第09回 「見える」から「見る」へ:心理学と臨床心理学

心理と教育へのいざない。
第09回 「見える」から「見る」へ:心理学と臨床心理学

知覚は実験心理学から、発達心理学や社会心理学、そして臨床心理学まで、心理学の幅広い対象となっている。第9回では、知覚体験を心理学の研究分野によってどう捉えているかについて考え、心理学と臨床心理学についての理解を深める。

【キーワード】
ゲシュタルトの原理、仮現運動、恒常仮定、恒常現象、幾何学的錯視、ニュールック心理学、知覚的防衛、錯覚、幻覚

小川 俊樹(放送大学客員教授、筑波大学名誉教授)


1.はじめに
2.ものはどうしてそう見えるのか:知覚心理学
3.人にはどうしてそう見えるのか:知覚の歪み
4.適応と知覚:病態的知覚現象について
5.おわりに


1.はじめに
認知(感覚、知覚):外的刺激を受け取る心的機能、視覚、聴覚、臭覚の働き

2.ものはどうしてそう見えるのか:知覚心理学
心理的世界と物理的世界とは、同一ではないのである。

(1)ゲシュタルトの原理 心理的世界と物理的世界
ゲシュタルト心理学者
マックス・ヴェルトハイマー(Max Wertheimer 1880年 – 1943年):『運動視の実験的研究』(1912)、『生産的思考』(1945)
ヴォルフガング・ケーラー(Wolfgang Kohler 1887年 – 1967年):図形残効、『類人猿の知恵試験』(1917)、『物理的ゲシュタルト』(1920)
クルト・コフカ(Kurt Koffka 1886年 – 1941年):『発達心理学』(1921)

仮現運動かげんうんどうapparent movement
運動の知覚
恒常仮定:刺激とその知覚が1対1の対応をしていること。
仮現運動は、恒常仮定では説明できない。

ゲシュタルトの原理、
ゲシュタルトの法則とは? 資料作りの前にチェック!
ゲシュタルトの法則は、複数の要因で構成されています。以下の7つに分けられることが多いようです。
近接の法則(Law of Proximity)
類同の法則(Law of Similarity)
連続の法則(Law of Continuity)
閉合の法則(Law of Closure)
共通運命の法則(Law of Common Fate)
面積の法則(Law of Area)
対称性の法則(Law of Symmetry)

(2)誤った知覚 恒常現象と幾何学的錯視
恒常現象とは – コトバンク
幾何学的錯視とは – コトバンク
色の恒常性
幾何学的錯視とは – コトバンク
一般的な錯視と病理的な錯視に分かれる。

視覚というモダリティだけでなく、触覚という別個のモダリティにおいても認められることは、ミューラー・リヤー図形の錯覚に大脳という中枢か゜深く関わっていることを示している。
錯覚が教えてくれる脳のメカニズム
私たちは何を見ているのだろうか—錯視・錯覚から迫る脳の視覚情報処理メカニズム—
錯覚が起きているのは脳ではなく、目の「網膜」だと判明!
ベルベットの触感を生む錯覚に関わる脳の活動の一端を解明

3.人にはどうしてそう見えるのか:知覚の歪み
心理的世界と物理的世界の相違ではなく、同じものが観察者によって異なるという違いもある。

(1)知覚に及ぼす欲求の影響:ニュールック心理学
ニュールック心理学とは – コトバンク
ジェローム・ブルーナー
ニュールック心理学とは? 社会的知覚とその具体例

柿崎は、知覚判断が知覚としいその機能単独なものではなく、過去の経験など記憶が関与したもの。
知覚表象(「視覚表象」「聴覚表象」)

ロールシャッハ エングラム(記憶痕跡)と知覚
自我機能
知覚的防衛 「人間は自分に不利益な事象について目をそらしてしまう習性=(知覚的防衛) をもっている」
小さなコツコツ脱獄日記

(2)日本人と米国人の見方の違い:文化心理学
ロールシャッハ・テスト – Wikipedia
ロールシャッハ – Wikipedia

何に見える化よりも、どのように見ているかを重視した。反応形成に関わる領域、視野を問題としている。
石井は、西洋における人々が分析的視点を取るのに対して、東アジアにおける人々は包括的視点を抱きがちなのではないかと考察している。

4.適応と知覚:病態的知覚現象について

病態心理学(異常心理学は差別的であり好ましくないため)

知覚:物理的知覚刺激が適当な歪みをもって現象的な体験される場合
錯覚:その歪みが著しく適応上に問題を生じるような場合、一般的な錯視と病理的な錯視に分かれる。(錯視、錯聴、錯嗅、錯触、錯味)
不注意性錯覚
情動性錯覚
力動性錯覚
バレイドリア

瓜二つの錯覚
フレゴリの錯覚

幻覚:刺激がないにも関わらず、知覚が想起すること。「知覚すべき対象がない知覚」。(幻視、幻聴、幻嗅、幻触、幻味)
ポステル(Postel.j 1993)は幻覚の生じる要因として、以下があるとしている。
意識状態の変容と関係した生理的要因、
極度の不安や恐怖、あるいはエクスタシー状態などの特殊な情動状態、
幻覚発現剤や脳器質的障害によって引き起こされる神経系の機能異常
精神病的状態

5.おわりに

知覚という心理的体験を対象に、以下を紹介した。
刺激との関係から体験を考えていく実験心理学や知覚心理学からのアプローチ
観察者の心理的属性が与える知覚の歪みへのパーソナリティ心理学や臨床心理学からのアプローチ
病理的な知覚体験への心理学的アプローチ

知覚体験は、どの側面に、どのような色を当てるかにより、対象の浮かび挙がってくる象がことなるのである。

 


心理と教育へのいざない。

目次

1 教育とは
2 教育と社会
3 教育と行政:教育の政策、法・制度、管理・経営
4 学校教育
5 大人が学ぶ理由:生涯学習
6 記憶のしくみ:教育心理学
7 赤ちゃんの心:発達心理学
8 対人認知:社会心理学
9 「見える」から「見る」へ:心理学と臨床心理学  ← 今回
10 臨床心理学と心理療法
11 イメージを用いた心理療法
12 教育現場におけるカウンセリング
13 医療における心理臨床
14 あいだの臨床心理学
15 課題と展望

 

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