核融合に第3の方式が浮上、2024年にも発電開始へ 商用運転は最短で2028年か

最近になってにわかに注目を集め始めた核融合発電技術だが、実用化は早くても2030年代半ば。やや保守的な評価では2050年かそれ以降という見方も多い。ところが、2024年にも発電を始めるというベンチャーが出てきた。

それはこれまでよく知られている大きく2つの方式、具体的には日本を含む数多くの国家が開発に参加し、フランスに建設中のITERのようなトカマク方式と、2022年11月に米国でレーザー光のエネルギーを超える核融合エネルギーが得られたレーザー核融合方式のどちらでもない、第3の方式「FRC(磁場反転配位)型プラズマ」に基づく注1)。核融合反応で中性子を出さず安全性が高く、簡素な設備で、しかも蒸気タービンを使わずに発電できる革新的な方式である。

注1)本稿では、ヘリカル方式はトカマク方式の改良版という位置付けとする。

2つのプラズマが高速で衝突

このFRC型プラズマ方式では、ドーナツ形状の磁力線に閉じ込められたプラズマを2つ発生させる。これらはそれぞれ磁石の性質を備えており、リニアモーターの原理で動かせる。それらを高速で衝突させて超高温を実現し、“燃料”を核融合させる(図1)。

図1 第3の核融合方式が発電一番乗りか
図1 第3の核融合方式が発電一番乗りか
FRC(Field-Reversed Configuration)型プラズマを利用する核融合発電の概要とメリットを示した。FRC型プラズマ(またはプラズモイド)はドーナツ状の自律した磁場中にプラズマを閉じ込めたもの(a)。
磁場のうち、ドーナツの大きな輪に沿った成分Btは2つのプラズマで反対方向を向いている。これら2つを衝突させると、Bt成分が打ち消し合って加熱が進む。ただし、Bt成分を使わない実装もある。このFRC型プラズマ方式の長所は大きく3つある(b)。
1つは、原理上、トカマク式などより弱い磁場でプラズマの強い閉じ込めができること。これにより、装置をよりコンパクトに、あるいは高温の実現が可能になる。より高温を実現できることで2つめのメリット、つまりD-3He反応やp-11B反応といった中性子が出ない核融合反応も実現可能になると考えられている。これは、安全性が高いだけでなく、炉の素材や構造を大幅に簡素にできる。コストをかけられない実験装置でも実験しやすくなる。メリットの3つめは、プラズマを用いて電磁誘導で発電でき、発電にお湯を沸かして蒸気タービンを回す必要がない点。発電効率を大幅に高められる可能性がある上に、やはり装置を簡素にできる。(出所:(a)は日経エレクトロニクス、(b)は日経クロステック)

プラズマを発生させる部分はトカマク方式に似るが、2つの高いエネルギーを衝突させて核融合を起こさせる点は、「慣性閉じ込め方式」とも呼ばれるレーザー核融合に似ている。しかし、プラズマを高速移動させたり、2つのプラズマの磁力線には互いに逆向きの成分があり、衝突時にそれらが打ち消し合って高い温度になったりする点は類似技術がなく、この方式ならではの手法といえる注2)

注2)実装方式によって、この逆向きの成分(トロイダル磁場)がゼロのケースもある。
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