第5回 精神分析における心の発達論
一回目 2023/11/18
二回目 2024/01/07
精神分析による心の発達のとらえ方は、欲動中心から二者関係の視点、環境との相互作用をふまえた発達論へと展開している。親(養育者)との情緒交流を通した自己の形成、その不全が精神病理に及ぼす影響についても検討されてきた。空想や不安の質をみきわめて関わっていくときに、発達論が理解の基盤を提供する。
【キーワード】
精神-性的発達論、発達ライン、ポジション論、分離-個体化、自己感の発達
1.フロイトの精神ー性的発達論
・性欲動(リビドー)が人間の精神発達を支配するというもの
・理論化は乳幼児の直接観察によるものではなく、成人の精神症患者による想起をもとに遡及的に最高せいしたものである。
口唇期(oral phase)・・口唇帯(口腔粘膜)が欲動をまとめて心を構造化する主要な役割を果たす。
肛門期(anal phase)・・肛門領域の刺激過敏性の利用による苦痛と快をもとに快を自分でコントロールすることがテーマとなる。
男根期(phalic phase)/早期性器期(early genital phase)・・発達してきた性器のもとに部分欲動がまとめられる。
エディプス期(oedipal phase)・・男の子は父親への同一化が、女の子は母親への同一化が起こる。
潜伏期(letency phase)・・子どもの性的活動性が減退し、思春期に再び活性化するまでの6~12歳頃の時期。
性器期(genital phase)・・部分欲動が性器優位のもとに組織化されていく、生物学的にみても、性器がその本来の機能である生殖作用を営みうる時期である。
2.自我心理学の発達論
発達ラインは「欲動は、自我・超自我の発達、およびそれらの環境的な力に対する反応と交互作用の結果を、つまり成熟、適応、構造化の交互関係で示す」ものである。
第1ライン・・全面的依存から、青年がもつ心身の自己信頼へと至る成熟を基盤とした発達ラインである。
第2ライン・・母親に完全に依存している状態から身体的自立へと向かうライン。
第3ライン・・自己中心性から仲間を持てるようになるまでのライン
第4ライン・・欲動を向ける対象が、自らの身体から玩具へ遊びから勉強や仕事へ向かうライン。
A.フロイト「爆弾などの外的脅威に関連するトラウマ体験の危険性は、外の世界で猛威をふるっている破壊性が子供の内側で猛威をふるう非常に生々しい攻撃性に出会うときに増大するのだ。」
3.クラインのポジション論
クラインは、発達段階ではなく「ポジション」という概念を用いた。それぞれ独自の不安、防御機制、対象関係の型をもった心の構えであることを示している。
抑うつポジション・・発達的には乳児期のより後期(生後4~6か月頃から)の心的状態であり、自分自身と他者をともにありのままに見ることができる、抑うつ不安にもちこたえられる心のモードである。
※躁的防衛とは、相手を傷つけた責任や良いものを損なった罪悪感をもつものは耐え難いので、それらを排除して、躁的にふるまうことである。
他人には自分のコントロールの及ばないところがあると受け入れられることが、抑うつポジションの達成に関連するというものである。
妄想ー分裂ポジション・・より早期の、まったく良いかまったく悪いかというように心を分裂(断片化)させて外界と部分対象論に関わる、迫害不安に対応している状態である。
妄想とは、投影による被害妄想的な心性を指す。分裂とは、良い悪いを分けておくこと(スプレッティング)を示す。
4.マーラーの「分離ー個体化」過程
マーラーは生後数週間からおおよそ3歳の「心理的誕生」に至るまでの発達の道筋を「分離ー個体化」過程として示した。
分離とは、身体感覚を含めて母親と離れていられるという意識をもつこと。個体化とは「私が存在することの感覚」を基盤にした自律性のもとで個性をつくっていくことであり、分離と個体化は絡み合いながらも、必ずしも同じペースとはならずに進んでいく。
分離個体化理論 (separation-individuation theory)とは? マーガレット・マーラー によって提唱された発達理論。 乳児が母親との一体感から徐々に分離していく過程を 分離・個体化 といい、母親との「正常な自閉期」「正常な共生期」を経た後で生じる「分離・個体期」を4つに分けた理論のこと。
生後数週間の「正常な自閉期」の乳児は、母親の胎児にいるときと同じ事故完結的な自閉状態にあり、外界との交流がない時期が一定の期間存在することを、オーストリアの小児科医、マーラーが発見しました1. この時期は、身体的にも精神的にも大きな発達が見られると同時に、発達とともに自閉スペクトラム症に特徴的な行動が徐々に明らかになる時期でもあります2.
マーラーは、乳児は生まれた瞬間から母親とは別個の存在であるという認識を持っており、その感覚が基盤となって自己意識が形成されていくことを観察しました1. この自己意識の形成には、乳児が母親との分離・独立を経験することが重要であるとされています2. この分離・独立の過程で、乳児は自分自身と他者との区別をつけるようになり、自己意識がより明確になっていくとされています1.
生後数週間の「正常な自閉期」の乳児は、母親の胎児にいるときと同じ事故完結的な自閉状態にあり、外界との交流がない時期が一定の期間存在することを、オーストリアの小児科医、マーラーが発見しました1. この時期は、身体的にも精神的にも大きな発達が見られると同時に、発達とともに自閉スペクトラム症に特徴的な行動が徐々に明らかになる時期でもあります2. マーラーは、乳児は生まれた瞬間から母親とは別個の存在であるという認識を持っており、その感覚が基盤となって自己意識が形成されていくことを観察しました1. この自己意識の形成には、乳児が母親との分離・独立を経験することが重要であるとされています2. この分離・独立の過程で、乳児は自分自身と他者との区別をつけるようになり、自己意識がより明確になっていくとされています1. マーラーの分離・固体化理論によると、乳児は生後5ヶ月頃から分離・固体化期を迎え、分化期、練習期、再接近期、固体化期の4つの段階を経て自己意識が形成されていくとされています21. 練習期には、乳児が母親から離れて世界を探索する力を手に入れる時期であり、母親が安全基地として機能することが重要であるとされています2. この時期に、乳児が安心できる表象を十分に内在化させる働きかけが大切であるとされています3.
5.スターンの自己感の発達
乳児の体験世界の側面である「自己感(the sence of self)」から心の発達をとらえる作業仮説を提示した。言葉をもつ以前から存在している自己感が乳児の発達をオーガナイズするとした。
※自己感とは、自分の行動を自分がしていると思える感じ(発動の感覚)、連続性や身体のまとまりの感覚、他者に意味を伝達し(意図の感覚)それぞれの他者との間に間主観性を確立できるという感覚のことである。
新生自己感・・
中核自己感・・
主観的自己感・・
言語自己感・・