第4回 感覚の科学 −感じるしくみ−
知覚・認知心理学(’19)
Psychology of Perception and Cognition (’19)
主任講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)
【講義概要】
人間は「考える」能力を持っています。考える能力には、大切な事柄を記憶する、問題を解く、どちらが良いか判断する、旅行の計画を立てるなど、意識的に考える能力のほか、見る、聞く、驚くなど、無意識的に考える能力があります。この「考えること」が、広い意味での、認知機能なのです。知覚・認知心理学は、このような、「考えること」の科学です。この講義では、認知の低次過程といえる感覚・知覚等の無意識的な機能から、問題解決や判断・意思決定などのより高次で意識的な認知機能のしくみを解説します。
【授業の目標】
知覚・認知心理学は、実証科学の一員です。実証科学とは、実験を通して得られた事実(エビデンス)に基づいて、仮説やモデルを検証する科学です。この授業では、単に、人間の認知に関する現象や事実を体験し理解するだけでなく、それらの背後に潜む人間の認知のメカニズムを、いかに実証するか、その方法論も併せて理解することが、目標となります。
【履修上の留意点】
履修にあたって、予備知識は特に必要としませんが、高校の生物学の知識があると、理解がより深まると思います。ただし、実証科学の一員として、論理的な思考は、不可欠です。レポートを書くうえでも、論理的なストーリー展開が、求められます。
第4回 感覚の科学
−感じるしくみ−
人はどのように周囲の環境から情報を取り入れるのだろうか。また、人にとっての情報とはどのようなものなのだろうか。今回は、視聴覚を中心に、眼球や耳といった感覚器の構造とこれらを通して情報を取り込むしくみについて概説する。
【キーワード】
感覚器、符号化、暗順応、色覚多様性、受容野、側抑制、可聴域
執筆担当講師名:薬師神 玲子(青山学院大学教授)
放送担当講師名:薬師神 玲子(青山学院大学教授)
錐体の感度
目の感度曲線
色覚のしくみVisolve
3種の錐体の波長別感度
側抑制
側抑制とは・・・
…脊椎動物の網膜には双極細胞や水平細胞,アマクリン細胞などの介在神経があり,視細胞に起こった変化はこれらに伝えられ,最後に視神経のインパルスとなり,大脳皮質に伝わる。光刺激に対する視神経繊維の応答の特徴の一つは,側抑制がみられることである。側抑制は,最初カブトガニの複眼の視神経繊維で観察されたもので,一つの個眼を光刺激すると,刺激された個眼の視神経繊維にインパルスが発生すると同時に,隣接する個眼の視神経繊維には興奮が起こりにくいように抑制がかかる現象をいう。…