第1回 進化とは

大坪 庸介  (社会心理学研究室)

第1回 進化とは

進化論とは誤解の多い理論である。第1回の講義では、生物学における進化という用語の意味を解説し、行動や心のはたらきも進化するという考え方を理解する。

【キーワード】
自然淘汰、進化、表現型ギャンビット、ボールドウィン効果


進化とは、遺伝子頻度の変化をいう。

ある生物の特定の形質に、親から子に遺伝(inheritance)により引き継がれる変異(variation)があり、その形質に自然淘汰(natural selection)がかかると集団中の遺伝子頻度が変化する。

自然淘汰による進化の意味

生存・繁殖に有利な変異は増え、不利な変異は減るという自然淘汰がかかることになります。その結果、その生物の集団の中で有利・不利な変異を作る遺伝子の頻度が変化します。この遺伝子頻度の変化を進化という。

ラパゴス諸島に分布するダーウィンフィンチ

自然選択と遺伝的浮動が織りなす生物史

「表現型ギャンビット:the phenotypic gambit」

性比のような生活史形質の進化の分析については2つの主要なアプローチが用いられてきた.
そのうちの1つは「表現型アプローチ」だ.これは以下のようなものだ.

  • 自然淘汰は自身の適応度を最大化させるような個体を好む.そしてその適応度は様々なトレードオフの上にある.
  • これはゲーム理論アプローチや最適化理論,そしてESSについてよく言われることだ.
  • ここで重要な前提は「遺伝システムは戦略の大きな制限要因にはならない」ということだ.だから遺伝システムを無視することが正当化される.これは「表現型ギャンビット:the phenotypic gambit」とも呼ばれる.

ボールドウィン効果

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 17:44 UTC 版)

ボールドウィン効果(ボールドウィンこうか、Baldwin effect[1])は、アメリカ合衆国心理学者ジェームズ・マーク・ボールドウィンが提唱した初期の進化の理論である。ボールドウィン進化Baldwin evolution)とも。大まかに言えば、学習能力が高くなる方向に選択が進むことを示唆したものである。選択された子孫は新たなスキルを学習する能力が高くなる傾向があり、遺伝的に符号化された固定的な能力に制限されない傾向が強まる。種やグループの持続的な振る舞いが、その種の進化を形成するという点を重視する。

 

 

 

「ボールドウィン効果」の続きの解説一覧

臼歯(きゅうし)の大きな役割は、前歯で噛みやすいように切った食べ物をすり潰し、細かくし、次の消化器官(胃)で消化しやすいようにする働きがあります。 そのため臼歯いわゆる奥歯を失うと胃に負担が掛ることになります。 もう一つ重要な役割があります。 それは噛み合わせの安定です。


Unpredictable Evolution in a 30-Year Study of Darwin’s Finches

ダーウィンフィンチの 30 年間の研究における予測不可能な進化
進化は、選択と継承の知識から短期的に予測できます。ただし、選択係数の方向と大きさを決定する環境は予測できないほど変動するため、長期的な進化は予測できません。進化のこれら 2 つの特徴、予測可能なものと予測不可能なものは、ガラパゴス諸島のダフネ・メジャー島に生息するダーウィンフィンチの 2 つの個体群の研究で実証されています。1972 年から 2001 年まで、Geospiza fortis (ミディアム グラウンド フィンチ) とGeospiza scandens(サボテンフィンチ) 体の大きさと 2 つのくちばしの特徴が数回変化しました。自然選択は両方の種で頻繁に発生し、一方向から振動、一時的から段階的までさまざまでした。ハイブリダイゼーションはめったにありませんが繰り返し発生し、G. scandensの表現型の差異が上昇し、くちばしの形状が変化しました。30 年間の研究が終了した時点での両種の表現型の状態は、最初は予測できませんでした。まれではあるが重要なイベントと不均一な進化的変化を検出して解釈するには、継続的で長期的な研究が必要です。

http://doi.org/10.1126/science.1070315

A pessimistic estimate of the time required for an eye to evolve

目が進化するのに必要な時間の悲観的な見積もり
目のデザインの理論的考察により、目の光学構造が進化した経路を見つけることができます。選択が検出可能な空間情報の量の増加を常に支持する場合、感光パッチは、設計の継続的な小さな改善を通じて、焦点の合ったレンズの目に徐々に変わります。完全な変換に必要な世代数の上限は、最小限の仮定で計算できます。一貫して悲観的なアプローチをとったとしても、必要な時間は驚くほど短く、わずか数十万年です。
http://doi.org/10.1098/rspb.1994.0048

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