということ
ユング自身の心理療法論や技法、その展開については第15回 ユングの心理療法とその技法の展開