第15回 ユングの心理療法とその技法の展開

一回目 2023/12/25
二回目 2024/01/24

ユングの分析心理学理論は、実験精神医学を起点として、自らの心と向き合う作業、広範な文献研究、さらにクライエントとの分析という共同作業により構築されてきた。ユングは、心理療法の実践において、そのプロセスをどのように理解し、どのような方向性を見出してきたのだろうか。彼の試みた心理療法の技法は、その後のユング派において、どのように展開されてきたのだろうか。

【キーワード】
転移、変容、意識化、個性化、夢の分析、アクティブ・イマジネーション、箱庭療法


1.ユングはどのような心理療法を行ったのか

ユングの転移に対する考えは

「治癒のためには転移はぜひとも必要であり、したがって医師は転移を要求しなければならない。とさえ考えられた。しかしこのようなものは、信仰と同様に、要求できるものではない。信仰はそれがおのずから存在する時にのみ価値がある。・・・私個人としては、転移が穏やかに経過すると、あるいは臨床上現れないと、そのつど胸をなでおろす。この時、医師は患者との個人的な問題にほとんど煩わされることなく、治癒に役立つその他の要素に取り組むことができる」(Jung 1945)

古代人と共通する心性を見出して、集合的無意識の発見に結び付けた。第11回 ユングによる無意識の探求―集合的無意識の発見 – LIFE-SHIFT (lifeshift.site)

私たちは、自我を超える心の機能、理性ではとらえられない非合理的な側面、無意識の領域に直面することになる。

ユングこそ、そのような非合理的な心の現象を、客観的にとらえ、合理的に理解しようとする心理学者であることがわかる。

セラピストがなすべきことは、「治療というよりはむしろ患者の中にある創造的な芽を成長させることである。」創造的な芽とは、その人自身の人生を生きる主体の芽である。人間やその心を、自然の一部としてとらえる視点にあるのか、自然は常に、理性すなわち自我の意図を超えて働くのである。

2.ユングの心理療法の基盤を構成する発達観と神経症論

人生後半において生じる困難の背景には、「能力は努力さえすれば伸び続けるものであり、その結果得られる社会的成功や達成が人生の目標である。」という思い込みがあるのかもしれない。

ユングは、自我および欲望を超越しようとする心の働きの主体である「セルフ(自己)」が発現する現象を自己実現(self realization)としてとらえ、この過程を生涯にわたって継続する個性化と呼んだ。この個性化こそ、ユングにとって心理療法の目的であり、心の障害発達の目標でもあった。

3.ユングによる心理療法の4ステージ論

第1のステージ:告白(Confession)

第2のステージ:解明(Elucidation)

第3のステージ:教育(Education)

第4のステージ:変容(Transformation)

4.ユングが用いた心理療法の技法

1)夢の分析

2)アクティブ・イマジネーション

 

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