第12回 成人期の発達:中年期危機とジェネラティビティ

第12回 成人期の発達:中年期危機とジェネラティビティ

成人期は、仕事や家庭、地域での責任が増し、さまざまな形で次世代育成に関与する。その一方で、自身の体力の衰えや職業上の限界、子どもの巣立ちなども経験し、人生の軌道修正が必要になってくる。この時期の課題と心理的発達について概説する。

【キーワード】
中年期危機、親になること、夫婦関係、職業、熟達化、ジェネラティビティ、ケア


1.中年期危機

(1)成人期の見方の変化

成人期は、実際には危機的出来事に遭遇しやすくなる。

加齢とともに、メタボリックシンドロームや生活習慣病、更年期症状など、心身の不調も表面化。

近年の雇用の流動化、離婚の増加、長命化による親の介護問題。

(2)成人期の発達モデル

今までの生き方やある方では、もはや自分を維持できないという危機感が、これまでの人生を振り返りと将来に向けての軌道修正を促し、アイデンティティの再体制化をもたらす。

しかし、すべての人がアイデンティティを再体制化できるわけではなく、モラトリアムを長く経験する人もいれば、深く考えずにやり過ごす人もいると考えられる。

アイデンティティの揺らぎと立て直しは、青年期のみならず、成人期においても繰り返し経験されると言えるだろう。

(3)中年期危機は存在するのか?

失業、経済的困難、病気や離婚など危機を引き起こすライフイベントを経験する時期や持つ意味は、人によって異なる可能性がある。

また、神経質なパーソナリティの人は、そうでない人よりも中年期危機を経験しやすい。

2.親になること

(1)親になって得るもの、失うもの

(2)親役割の変化

3.夫婦関係

(1)夫婦関係の長期化

職業からの引退を経て、長い期間にわたって夫婦関係を維持していくには、それなりの努力や工夫がいる。熟年離婚の増加は、その難しさを物語っているのかもしれない。

(2)結婚満足度の経年的変化

総じて既婚男性は独身男性より心身の健康度が高い

(3)夫婦関係への対処

夫婦間の満足度を高める要因として、コミュニケーション、共同作業、性交渉、安定した収入などが指摘されている。

4.職業を通しての発達

(1)職業意識と満足度

人は自分の適性を活かした職業を選び、生計を維持し、家族を養う

お金を得るため

生きがいを見つけるため

社会の一員として、務めを果たすため

(2)熟達度

実践的知能・・・熟達化の過程において獲得される知能

学校的知能とは別のものである。

仕事をしながら体得した暗黙の知識であり、高いレベルの仕事をしたり、複雑な問題を解決したりするのに役立つ。

また、単に経験を積めば伸びるというわけではなく、経験から何を学ぶかによって変わるため、個人差が大きいとされる。(発達における個人の主体的制御の重要性)

「省察的実践家」・・・単に既存の知識や技術を実践に適用しているだけでなく、自身の行為を省察し、実践を通して知識を生成する。新しい局面に出会ったとき、それまでの知識や経験を活かして状況に働きかけるとともに、その行為を振り返り、自分の考え方ややり方を修正・調整することで、絶えず知識の最新化を図っている。

(3)多重役割とその影響

働ぎすぎにより心身の病や過労死に至る男性が相変わらず多いことを考えると、仕事以外の側面での男性の発達についても詳らかにしていく必要があると思われる。

5.ジェネラティビティとケア

「成熟した人間は必要とされることを必要とする。」

ジェネラティビティとは、ジェネレーションとクリエイティビティを組み合わせた造語であり、次世代を確立させ、導くことと定義される。

ケアとは、「これまで大切にしてきた人やモノや観念の面倒を見ることへの、より広範な関与」

 

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