第14回 秘密保持と記録

心理カウンセリング序説(’21)

-心理学的支援法-

Introduction to Psychological Counseling (’21)

主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)

【講義概要】
この授業では、臨床心理学におけるカウンセリング、心理療法を中心とした、心理学的な相談・支援に関する基礎とその展開について講じる。対象者に対する心理学的な支援の中核にはカウンセリングがありつつも、それは、支援の形や対象となる領域によって、さまざまな展開をみせている。そこでは、どのような専門性が求められ、どのような学びをおこなっていけばいいのだろうか。こうしたテーマについて包括的に論じる。
なお本科目は,公認心理師学部カリキュラムのうち「心理学的支援法」に対応する。

【授業の目標】
・カウンセリングの基礎について学ぶ
・心理学的支援のさまざまな技法の基礎と特徴、その適用範囲について学ぶ
・心理学的支援をおこなううえでの心構えや責務について学ぶ

第14回 秘密保持と記録

秘密保持は、クライアントのプライバシーを守り、カウンセリングへの信頼を可能にするが、注意義務や報告義務と二律背反的な関係を持つ。記録は、適切なカウンセリングの提供や連携を可能にしたり、スーパーヴィジョンの機能を果たしたりするが、秘密保持と二律背反的な関係を持つ。秘密保持と記録に関する様々な二律背反とインフォームド・コンセントの重要性について学ぶ。

【キーワード】
秘密保持、プライバシー、注意義務、報告義務、記録、連携、スーパーヴィジョン、二律背反、インフォームド・コンセント

執筆担当講師名:橋本 朋広


問題 9 公認心理師や臨床心理士には,法律や職業倫理によって,対象者の秘密を保持する義務が課せられているが,それには例外状況があると考えられている。次の①~④のうちから,守秘義務の例外状況として誤っているものを一つ選びなさい。

① 自傷の恐れがある場合
② 法律による定めがある場合
③ 他の専門家と連携する場合
④ 他害の恐れがある場合 不正解です。

フィードバック 正解は③です。

【解説/コメント】

クライアントが自分で自分の命を危険にさらそうとしている時,必要であれば,守秘義務よりもクライアントの命を守る対策を取ることを優先しなければなりません。

「児童虐待の防止などに関する法律」では,児童虐待を発見した場合の通告義務を定めており,法律で守秘義務が定められている場合でも通報は守秘義務違反にはならないと定めています。

③支援に際しては,他の専門家との連携や情報共有が必要になることが多々ありますが,①②④以外の場合では,連携や情報共有について事前にクライアントと話し合い,承諾をもらう必要があります。

クライアントが他者に危害を加えようとしている場合,必要であれば,守秘義務よりも被害が想定されるその他者の命を守る対策を取ることを優先しなければなりません。

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