第6回 感情の生理的基盤

感情・人格心理学(’21)

Psychology of Emotion and Personality (’21)

主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)、佐々木 玲仁(九州大学大学院准教授)

【講義概要】
本講義では感情心理学および人格心理学について論ずる。ここで取り扱う感情とは「そのときどきの気持ち」のことであり、人格とは「それぞれの人がら」のことである。これらのことについて、どのような概念なのか、あるいはどのように測定するのか、そしてどのように発達していくのかなどについてそれぞれの観点から述べる。また、感情については、その種類や表し方、記憶との関連など、人格については、それをどのように記述するのか、環境との関連、心理療法との関連など、様々なテーマで論じていく。また、感情と人格の繋がりや日常生活との関連についても取り扱う。

【授業の目標】
感情および人格という日常でも出会う概念について、心理学上の様々な論点から考察できるようになること、また、学術的な理解を得るだけでなく、その理解が日常生活とどのような繋がりがあるのかかについての知見を得ることを目標とする。

【履修上の留意点】
人間に対する率直な知的好奇心があれば、予備知識等は特に必要としない。

第6回 感情の生理的基盤

感情が生じるという現象について、脳神経系およびその他の身体との関係がどのようなものであるかについて論じる。脳神経系は感情との関連が深いが、それ以外の身体部分も感情とのかかわりは深い。これらについて、その研究方法にも触れつつ論じていく。

【キーワード】
感情の起源、脳神経系、身体

感情の末梢起源説と中枢起源説、感情の2要因説、認知的評価理論、大脳辺縁系、ソマティック・マーカー仮説

 


デカルトのコギト Cogito ergo sum – 知の快楽
自分自身の肉体でさえ、もしかしたら本当には存在しないのかもしれない。 自分が確実だと思っている対象も、もしかしたらただの夢の中の存在なのかも知れぬ。 ここまで懐疑を徹底しても、やはり確実なものとして残るものがある。 それがコギトだとデカルトはいう。

コギト – Wikipedia

我思う、ゆえに我あり – Wikipedia

デカルトのコギト――わたしという出来事 | EX-SIGNE

ジェームズ・ランゲ説
刺激→情動→身体変化ではなく、刺激→身体変化→情動という道筋を考えたもの。 「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」という表現で象徴されている。
ジェームズランゲ説とは?事例・実験を解説!泣く … – Theory

ナニワ金融道 」の第6巻

この作品の中で大変興味深いやりとりが掲載されているので紹介させていただきます。

大仕事を終えてその祝賀会を開く帝國金融メンバー。そこに帝國金融社長である金畑金三が主人公の灰原にある問いかけを行います。

  • 「自分の事を正しいと思っている人間と内心では後ろめたさを感じている人間。どちらがゴネてくるのか?」

大抵の人間は自己の正当性を掲げるために、自分が正義だと思っている人間がゴネてくるというのが一般的な見解でしょう。

ところが「ゴネてくる人間ほど内心では自分が間違っていると思っている」という意外な結論が持ち上がります。

  • 逆の立場で考えれば、相手の些細な落ち度に漬け込んで論点をずらして反撃する
  • 「相手の弱点を見つけて食らいついてゴネまくるしか仕方ない」
  • 「自分が100%正しいと思ってる人間は最悪法廷でケリをつければいいから、ゴネたりせず余裕がある」

長年金貸し業の経営者を営んだ金畑は自己の経験に基づく意外な教訓を披露して、本作の主人公である灰原を驚かせるのでした。


金畑が言及したように、立場的に分の悪い人間ほど声高にゴネてくるという状況はありふれています。

  • 交通事故で不利な状況に立たされた一方の当事者。
  • 国家間の交渉において利害関係のゴネ得を狙って荒れる一方の代表者。
  • 最近でも日本から不法出国して自身の罪状を有耶無耶にしてまで他国の司法制度批判を繰り返す某経営者。

枚挙に暇がありませんよね。

「人がゴネるのは後ろめたい理由を抱えているからだ」

そんな金畑の人生哲学は心理学においては「認知的不協和 」という形で体系化されています。

この認知的不協和における仮説として「不協和の存在は、その不協和を低減させるか除去するために、なんらかの圧力を起こす」という物があります。

この仮説ををゴネる人間の理屈に当てはめるならば・・・

  1. 内心では自分に非がある後ろめたさを感じているが、これを乗り越えなければ自分に何かしらの不利益が襲いかかる→
  2. ならば、相手に圧力を掛けてこの難局を乗り切るしか無い(ひたすらゴネる)

という構図になります。

また、「不協和を低減させる圧力の強弱は、不協和の大きさの関数である」という仮説にも基づけば、内心では後ろめたさの度合いが強ければ強いほど相手に対する圧力の度合いも増してくるという事を示しています。

つまり、我々がこの認知的不協和の罠に操られた人間と対峙してしまった際には

この「人がゴネるのは後ろめたい理由を抱えているからだ」いうポイントを念頭においておけば、相手の口撃による圧力に流されず冷静に対応できるという教訓をナニワ金融道は語ってくれるのです。

コマ引用:「ナニワ金融道 第6巻 77発目 駒津田次長のクビに風が吹く!」|青木雄二作(講談社『モーニング』(1993)掲載)

 

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