第14回 自己の錯覚
第14回 自己の錯覚
錯覚は、客観的には誤った認識であっても、必ずしも有害なものとは限らない。健康な精神の持ち主は、現実を自分に有利に歪めて認識する傾向を持っており、これはポジティブイリュージョンと呼ばれる。こうした自己奉仕的な錯覚について、その特徴と心理的適応に果たす意味を解説する。
【キーワード】
平均以上効果、制御幻想、楽観性、抑うつの現実主義
1.自己認知における自己高揚
(1)正確な自己の認識と精神的健康
「世界と自己に対する正確な認識」
映画「インベージョンThe Invasion」で会食時にキャロル(ニコール・キッドマン)が話した内容は、
「世界」がという人は、その世界は「自己」の主観で話している
(2)抑うつ者は現実主義
抑うつの現実主義(リアリズム)
軽度なうつ(マイルドな抑うつ)者は、現実をネガティブに解釈するというよりも、正確に捉える傾向を示す。
(3)健康な人が持つ自己高揚バイアス
「成功したときには内的に、失敗したときは外的に」・・・自己高揚的な錯覚
「自己報告された成績と実際の成績のずれ」・・・記憶の錯覚
2.ポジティブ・イリュージョンと平均以上効果
ポジティブ・イリュージョン・・・平均以上効果・制御幻想(コントロールの錯覚)・非現実的な楽観主義
(1)平均以上効果
平均以上効果・・・自分を実際以上に肯定的に過大評価する現象である。
原因として、自己高揚動機と行為者観察者効果がある。
(2)平均以上効果の文化差
日本では、平均以上効果はしばじ確認できない。
平均以下という回答が優越する自己卑下傾向すらみられることがあった。
関係性高揚が幸福感に影響することが報告されている。
3.さまざまなポジティブ・イリュージョン
(1)制御幻想
制御幻想、コントロールの錯覚(イリュージョン・オブ・コントロール)・・・本来は自分の力とは無関係なことであっても、自分が対象の状態や結果に影響を与えると考えたり、そうした行動をとることである。
(2)非現実的な楽観主義
私達は他の平均的な人たちと比べて、大事故に遭ったり重病にかかったりするようなことはあまりなく、逆に健康で幸せな生活を送る可能性は高いと偏った見積もりをする傾向がある。
(3)ポジティブ・イリュージョンと心身の健康
第12回 原因と結果をめぐる錯覚 – LIFE-SHIFT (lifeshift.site)・・・学習性無力感理論