第6回 リーダーシップ

産業・組織心理学(’20)

Industrial and Organizational Psychology (’20)

主任講師名:山口 裕幸(九州大学教授)

【講義概要】
産業・組織心理学は、①組織に所属する人々の行動の特性やその背後にある心理、あるいは人々が組織を形成し、組織としてまとまって行動するときの特性について研究する「組織行動」の領域、②組織経営の鍵を握る人事評価や人事処遇、あるいは人材育成について研究する「人的資源管理」の領域、③働く人々の安全と心身両面の健康を保全し、促進するための方略について研究する「安全衛生」の領域、そして、④よりすぐれたマーケティング戦略に生かすべく消費者心理や宣伝・広告の効果を研究する「消費者行動」の領域からなる。本講義は、それらを全体として統合しつつ、産業・組織心理学の理論と知見を体系的に解説する。

【授業の目標】
①組織における人間行動の特徴とともに、組織体全体に発生する現象の諸特性について理解し、概説できる。
②人材の育成や開発のために必要となる人的資源管理のあり方について理解し、概説できる。
②職場で発生する安全衛生の問題に対して、その解決のための行動や心理学的支援の方法について理解し、概説できる。
④消費者の意思決定や行動の特性ならびに、効果的な宣伝やマーケティングのための心理学的知識について理解し、概説できる。

【履修上の留意点】
本科目を履修する前に「心理学概論(’18)」を履修することが望ましい。また、「社会・集団・家族心理学(’20)」と関連が深い。
※この科目は、心理と教育コース開設科目ですが、社会と産業コースで共用科目となっています。

第6回 リーダーシップ

管理者が、メンバーを動機づけ目標達成へと導くために必要とされるリーダーシップについて概説する。また、リーダーがダークサイドに陥る条件について検討する。

【キーワード】
リーダーシップ、PM理論、コンティンジェンシー・アプローチ、変革型リーダーシップ、サーバント・リーダーシップ、リーダーシップのダークサイド


ボスは部下を追い立てる。→リーダーは人を導く。 · ボスは権威に頼る。→リーダーは志、善意に頼る。 · ボスは恐怖を吹き込む。→リーダーは熱意を吹き込む。 · ボスは私 …

そもそもリーダーシップとは?
リーダーシップはそれぞれ個々人でぼんやりとした定義があるかと思います。講義では、ストッディル(Stogdill、1974)の定義、

集団目標の達成に向けてなされる集団の諸活動に影響を与える過程
を使って論考を進めていきます。簡単にいうと、方向づける影響力、やる気を引き出す影響力、協力・連携を導く影響力でしょうか。

となると、影響力ですから、そもそもリーダーが信頼するに足る方がどうか? リーダーとメンバーの関係はどうか?がリーダーシップの鍵になります。

まず、信頼に足るかどうかは、

認知的信頼=リーダーの有能さなどに基づくもの
情緒的信頼=リーダーとの結びつきに基づくもの
などが影響します。

また、リーダーとの関係性の質については、グラーエンとウエルビンによるリーダー-メンバー交換関係(Leader-Member Exchang、LMX)理論に代表されるリーダーとメンバーとの二者関係からの視点が大事とのことです。

なお、LMX理論については、Matsuhiro Saito様の記事をご参照ください↓

また、近年では複数の人物がリーダーシップを共有する分有型リーダーシップ、医療チームのような時限的チームの場合に個々がリーダーシップを発揮する共有型リーダーシップも効果的であると研究で明らかになっているとのことです。

んじゃどうすれば効果的なリーダーシップとなるのか?
放送授業ラジオこうぎでは↓に示す理論が説明されていましたが、現状によって必要なリーダーシップが変わっていくということですかね。

講義では、

行動アプローチとして、

①オハイオ州立大学のグループによるリーダー行動記述調査票(LBDQ)から因子分析で導いた構造づくり行動(役割と責任の定義)と配慮行動(尊敬や信頼を構築すること)

②①につづく三隅(1984)のPM理論
また、フィードラー(Fiedler、1967)によるコンティンジェンシー理論。まず、LPC(Least Preferred Coworker、一緒に仕事をする上で最も苦手な仕事仲間)をどう捉えるかで、

①人間関係志向型リーダー=高LPCリーダー
②課題達成志向型リーダー=低LPCリーダー
にわけて、集団の状況を

①リーダーとメンバーとの関係の良さ
②仕事の目標、手続きの明確さ
③リーダーの持つ地位勢力
からとらえて、2の3乗=8パターンの状況に応じて変えるモデル

さらには、バス(Bass、1985)の変革型リーダーシップ、最近注目のグリーンリーフ(Greenleaf、1970)のサーバント・リーダーシップの説明がありました。

詳しくはすずきみき様、Nobu-san様、レストランクリエーターマルコメ様の記事をご参照ください。

落とし穴
残念ですが、リーダー(経営者、管理職.…)による問題事象が発生します。そのようなネガティブな面も破壊的リーダーシップとして、

組織の目標、課題、資源、有効性、または部下のモチベーション、ウェルビーイング、組織満足度を衰えさせたり妨害したりすることによって、組織の正当な利益を侵害するような、システマティックに繰り返されるリーダーや上司や管理者の行動(Einarsen、Aasland & Skogstad、2007)
として包括的な定義され、研究が進んでいます。この定義のミソは

①リーダーの行為は意図的である
②リーダーシップが発揮されないのではなく、有害な行動を積極的に行う
点です。

それでは、なぜ破壊的リーダーシップを取るのか。パディラ・ホーガン・カイザー(Padilla、Hogan & Kaiser、2007)は有害な三角形として、

・リーダーの自己愛傾向
・盲目的に従う or ゴマスリメンバーの存在
・組織の不安定さ、権力の大きさ
をあげわ誰にも起こりうると提唱しました。

話を聴けば聴くほど
と今回も内容は盛り沢山の45分でしたが、改めて文字で整理すると、リーダーシップそのものについて理論を考える際に心理学のアプローチが必要なんだなと気付かされました。同時に、これだけ環境の変化が早いと、かつては”正しかった”理論も、再定義・再構築されていく…ことがリーダーシップ研究からも伝わる講義でした。

ただし、私の中で咀嚼するには時間がかかります(泣)。

「リーダー向きの人とそうでない人」の決定的差

 


1.メンバーがリーダーシップを受容するための要件を述べなさい。

・メンバーがリーダーを信頼すること

・リーダーとメンバーとの関係性の質。

2.リーダーシップの2要因論とPM理論

3.サーバント・リーダーシップについて

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA