現実とは幻である。神経科学者が教える「脳が現実を作り出すために幻覚を見せる方法」

現実とは幻である。神経科学者が教える「脳が現実を作り出すために幻覚を見せる方法」

2017年08月18日

これまでも、我々が現実と感じているものは、それまでの知識や経験に基づいたもので、脳が作り出した幻想であるとする研究結果が報告されていたが、つい最近、英サセックス大学の神経科学者アニル・セス博士が我々が認識する現実、つまり意識の起源について論じた。

彼は議論を始めるにあたってまず、「意識はどのように発生するのだろうか?」と聴衆に問いかけた。セス博士によれば、意識は科学と哲学に残された最大のミステリーだという。

 この問いに続いて、セス博士はその重要性について説明した。

どの脳の中でも、それぞれが小さな生物マシンである数十億もの神経細胞による共同作業が行われており、それが意識体験を生み出しています。

しかもただの意識体験ではなく、あなた自身の今ここにおける意識体験です。一体これはどのようにして起きているのでしょうか?

私たちそれぞれにとっての意識はそこにあるものすべてです。だからこそ、この問いに答えることが重要なのです。世界がなければ、自己もいません。一切が存在しなくなります。

 

意識と生命は表裏一体。物質は意識の派生物である。

マックス・プランクは「意識は基本的なものである。物質は意識の派生物である」と述べた。つまり、意識は物質の形成に必須であるということだ。

どいうわけか、この2つのまったく別個に思える現象は、私たちがいまだ完全には理解していないやり方で絡み合っている。

ある論文は、物理的現実の性質を形作る意識の役割を探るために二重スリット実験がいくども利用されてきたことを指摘する。

セス博士は、意識と生命もまた表裏一体であると論じる。知性と自己認識が真の標識であると論じられることもある一方、彼は意識が「私たちを生かし続ける生物学的メカニズムによって形成」されたことを論証しようとする。

実のところ、意識のあるAIが生まれる見込みはかなり低いと思います。その理由は、私の研究が告げていることが、意識は純粋な知性とはあまり関係がなく、むしろ生きて呼吸する生命体としての私たちの性質に関係があるということだからです。

意識と知性はかなり別物です。苦しむために賢い必要はありませんが、おそらく生きている必要はあるでしょう。

制御された幻覚

自分が脳になったところを想像してみよう。頭蓋骨の内部には光も音もない。何もかもを五感から届けられる電気的なインパルスに頼らなければならない。

こう話したセス博士は、いくつか錯覚の事例を取り上げた。そこでは感覚が真実をごまかそうとしている。

脳は受け取ったインプットを基にして、私たちが意識的に体験することがらを常に変化させている。

セス博士が取り上げた事例は驚くべきものだが、究極的には、多くの場合、脳が受けとる感覚情報は変化していないことを示している。変化しているのは、私たちが体験していることがらに対する認識だ。

プラトンは正しかった。感覚は本当に私たちを騙しているのだ。

 

つまり、そこに何があるのか理解しようとする認識は、情報に基づいて推測しようとする作業、つまり脳が感覚信号とその感覚信号を発する世界とはきっとこうであろうという従前の予測や信念を組み合わせるプロセスでなければなりません。

脳は音も聞かないし、光も見ません。私たちが認識しているのは、世界の様子についての妥当と思われる推測なのです。

脳と身体が意識を生じさせているのか?

取り上げた事例からは、私たちがただ受動的に世界を認識しているのではなく、積極的に作り出していることも分かる。

私たちが体験している世界とは、外部からもたらされるのと同じくらい、内部からももたらされているのである。

私たちは常に幻覚を作り出しています。今この瞬間にもです。その幻覚について同意するとき、それを現実と呼んでいるにすぎません。
あなたの自分という体験、すなわちあなたであるという特定の体験もまた脳によって作られた制御された幻覚です。

この分野の多くの者たちが認めざるを得ないことがある。

それはまだ完全には理解されていないことだが、物理物質世界の宇宙と私たちの体験は実は心が作り出したものであるということ、あるいはごく控えめに見ても意識がその創造に根本的な役割を果たしているということだ。

ジョンズ・ホプキンス大学のR. H. ヘンリーはネイチャーで次のように述べている。

ジェームズ・ジーンズによれば、『次々ともたらされる知識は非機械的現実に向いている。宇宙は偉大な機械というより偉大な思考であるかのような姿を現し始めている。

もはや心は物質領域に偶然紛れ込んでしまった侵入者には思えない。むしろそれを物質領域の創造者や支配者として迎えるべきだ』……宇宙は非物質だ――精神的かつスピリチュアルなものだ。生きて、楽しむがいい。

Is Consciousness More than the Brain? | Interview with Dr. Gary Schwartz

 

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