第1回 イントロダクション:心理学的支援の全体

心理カウンセリング序説(’21)

-心理学的支援法-

Introduction to Psychological Counseling (’21)

主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)

【講義概要】
この授業では、臨床心理学におけるカウンセリング、心理療法を中心とした、心理学的な相談・支援に関する基礎とその展開について講じる。対象者に対する心理学的な支援の中核にはカウンセリングがありつつも、それは、支援の形や対象となる領域によって、さまざまな展開をみせている。そこでは、どのような専門性が求められ、どのような学びをおこなっていけばいいのだろうか。こうしたテーマについて包括的に論じる。
なお本科目は,公認心理師学部カリキュラムのうち「心理学的支援法」に対応する。

【授業の目標】
・カウンセリングの基礎について学ぶ
・心理学的支援のさまざまな技法の基礎と特徴、その適用範囲について学ぶ
・心理学的支援をおこなううえでの心構えや責務について学ぶ

【履修上の留意点】
この科目は、公認心理師の学部カリキュラム「心理学的支援法」に対応しています。他の関連科目も積極的に履修してください。

各回のテーマと授業内容
第1回 イントロダクション:心理学的支援の全体

心理学的支援が展開される領域とその形について概説する。個人療法から集団療法さらにはコミュニティ支援などさまざまな形、また医療、教育、司法矯正をはじめ多樣な領域があるが、いずれにおいても、「人と関わる」という意味での共通性があり、カウンセリングの心構えと技法が中心に位置する。このことについて論じたい。

【キーワード】
心理学的支援、心理カウンセリング、心理療法、対人援助,生物−心理−社会モデル


生物−心理−社会モデル

私たちの病気や健康を理解するためには、「生物心理社会的モデル」というものが役立ちます。ジョージ・エンゲルが1997年に提唱した生物心理社会モデルは、人間を生物的側面、心理的側面、社会的側面から統合的に捉えようとするときの枠組みです。これら3つの側面は互いに影響をしあっていると考えます。

生物心理社会モデルについて説明します

第1回 イントロダクション:心理学的支援の全体

心理学的支援が展開される領域とその形について概説する。個人療法から集団療法さらにはコミュニティ支援などさまざまな形、また医療、教育、司法矯正をはじめ多樣な領域があるが、いずれにおいても、「人と関わる」という意味での共通性があり、カウンセリングの心構えと技法が中心に位置する。このことについて論じたい。

【キーワード】
心理学的支援、カウンセリング、心理療法、対人援助,生物−心理−社会モデル

第2回 コミュニケーションと傾聴−表現の多様な位相−

カウンセリングの基本は、クライアントが身体レベルから言語レベルまで、さまざまな位相で「表現」することを聴き取って、適切なコミュニケーションを展開することである。他者と出会って、共に居て話を聴くとき、どのようなことがセラピストに生じているのか、そして支援者はどんなことに留意すべきなのかについて講じる。

【キーワード】
傾聴、表現の位相、非言語的コミュニケーション、身体、共鳴、非言語的コミュニケーション

第3回 共感と理解

カウンセリングにおいては、クライアントのあり方に共感することが大切である。共感とはどのような事態であるのか。そしてそれはどのように形成されるのか、また、そのためのセラピストの心構えはどのよなものであるべきなのだろうか。また、共感と深く関連している理解とはどのようなものであるのかについて講じる。

【キーワード】
共感、治療同盟、ロジャーズの三原則、共視、理解、洞察

第4回 理解と見立て:インテーク面接

心理面接を通して適切な支援をおこなうためには、対象者を「理解」し、関わりの方針を適切に立てていくことが大切になる。とりわけインテーク面接とよばれる初回面接においてどんなことがなされるのか、また、対象者の「見立て」とはどんなことのなのか、インテーカーの役割や態度といったことも含めて講じる。

【キーワード】
インテーク面接、心理学的理解、アセスメント、見立て、インテーカー

第5回 カウンセリングにおける相互作用

カウンセリングにおけるクライアントとセラピストの相互作用について学ぶ。相互作用には対話の次元と関係の次元がある。対話の次元でどのような相互作用が生じているのかを、ナラティヴ、介入(明確化・直面化・解釈)といった視点から見ていく。また、介入の基盤にあるセラピストの想像という営みについて学ぶ。次に、関係の次元における相互作用を、転移/逆転移という視点から見ていく。

【キーワード】
相互作用、対話の次元/関係の次元、ナラティヴ、介入、明確化、直面化、解釈、転移/逆転移、想像

第6回 カウンセリングの場と器

カウンセリングや心理療法をはじめとする心理学的支援は、日常の中に治療的関わりが展開する特殊な場を作り出すことに支えらさている。その際、治療構造、契約、面接室などが必要であるが、それらにはどんな意味があるのか。また、支援の状況によっては、そうしたセッティングが必ずしも用意できないときがある。そのときに、支援者はどうするべきなのかを講じる。

