「出世を放棄すると人間関係はラク」50代の平社員は“いいこと”だらけ――50代会社員の嘆きトップ5

真面目に50歳まで働いてきたが、出世はできなかった。これを残念と思うかラッキーと思うかは自分次第である。無理してハードワークをして出世したとしてもそのあと、体を壊しては何にもならない。健康に気を付けて、飄々とサラリーマン生活を続けられればそんないいこともないと思う。

私のように、働きたくない人間は、出世どころが会社にすら行きたくないが、嫁が働かないと機嫌が悪くなので、会社に行っている。そして、会社の片隅で目立たないようにしてだましだまし、会社員の身分を保つだけの生活をしている。それでもストレスがないわけではなく、いくら片隅にいようと、やりたくない仕事ばかり振られてくる。これをどういなして会社にいるかに、全精力を傾けて勤務をしている。

早期退職やリストラに倒産……サラリーマンに押し寄せる厳しい現実。今回は50代の会社員に聞いた“本音”のなかから、反響の大きかった記事トップ5を発表。第5位はこちら!(集計期間は2018年1月~2022年12月まで。初公開2019年4月10日 記事は取材時の状況)

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 少子高齢化が進む昨今、長く働き続けることはもはや必然に。かつての「働き方」がいよいよ微塵も通用しなくなるこれからの時代、60歳以降の人生を確実に乗り切るうえで必要となるものとは一体? 経歴よりも資格よりもずっと重要となる「サラリーマン生活の適切な終え方」ここに考察する――。

「出世を放棄すると人間関係はラク」50代の平社員は“いいこと”だらけ――50代会社員の嘆きトップ5

「出世を放棄すると人間関係はラク」50代の平社員は“いいこと”だらけ――50代会社員の嘆きトップ5© 日刊SPA!

◆出世よりも、あえて現場社員を極める

田中正雄さん(仮名・55歳)年収700万円

 目先の昇進や花形部署への転身は丁重にお断り。そうして世間一般の会社員とはあえて逆の道を進むことで、定年後の生き残りを狙うのが、大手通信会社でシステムエンジニアとして働く田中正雄さん。

「僕は人付き合いも苦手で、40歳を迎える頃には、すでに『自分の出世の限界』が明確に見えていました。ただ、妻子もいるし、住宅ローンもまだ20年近く残っている。そのため、今の会社でともかく長く居座れる方法を模索しました」

 そこで田中さんが目指したのが、「一生働ける現場社員」だ。

「一度管理職になると職歴やプライドから、再雇用されたとき、一平社員に戻されることに抵抗を持つ人が多い。でも、現場社員でいると決めてしまえば、変なこだわりも生まれないし、会社側からも変わらぬ戦力として重宝されます。問題は、スキルが古くなること。ずっと現場で働けるように最新の専門スキルをキャッチアップするように心がけています」

 また、再雇用で気になるのが、職場での人間関係。だが、この点でも田中さんは戦略的だ。

一度出世を放棄してしまえば、人間関係はラクですよ。同期や後輩を妬むこともないし、素直に応援してあげられるから、相手からも嫌われない。上司にも変に反発しないので、疎まれることもありません。『あの人は敵じゃない』と思われるような中立的な立場を維持することで、マイペースに立ち回れるようになります」

◆70歳まで働くためにハードワークを避ける

 そして、定年後も長く働くために、田中さんが何よりも心を配っているのが健康面だ。

「40代中盤までは出張なども多く、かなりハードワークだったんですが、『少なくとも70歳まで働くなら、体にできるだけ負荷をかけたくないな』と思い、昨年希望を出して、比較的緩いプロジェクトに担務変更させてもらいました」

「出世を放棄すると人間関係はラク」50代の平社員は“いいこと”だらけ――50代会社員の嘆きトップ5

「出世を放棄すると人間関係はラク」50代の平社員は“いいこと”だらけ――50代会社員の嘆きトップ5© 日刊SPA!

こうした異動希望も出世を気にしてないからできること。「会社員人生の終活」を考えるうえでは、田中さんのように「長く・細く」働き続けられる人こそが、究極の勝ち組なのかもしれない。

サラリーマン人生の終わりが見えてくると、多くの人は定年後の人生に悩む。趣味に生きる。田舎に移住する。社会貢献にいそしむ。働き続ける。起業する──。どの道を選ぶかはそれぞれだが、新たな一歩を踏み出すのは思いのほか難しい。住宅ローン、親の介護、経験への過信。思わぬ落とし穴も待ち受ける。平均寿命の伸長で、定年から死ぬまで約30年。自由な時間は10万時間を超える。「人生二毛作」はもはや願望ではなく必然。成否を分けるのは、現役時代からの準備だ。

定年後を悩むくらいだったら、出世はせず、健康に注意してハードワークをせず、働き続けられるように自分の立ち位置を50歳の早いうちに決めておくのも悪くないと思う。

【プロの視点】

「何歳になっても、素直に上の言葉に従い、現場で一兵卒として働ける人は貴重な戦力。こういうタイプの人は、再雇用に応募しても、妙に卑屈にならず、飄々と働き続けられるはず。ただ、定年後、収入自体は確実に下がるので、生活費を見直し、低コストな生活を始めましょう」(経営コンサルタントの中沢光昭氏)

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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