第10回 コミュニケーションの生物学的基礎

神経・生理心理学(’22)

Neuro- and Physiological Psychology (’22)

主任講師名:髙瀬 堅吉(中央大学教授)

【講義概要】
神経・生理心理学では、心の生物学的基礎についての学びを主題とします。講義では、知覚、記憶、学習、感情、意識などの心の働きを担う脳の機能を中心に学びます。また、睡眠、生体リズム、遺伝子と行動、心の発達、心の病気についても、その生物学的基礎を紹介します。これらの知見に加えて、心の生物学的基礎を明らかにするための研究手法についても触れ、神経・生理心理学の総合的理解を目指します。講義内容は、公認心理師試験出題基準(ブループリント)の項目を網羅し、臨床の現場に関連する話題も扱います。

【授業の目標】
神経・生理心理学の基礎的知見、考え方を身につけることを目標とします。具体的には、1)心の諸機能の生物学的基盤、特に神経系、内分泌系のつくりと働きを理解し、2)知覚、記憶、学習、感情、意識などの心の働きが、神経系や内分泌系の働きによってどのように営まれているかを学びます。そして、1、2の知見を明らかにするための研究手法も学び、神経・生理心理学の総合的理解を目指します。

【履修上の留意点】
心理学の概論的講義を履修済みであることが望ましいです。また、数学、物理学、化学、生物学の知識が受講者に備わっていると、講義の理解は容易になります。しかし、これらの予備知識については、放送授業や印刷教材で、そのつど説明します。

第10回 コミュニケーションの生物学的基礎

失語症患者の臨床研究から明らかにされてきた言語情報処理に関わる知見を学ぶとともに、私たちが他者とコミュニケーションをとる際に必要と考えられている「心の理論」の生物学的基礎、コミュニケーションに関わる神経系、内分泌系の働きについても紹介します。

【キーワード】
失語症、ディスレクシア、心の理論、自閉症スペクトラム障害

 

ブローカ野、失語症、失行症、優位半球、アミタールナトリウムテスト、両耳分離聴能テスト、脳梁、分離能患者、ウェルニッケ-ゲシュビントモデル、心の理論、オキシトシン


1836年 マーク・ダックス(Mark Dax)

1891年 ピエール・P・ブローカ ブローカ野とブローカ野の傷害により起こることの発見により、言語処理・発話・言語了解に関する理解に革命が起きた。ブローカはルボルニュおよび彼に続く12の症例によって科学的に問題を解決したことで、機能局在論争において主導的な役割を果たした。彼の研究により他の人々が他の様々な機能の局在を、特にウェルニッケ野を発見した。

1900年代初期 ヒューゴ・K・リーブマン(HugoK.Liepmann) 失行症

半球優位性を調べるテスト

アミタールナトリウムテスト

両耳分離聴能テスト

脳梁

ロナルド・E・マイヤーズとロジャー・W・スペリー

マイケル・S・ガザニガ

ウェルニッケ-ゲシュビントモデル

心の理論 心の理論とは、他者の心を類推し、理解する能力である。 特に発達心理学において、乳幼児を対象にさまざまな研究が行われるようになった。 ヒトおよびヒト以外の動物が心の理論を持っているかどうかについては、誤信念課題によって調べられる。

心の理論 – Wikipedia

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群) – 国立精神 …
自閉スペクトラム症とは – 原因、症状、治療方法などの解説
大人のASD(自閉スペクトラム症)の特徴・特性とは?診断や …

「誤信念」「誤信念課題」

サリーとアン課題

「心の理論の欠如」


次の①~④のうちから、伝導失語症に関わる脳領域として正しいものを一つ選べ。

① ブローカ野
② ウェルニッケ野
③ 弓状束 正解です。
④ 角回

【解説/コメント】
失語症には複数種類あり、それに関わる脳領域には以下に示すものがあります。

● ブローカ失語症(表出性失語症):
大脳の左前頭葉にあるブローカ野が損傷を受けると、単語を正しく発音することが難しく、ゆっくりたどたどしく話すようになる表出性失語症を呈します。

● ウェルニッケ失語症(受容性失語症):
大脳の左側頭葉にあるウェルニッケ野が損傷を受けると、言葉は聞けますが、その言葉の意味を理解することができなくなる受容性失語症を呈します。

● 伝導失語症:
脳の弓状束が損傷を受けると、言語の理解と自発的な会話は障害されませんが、言語を聞いてすぐにそれを反復することが困難になる伝導失語症を呈します。

● 失読症/失書症:
角回を損傷すると、読むことができない失読症と、書くことができない失書症を呈します。

これらの失語症に関する研究から,言語機能に関する処理回路モデルとしてウェルニッケ−ゲシュビントモデルが提唱されました。


次の①~④のうちから、自閉症スペクトラム障害に関わるホルモンとして正しいものを一つ選べ。

① エストロゲン
② コルチゾール
③ オキシトシン 正解です。
④ 成長ホルモン

【解説/コメント】

自閉症スペクトラム障害について、内分泌系の異常を指摘する報告もあります。過去10年間で、オキシトシンの鼻腔内投与は、自閉症スペクトラム障害の症状を標的とした潜在的な薬理学的治療として探求されてきました。オキシトシンは視床下部の室傍核にあるオキシトシンを分泌する神経細胞で産生されます。この神経細胞は、扁桃体などの社会行動に関与する中枢神経系のさまざまな領域に投射しています。オキシトシンは末梢組織では主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時に子宮を収縮させます。また乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌を促すなどの働きを持ちます。このため臨床では子宮収縮薬や陣痛促進剤をはじめとして、さまざまな医学的場面で使用されています。オキシトシンは分娩中の子宮頸部および子宮の伸長および母乳からの乳首の刺激に応答して分泌され、血液中へのオキシトシン放出量はオキシトシンを分泌する神経細胞でのオキシトシン合成量と相関関係にあります。一方、中枢ではオキシトシンは社会行動に関与し、対人関係、特に発達期では親から子へのケア、子の親に対する信頼の確立に寄与し、社会的愛着の形成に重要な役割を果たしています。

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