第12回 消費者行動とマーケティング
産業・組織心理学(’20)
Industrial and Organizational Psychology (’20)
主任講師名:山口 裕幸(九州大学教授)
【講義概要】
産業・組織心理学は、①組織に所属する人々の行動の特性やその背後にある心理、あるいは人々が組織を形成し、組織としてまとまって行動するときの特性について研究する「組織行動」の領域、②組織経営の鍵を握る人事評価や人事処遇、あるいは人材育成について研究する「人的資源管理」の領域、③働く人々の安全と心身両面の健康を保全し、促進するための方略について研究する「安全衛生」の領域、そして、④よりすぐれたマーケティング戦略に生かすべく消費者心理や宣伝・広告の効果を研究する「消費者行動」の領域からなる。本講義は、それらを全体として統合しつつ、産業・組織心理学の理論と知見を体系的に解説する。
【授業の目標】
①組織における人間行動の特徴とともに、組織体全体に発生する現象の諸特性について理解し、概説できる。
②人材の育成や開発のために必要となる人的資源管理のあり方について理解し、概説できる。
②職場で発生する安全衛生の問題に対して、その解決のための行動や心理学的支援の方法について理解し、概説できる。
④消費者の意思決定や行動の特性ならびに、効果的な宣伝やマーケティングのための心理学的知識について理解し、概説できる。
第12回 消費者行動とマーケティング
消費者行動をテーマに取り上げ、消費者心理の基礎理論を紹介するとともに、宣伝やマーケティングにどのように生かされているかを解説する。
【キーワード】
購買行動、ブランド、マーケティング、態度、質的分析、宣伝
学習課題
1.最近において自分自身が購買した商品・サービスを取り上げて、そのがどのような心理的要因に規程されていたかを書き出して生理しないさい。
先日購入したのは、ローソン100でバナナです。果物は体に良いというyouTubeをみて最近バナナを、果物自体を食べていなかったので食べたい欲求が出てきたのが購入動機になります。なぜ、ローソン100の店を選定したのかは、ドコモのアプリで20円割引がd払いで購入すると受けられるということがあったためです。
2.日常的に配信されているテレビ広告を取り上げて、それがどのような消費者をターゲットとし、その消費者にどのような影響を与えて購買に導こうとしているかを考察しなさい。
次の①~④の記述のうちから,正しいものを一つ選びなさい。
① マーケティングを構成する 4P は「Price」,「Place」,「Packaging」,「Promotion」である。
② 「マーケット・セグメンテーション」とは,自社の製品の優位性を他社の製品と明確に区別してアピールすることを意味している。
③ 企業がマーケティング活動をすすめた結果,消費者の購買行動を引き出すことは心理学の 4 つの目標のうち「記述」に該当する。
④ とくに近年における企業のマーケティング活動は,レビンの図式(B=f(P·E)における E(環境・状況要因))を重視する傾向がある。 正解です。
フィードバック
正解は④です。
【解説/コメント】
①この記述内容は誤りです。マーケティングを構成する 4P 理論はマーケティング学者のマッカーシが 1960 年に提唱したもので,製品(Product),価格(Price),流通経路(Place),販売促進(Promotion)であり,「Packaging」は含まれません。この理論では 4 つの P をうまく組み合わせて(何をつくって,価格設定をどのようにして,どこで売り,どのような販売促進をしていくのか?ということ)マーケティングをすすめていくことが重要とされます。
②この記述内容は誤りです。マーケット・セグメンテーションは「市場細分化」と訳され,市場(消費者の集まり)を複数の異質なものから構成されていると仮定し,市場全体ではなく個々の消費者の集まり(セグメントといいます)を想定して製品開発や販売促進を行っていくという考え方です。自社の製品の優位性を他社の製品と明確に区別してアピールすることは「製品差別化」と呼ばれます。
③この記述内容は誤りです。心理学の 4 つの目標(記述,説明,予測,制御)のうち,消費者の購買行動を引き出すことは人間の行動の「制御」に該当します。マーケティング活動には様々な形態やプロセスがありますが,最終的な目標は「消費者行動の制御」になると思われます。
④よく理解されています。この記述内容は正しいです。従来のマーケティング活動は,上述のマーケット・セグメンテーションを中心にすすめるために,個々の消費者がどのような特性をもち,どのような基準で消費者を分類していくか?という課題に取り組んで来ましたが(レビンの図式の P に該当します),近年では店頭での状況・環境要因(レビンの図式における E に該当します)に消費者の意思決定や購買行動が影響を受けやすいことが指摘され,それを念頭に置いたマーケティングの割合が多くなっていると指摘されています。