第1回 心理学研究法入門1:心理学研究の基礎知識

心理学研究法(’20)

Psychological Research Methods (’20)

主任講師名:三浦 麻子(大阪大学大学院教授)

【講義概要】
心理学の諸領域で用いられている基礎的な研究法について講義する。学習者が自らテーマを設定して研究を計画し、一連の科学的実証手続きを経てそれを遂行できるようになることを目指して、心理学の研究者・実践家としての心構えを含めて、スキルとテクニックを教授する。

【授業の目標】
心理学の諸領域で用いられている基礎的な研究法を学び、それらをふまえて自らテーマを設定して研究を計画し、収集したデータを分析・考察するという一連の科学的実証手続きを遂行するためのスキルとテクニックを習得することを目指す。

【履修上の留意点】
各回のテーマと授業内容
第1回 心理学研究法入門1:心理学研究の基礎知識

心理学研究に着手するにあたり、誰もが共通理解をもっておくべき重要事項について解説する。それぞれの研究法を詳しく学ぶ前に、なるべくわかりやすい例をあげて大づかみな理解を目指す。

【キーワード】
実証科学、概念、変数、妥当性と信頼性、相関と因果

執筆担当講師名:三浦 麻子(大阪大学大学院教授)
放送担当講師名:三浦 麻子(大阪大学大学院教授)


1. 心理学を「研究する」ということ
2. 心理学研究の基礎知識
(1)概念的定義と操作的定義
(2)妥当性と信頼性
(3)相関と因果
(4)さまざまな変数
3. リサーチ・クエスチョンの設定


変数 X と変数 Y の因果関係(変数 X が原因となって変数 Y の変動が引きおこされるという結果が生じる関係)を決定するための条件として,次の①~④の中から誤っているものを一つ選べ。

① 2 つの変数の時間的な前後関係があること

①は正しい記述です。原因が結果より後に生じることは考えられません。変数Yが変数Xより後に生じた事柄なのであれば,変数Yが変数Xの原因だということはありえません。(時間的先行性)

② 2 つの変数以外に因果関係に関わる変数がまったくないこと

②は誤った記述です。変数Yには特定の要因として変数Xがあり,その要因があれば結果がある,という関係が成り立つという条件を満たす必要はありますが,変数X以外にも変数Yの要因となりうる変数が存在することを排除するものではありません。

③ 測定の対象や時期が異なっていてもその関係が認められること

③は正しい記述です。例えば,日本だけではなくアメリカやヨーロッパでも同様にその事実が認められる,といったように,どんな場合でも一致して同様の因果関係が見られることが条件となります。(関連の普遍性)

④ その関係が外的基準によって検証できること

④は正しい記述です。示された因果関係が,例えば従来の経験や理論など外的基準に当てはめた場合に,それらによって矛盾しない説明がつくことが条件となります。(関連の整合性)


第1回 心理学研究法入門1:心理学研究の基礎知識

心理学研究に着手するにあたり、誰もが共通理解をもっておくべき重要事項について解説する。それぞれの研究法を詳しく学ぶ前に、なるべくわかりやすい例をあげて大づかみな理解を目指す。

【キーワード】
実証科学、概念、変数、妥当性と信頼性、相関と因果

第2回 心理学研究法入門2:研究法概説

心理学研究で用いられる6つの代表的な手法について概説する。研究テーマに適合した適切な手法を選ぶために、それぞれの基本的コンセプトと特徴、特に利点と限界についてよく理解することを目指す。

【キーワード】
実験法、調査法、観察法、面接法、検査法、介入研究法

第3回 心理統計法:記述統計と推測統計

心理学で測定するデータの特徴について説明した上で、得られたデータそのものの特徴を知る統計手法(記述統計)とその背後にある対象の全体像を見通す統計手法(推測統計)について概説する。

【キーワード】
尺度、基礎統計、推測統計、統計的仮説検定、ベイズ統計

第4回 実験法1:実験法の基礎

心理学研究の主要な研究法である実験法について学ぶ。独立変数の操作、従属変数の測定、剰余変数の統制に関する基礎的知識を身に付け、実験的研究をおこなう上で配慮しなければならない問題点について理解する。

