「リーマン級」下落のナスダック、重なる売り要因(NY特急便)

 

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ナスダック総合株価指数の4月の下落率はリーマン・ショック時並みの大きさ(ニューヨーク証券取引所)=ロイター

29日の米国株市場でハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は前日比4.2%安と今年最大の下げとなり、年初来安値を更新した。4月月間では13.3%下げた。下落率はリーマン・ショックが起きた2008年9月(11.6%安)を上回り、08年10月(17.7%安)以来の大きさだ。

29日の相場急落の震源となったのはアマゾン・ドット・コムだ。一時は前日比15.9%下げた。前日夕に発表した22年1~3月期決算で営業利益が前年同期比59%減と市場予想を下回り、失望売りが殺到した。

「配送費や人件費などがかさんだ。過剰な人員と設備も重荷だった」。アマゾンのブライアン・オルサブスキー最高財務責任者(CFO)は営業減益の理由をこう説明した。だが、それが主要因ではない。1~3月期の営業費用は13%増にとどまり、むしろ同社としてはかなり低い伸びだ。

減益は売上高が7%増と20年ぶりの低さだったのが主因だ。かつてのように20~30%の増収なら楽々増益を達成していたはずだ。経済の正常化に伴って消費が旅行や外食などサービスに移り、追い風だった「巣ごもり消費」がやんだ。

同社に限らず、巨大ハイテク企業の1~3月期決算は売上高の伸び悩みが目に付いた。グーグルの親会社アルファベットの売上高は市場予想を下回り、メタプラットフォームズ(旧フェイスブック)の増収率は7%と同社として初めて1桁にとどまった。消費行動の変化、飽和する市場での顧客の奪い合いなどが要因だ。成長が鈍るならハイテク株の高いPER(株価収益率)は許容されにくい。

PERを抑える要因はそれだけではない。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めを受けた金利上昇も重なる。金利動向を占う最重要イベントとして、投資家は5月3~4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を警戒する。政策金利を通常の倍の0.5%引き上げ、保有資産の圧縮開始を決めるのは確実で、市場の関心は会合後のパウエル議長の会見に集まる。

6月と7月のFOMCでも0.5%利上げを続けるのか、それより大きい0.75%の可能性もあるのか。タカ派の旗頭、セントルイス連銀のブラード総裁を除けば、FRB高官からは0.75%利上げに否定的な発言が目立つ。現時点では実現の可能性は低い。

だが、パウエル議長は4月21日の討論会で「私の考えではもう少し速いペースで利上げすることが適切だ」と述べており、0.75%利上げも念頭に置いている可能性がある。5月のFOMC後の会見でも否定せず、選択肢として温存するのではないか。

市場の一部では最近の株安でFRBのタカ派姿勢が和らぐと期待する声もある。これに対し、米国野村証券のエコノミスト、雨宮愛知氏は「現状程度の株安ではその可能性はゼロ」と断言する。株価指数がわずか数日で10%超下がるとか、米債券市場の流動性が枯渇して金利が極度に不安定な動きになるとか、よほどの混乱が起きない限りFRBは金融引き締めペースを緩めないとみる。

成長の減速と金利の先高観。この2つの逆風が同時に吹くなら、ハイテク株には調整リスクがつきまとう。株式市場には「きな臭さ」が漂っている。

(NQNニューヨーク=松本清一郎)

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