第3回 知覚・認知の神経的基盤 -脳が考える-

知覚・認知心理学(’19)

Psychology of Perception and Cognition (’19)

主任講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)

【講義概要】
人間は「考える」能力を持っています。考える能力には、大切な事柄を記憶する、問題を解く、どちらが良いか判断する、旅行の計画を立てるなど、意識的に考える能力のほか、見る、聞く、驚くなど、無意識的に考える能力があります。この「考えること」が、広い意味での、認知機能なのです。知覚・認知心理学は、このような、「考えること」の科学です。この講義では、認知の低次過程といえる感覚・知覚等の無意識的な機能から、問題解決や判断・意思決定などのより高次で意識的な認知機能のしくみを解説します。

【授業の目標】
知覚・認知心理学は、実証科学の一員です。実証科学とは、実験を通して得られた事実(エビデンス)に基づいて、仮説やモデルを検証する科学です。この授業では、単に、人間の認知に関する現象や事実を体験し理解するだけでなく、それらの背後に潜む人間の認知のメカニズムを、いかに実証するか、その方法論も併せて理解することが、目標となります。

【履修上の留意点】
履修にあたって、予備知識は特に必要としませんが、高校の生物学の知識があると、理解がより深まると思います。ただし、実証科学の一員として、論理的な思考は、不可欠です。レポートを書くうえでも、論理的なストーリー展開が、求められます。

第3回 知覚・認知の神経的基盤
-脳が考える-

意識的にせよ、無意識的にせよ、「考えること」の担い手は脳を含む神経系である。
今回は、脳神経科学の観点から、特に、中枢神経系の構造と機能との関係を中心に、「考えること」の基盤を説明する。

【キーワード】
神経、活動電位、シナプス、大脳皮質、ブロードマンの脳地図、投射

執筆担当講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)
放送担当講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)


1.情報の伝達

2.神経系の構造と機能

3.活動電位の発生と伝達

(1)活動電位

神経細胞内の電位変化の伝導は,活動電位の発生を伴う能動的伝導と,活動電位の発生を伴わない受動的伝導からなる。

刺激の強度は,神経細胞で発生する,活動電位の頻度によって,符号化される。

(2)神経ネットワーク

(3)シナプス

神経細胞の活動電位は,軸索の細胞膜における,ナトリウムイオンとカリウムイオンの流入・流出によって,細胞体の部分で発生・収束する。

シナプス間隙では,

シナプス後細胞内にナトリウムイオンが流入し,活動電位が発生しやすくなる(脱分極状態へ進む)。

興奮性シナプス – 脳科学辞典

細胞内へイオンCl-が流入して活動電位が発生しにくくなる(過分極状態へ進む)

抑制性シナプス – 脳科学辞典

 

4.脳の構造と機能

5.表現、投射、意識

 


神経による筋収縮の指令-ニューロン

軸索

生物学 第2版 — 第35章 神経系

神経細胞の特徴

ニューロンの記事: 生きた導線細胞の内側


次の①~④のうちから,正しいものを一つ選べ。

① 神経細胞内の電位変化の伝導は,活動電位の発生を伴う受動的伝導と,活動電位の発生を伴わない能動的伝導からなる。

② 神経細胞の活動電位は,細胞体の細胞膜における,ナトリウムイオンとカリウムイオンの流入・流出によって,細胞体の部分で発生・収束する。 印刷教材の第3章第3節をよく読んでください。活動電位は,確かに,ナトリウムイオンとカリウムイオンの流入・流出によって発生・収束します。しかしながら,細胞体の細胞膜では,活動電位は発生しません。発生するのは軸索の細胞膜です。

③ 刺激の強度は,神経細胞で発生する,活動電位の頻度によって,符号化される。

④ シナプス間隙では,ナトリウムイオンが放出されて,シナプス後細胞に活動電位が伝達される。

 

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