【キーワード】
実験法、実験計画法、剰余変数の統制

第5回 実験法2:心理学的測定法の基礎

実験では、実施された実験操作の結果をとらえるために、従属変数として様々な行動的・生理的指標が測定される。それらの従属変数をどのように分析・解釈するのかについて、具体的な研究例を通して学ぶことで、心理学的測定法の基礎を身に付ける。

【キーワード】
行動指標、生理指標、心理物理学的測定法

第6回 調査法1:調査法の基礎

調査法の特徴を知り、研究実施に関する手順、サンプリングや調査方法の種類について理解する。心理尺度の作成過程の前半として、構成概念や項目作成の手法、内容的妥当性について学び、調査法の基礎を身に付ける。

【キーワード】
調査法、サンプリング、心理尺度、構成概念、内容的妥当性

第7回 調査法2:尺度作成の基礎と調査法の実際

心理尺度の作成過程の後半として、回答方法の選定や調査票の構成について学び、項目選定の基準や心理尺度として必要な要件について理解する。様々な心理尺度や調査法の例を通して調査法の活用について考える。

【キーワード】
回答方法、調査票、信頼性、妥当性

第8回 観察法1:観察データの測定

観察データを測定するために必要となる理論と具体的な技法について学ぶ。観察された行動を解析可能なデータとして整理するための技法として、産物記録法や時間見本法といった代表的な測定法について理解する。

【キーワード】
行動観察、産物記録法、時間見本法

第9回 観察法2:観察データの解析

定量的に測定された観察データを解析するための手法を理解する。観察データの信頼性と妥当性の評価とグラフ化の方法を身に付けた上で、観察データに適用される統計解析の実際について学ぶ。

【キーワード】
信頼性、妥当性、グラフ化、観察データの統計解析

第10回 面接法1:臨床的面接法

面接法の種類とその特徴を知るとともに、ラポールの重要性について学ぶ。そして基本的面接スキルについてアイビーのマイクロカウンセリングに基づき学習し、さらに面接法を用いた事例研究のあり方について理解する。

【キーワード】
ラポール、マイクロカウンセリング、非言語的コミュニケーション、事例研究

第11回 面接法2:調査的面接法

観察法や質問紙法と比較しつつ面接法がもつ特徴について学び、研究法上の位置づけについて理解する。また構造化の程度に基づく面接の進め方について学び、最後に面接結果の整理と分析方法について理解する。

【キーワード】
構造化面接、半構造化面接、非構造化面接、トランスクリプト

第12回 検査法

検査法の歴史および目的について学ぶとともに、知能検査やパーソナリティ検査のうち、代表的な検査の特徴について理解する。そして研究への応用を念頭に、検査法の実施上の留意点と倫理的課題について学ぶ。

【キーワード】
知能検査、パーソナリティ検査、投影法、テストバッテリー

第13回 介入研究法

心理療法や心理学的支援などの介入の効果を明らかにすることを目的とした、介入研究法の基礎について学ぶ。介入法が有効とみなすことができる条件や、具体的な介入研究の手続きについて理解する。

【キーワード】
介入研究、ランダム化比較試験、一事例実験デザイン

第14回 心理学研究の倫理1:基礎的研究の実施のために

心理学研究のプロセスで「なすべきこと」を参加者への配慮を中心に、「やってはいけないこと」をデータ収集や分析段階に犯してしまいがちな行為を中心に、具体的に紹介する。科学としての信頼性を守るための取り組みにも触れる。

【キーワード】
倫理審査、QRPs、再現可能性、オープンデータ

第15回 心理学研究の倫理2:臨床的研究の実施のために

臨床心理学に代表される臨床的研究を実施する上で求められる研究倫理について概説する。配慮が必要な対象者や心理学的介入の実施など、臨床的研究に特徴的なリスクについて学び、研究倫理委員会の役割について知る。

【キーワード】
研究倫理、臨床的研究、研究倫理委員会

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