第09回 近代的パーソナリティ研究の先駆者としてのユング

一回目 2023/12/04
二回目 2024/01/20

概要
C.G.ユングは、近代におけるパーソナリティ研究の先駆者の一人である。言語連想実験を活用して、無意識の作用を実験精神医学の手法によって証明する研究を行い、そこで見出されたコンプレックス概念により、フロイトの「抑圧」概念を裏付けた。さらに、『心理学的類型論』は、人間のパーソナリティの多様性をとらえる視点を提供しており、その後のパーソナリティ研究に多大な影響を与えている。

タイプ論、言語連想実験、コンプレックス、外交-内向の軸、心の4機能


1.言語連想実験からの発見:コンプレックス

強い感情が付与されたコンプレックスが動き始めると、自我にもコントロール不能な身体化症状が出現したり、極端な場合には、自我がそのコンプレックスとおこ変わってしまうことがあるという。

自我とは別個の人格が出現する多重人格であったり、憑依とよばれる状態である。またユングは分裂病(現代の統合失調症)の症状とコンプレックスとの関連を指摘した。

2.コンプレックス概念を通してさまざまな心の症状を理解する試み

「今日では、誰もが自分たちが「コンプレックスを持っている」ことを知っている」

意識と心は同じものと見なされるとして「意識の統一性および、意志の優越感という素朴な前提は、コンプレックスの存在によってきわめて危ういものにされてしまいます。」

ユングの理論(外傷的な体験に関わる強い情緒に彩られたコンプレックスの依存を過程する)→現代の神経ネットワークモデル

コゾリノ(L.Cozolino 2002)精神テラピーの神経科学:人間の脳の構築と再構築。ニューヨーク: W W Norton & Company.

神経ネットワークは個別の機能ごとにモジュールに分割されており、各モジュールは同時並行的な活動を営みつつ、全体との統合を保つ。解離はその統合が一時的に失われた状態として理解されている。

3.20世紀のパーソナリティ研究における心理学的類型論の位置づけ

深層心理学(フロイトとユング)

類型型アプローチ クレッチマー「体格と正確」(1921)

シュプランガー「生活の形式(Lebensforman)」(1921)

4.ユングによる心理学的類型論の概要

パーソナリティの5因子構造

5因子(ビックファイブ)

「外交-内容」関心や心理的エネルギーの方向性によって区別される一般的な構えによって区別される。

内向型の人は、客体を無視する。「このタイプが自らを方向づけるさいには、感覚的刺激を受け取る主観的素質としての知覚や認識という要因を基準にする。」

「関心が客体に向かわずに、客体から主体へ引き戻されるのである」彼らは、現実世界の事物や人そのものではなく、それらが彼らにもたらす主観的体験を重視する。

1)合理的機能:思考・感情

思考は正しいか、正しくないか

感情は好きか、嫌いか

2)非合理的機能:感覚・直観

感覚は五感による感覚、感覚器官や身体感覚による知覚

直観は一種の本能的把握であり無意識的な知覚。

「2方向×4機能」のタイプに分けることができる。

・外向的思考と内向的思考

・外向的感情と内向的感情

・外向的感覚と内向的感覚

・外向的直観と内向的直観

5.心理学的類型論からの示唆

得意な機能は、外界とかかわることでさらにその機能が分化されて発達する。

得意でない機能は、十分に分化されない機能は劣等機能とよばれる。

意識から遠く、無意識の領域に留まっている機能である。

→劣等機能を意識化し分化させていくことを重視していた。

 

 

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