【キーワード】
治療構造、面接の時間と空間、関係性

第7回 カウンセリングのプロセス

初期・中期・終結期のカウンセリング・プロセスについて学ぶ。初期ではラポールの確立、治療同盟の成立、容器の形成といったプロセスが進行し、中期では転移/逆転移が発展し、終結期では抱える機能の内在化による分離が進行する。これらがどのように進むのかを具体的な事例を通して学ぶ。

【キーワード】
ラポール、治療同盟、容器、転移/逆転移、抱える機能、内在化、分離

第8回 精神分析の始まりと展開

心に原因があると考える「心因」という発想が誕生するに至った流れや背景について概説し、その意義について述べるとともに、フロイトによる精神分析の始まりとその革新的な意義と影響、および、その後の発展について講じる。

【キーワード】
催眠、心因,無意識、自由連想、心的装置、対象関係論

第9回 ユング派心理療法の展開

ユングの提唱した分析心理学に基づくユング派心理療法の展開について見ていく。個性化過程を理論的な中核とする分析心理学は、変容の段階を重視しつつ、古典派・発達派・元型派とわかれて発展してきた。わが国では、河合隼雄が箱庭療法を通して紹介し、彼によって、解釈を否定し、非個人的関係を重視する独自な立場が開かれたことを見ていく。

【キーワード】
分析心理学、個性化過程、変容の段階、古典派・発達派・元型派、河合隼雄、箱庭療法、非個人的関係

第10回 ロジャーズと来談者中心療法

ロジャーズの方法論は、現代のカウンセリングの基礎となっていると言っても過言ではない。ロジャーズのカウンセリング理論とはどのようなものなのか、その意義はどこにあるのかといったことを、米国での発展、そして、日本への導入と展開、理学や教育にどんな影響を与えつつ展開したのかということについて講じる。

【キーワード】
非指示的療法、来談者中心療法、学生相談、甘え、共通要因

第11回 行動療法によるアプローチの展開

心の存在を仮定してそこに働きかける力動的な考え方と異なって、状況と反応の結びつきということから行動を捉え、それへの介入によって「心理療法」をおこなう行動療法的なアプローチがある。どのような発想にもとづき、どのように展開したのか、また近年での発展について論じる。

【キーワード】
行動療法、認知行動療法、マインドフルネス、新世代(第三世代)の認知行動療法

第12回 訪問と地域支援

心理学的支援は、面接室に対象者を迎え入れることだけでおこなわれるのではなく、支援者が対象者のもとを訪問したり、「現場」に入っていっておこなわれることもある。こうした支援において、支援者はどのようなことに留意すべきなのか、どのような意義があるのか、ということについて講じる。

【キーワード】
訪問支援、アウトリーチ、地域(コミュニティ)への支援、関係者への支援

第13回 危機介入と心の健康教育

突然の事故や災害など、危機に直面した際にコミュニティおよびその成員は大きな心の傷を受ける。そのときの心の経過はどのようなものなのか、支援者はどのように関わっていくべきなのか、またその中で心の健康やしなやかさをどう保っていくのか。あるいはそのような状況でなくとも、日常生活において心理的な破綻をおこすことなく生きるにはどのような支援ができるかということについても講じる。

【キーワード】
危機介入、トラウマ、ストレス、予防、心の健康、心理教育

第14回 秘密保持と記録

秘密保持は、クライアントのプライバシーを守り、カウンセリングへの信頼を可能にするが、注意義務や報告義務と二律背反的な関係を持つ。記録は、適切なカウンセリングの提供や連携を可能にしたり、スーパーヴィジョンの機能を果たしたりするが、秘密保持と二律背反的な関係を持つ。秘密保持と記録に関する様々な二律背反とインフォームド・コンセントの重要性について学ぶ。

【キーワード】
秘密保持、プライバシー、注意義務、報告義務、記録、連携、スーパーヴィジョン、二律背反、インフォームド・コンセント

第15回 セラピストとしての研修

カウンセリングや心理療法をはじめとする心理学的支援をおこなうものは、常に自分の職能を向上させていかねばならない。また、それぞれの支援者は職能集団の中の一員として、どのような支えあいの中にあるのか。支援者の生涯をわたった研修のあり方について講じる。

【キーワード】
傷ついた治療者、ケースカンファレンス、スーパーヴィジョン、教育分析、支援者のライフサイクル、職能集団

 

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