「成功する」から「健やかに働き続ける」へ。キャリア新時代に40代がすべき3つのこと

「キャリア」「成功」と聞くとどんなことを思い浮かべますか? 会社員もしくは公務員のように組織に属している人なら、おそらく昇進や昇給といった組織内での“上昇”をまっさきにイメージするのではないでしょうか。しかし、コロナ禍で価値観やライフスタイルが大きく変化しつつある現在、このようなキャリア観は過去のものになりつつあります。

そんななかで新時代にフィットするキャリア観を提示し、人生をより楽しむためのヒントを提供してくれるのが、人事コンサルタントとして活躍する村山昇さんの著書『キャリア・ウェルネス 「成功者を目指す」から「健やかに働き続ける」への転換』です。本書では人生100年時代を念頭に置き、仕事で息切れすることなく長い人生をまっとうするためのさまざまなヒントが提示されています。

今回は、キャリアの壁にぶつかることの多い40代会社員に向けて書かれた部分を中心に抜粋してご紹介します。

人生100年時代にフィットする新しいキャリア観

キャリアという概念が次第にエリート・ビジネスパーソンだけの概念でなくなり、広く職業を持つ人びとに普及してきました。それに伴って、その言葉が含む意味合いや見方も広がっていきます。

大きくはまず、「成功のキャリア観」の反動として「自己防衛のキャリア観」というものが生じてきました。その背景として、少なからずの人たち、特にミレニアル世代と言われる若い世代が、会社組織の中で紋切り型の成功を目指すことに違和や疲れを感じ、自分を痛める仕事生活というものから離れようとしたのです。さらには一部で、労働者を粗悪な条件で働かせるいわゆるブラック企業的な雇用主が増えたことで、きつい労働から自分を守る意識はますます高まりました。

会社に滅私奉公することが普通だった昭和世代と異なり、平成・令和世代のキャリア観はプライベート生活優先に振れています。これはある部分、健全な寄り戻しとみることができます。しかし、このキャリア観によって、働くことは忌み嫌うべき作業であり、心地よい私的快楽に引きこもるような生活をよしとするのなら、それはまた一つの悪い極の姿にみえます。

誰しも100歳まで生きてしまうかもしれない時代において、「成功のキャリア観」も「自己防衛のキャリア観」もどこか不健全さが残ります。そこでいま、第三の構え方として「健やかさのキャリア観」ともいうべきものが求められています。

会社にしがみつく40代の危険水域

私はまもなく60歳を迎えます。23歳で企業に新卒入社し、17年間会社員をやりました。そして41歳で独立、18年が経ちました。私自身、会社員と個人事業を半々やってみて、さらには同い年の会社員たちの定年間際の姿をさまざま観察してわかることは、雇われることが目的化した会社人意識にどっぷり浸かると、健やかに働き続けるキャリアから遠ざかるということです。

もちろん会社に雇われ続ける生き方を否定するわけではありません。むしろ安定的に雇用される中で、自分のやりたいことに近い仕事をできるならそれは好ましい状況です。しかし、まるごとの自分を使って没頭したいと思える仕事に出合える会社員というのは少数ですし、その好きな仕事がずっと続くわけでもありません。おおかたは自分の手(スキル)とアタマ(専門知識)を切り売りしながら、経営側の意思に振り回されながら雇われ続ける生き方になります。こんな会社やめたいと思っても、40代以降ともなると「いまさらどこの会社も雇ってくれない」という現実がのしかかり、会社にしがみつくしかありません。そのストレスは相当なものです。メンタルを病むことにつながる場合もあります。

厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが「この会社に雇われるしか選択肢がない」という状況になった時点で、かなりキャリアの危険水域にあります。

40代前半というのは、65歳定年までのキャリアマラソンでいえば、やっと折り返し地点にきたところ。後半の半分を会社人としての悪い皮を厚くさせるのではなく、一職業人としての独立意識を育むことがマインド醸成上の肝だと考えます。

キャリア弱者になる危険性の高い人とは?

みなさんはいま会社から雇われていて会社員であるわけですが、心の中にはこうした二つの意識が同居しています。

一つはもちろん「会社人」的な意識。意識が向けられる先には会社があり、会社の意思に合わせて自分のキャリアや働き方を対応させていく形になります。他方には、「職業人」的な意識があります。意識の主たる向け先は職業であり、その職業をまっとうしていく過程にキャリアや働き方の選択があります。職業人的な意識の典型はプロスポーツ選手です。雇用組織を所属チームと考えるとわかりやすいでしょう。

あなたの意識はこの二つがどんな割合で混合しているでしょう。「会社人意識:職業人意識」が「8:2」でしょうか、「4:6」くらいでしょうか。人それぞれにあると思います。「会社と個人の関係性をどうとらえるか」でみたとき、会社人意識の人は、おそらく「タテの主従関係」でとらえるのではないでしょうか。他方、職業人意識の人は、「ヨコの協働者関係」でとらえます。

両者の関係性をタテでとらえるか、ヨコでとらえるかの違いによって仕事・キャリアに対する態度も違ってきます。これはよくよく考えると大きな違いです。

会社人的な意識はそれ自体悪いものではありません。ただ、その意識は過度になると問題もあります。一つには、会社人意識が依存心と結びついた場合です。「この会社に雇われるしか選択肢がない」といった状況にある人は、言わば「キャリアの弱者」です。不遇の境涯からそうなってしまった人は、もちろん社会的に保護されるべきですが、みずから進んでそういう状況に陥ることは避けねばなりません。依存心を排し、「エンプロイアビリティ(雇用されうる力)」を磨くべきです。

また、依存心が悪くねじれてしまうと、会社に要求ばかりして居座る「ぶら下がり者」になってしまうでしょう。こうした人は、「しょせん業務は会社が与えるもの。自分たちはつらい仕事でも理不尽な配属でも実直にこなしてきたのだから、主人である会社はいろいろと面倒をみるのが当然」という姿勢になります。

本当のキャリア充実のために40代がすべきこと

会社は、ヒトを「人財」として扱い、能力・可能性を大いに育んでやるという包容力が必要です。その結果、個人から「選ばれる」会社になる。専門用語で言うと、「エンプロイメンタビリティ」(=求職者からみて、この会社に雇われたいなと思わせる能力・魅力)の高い事業組織です。ヒトを酷使するブラック企業は、長い目でみれば存続できません。

他方、働く個人は、「人財」にふさわしい能力・可能性を養い、会社という資源・資産を大いに活かすというくらいの力量がほしいところです。そして、会社から「選ばれる」個人になる。専門用語で言うと、「エンプロイアビリティ」(=雇われうる力)を磨くということです。すなわち、あの人ならうちで働いてもらいたいなと思わせる能力・魅力です。

キャリアマラソンを健やかに完走するために、40代以降に重点を置きたいことを三つあげます。

一つ目に、「職業人」意識を強めること。自分から会社名とか肩書きとかを外し、一職業人としてどうありたいのか、どう行動していくのかという目線で日々の仕事に向き合ってください。

二つ目に、「エンプロイアビリティ」を磨く。「いつだって、ほかの会社に雇われうる実力はある」、「起業だって選択のうちにある」というくらいの気概と力を持つこと。

三つ目に、「プチ自営業」の経験を積むこと。小さな規模でいいので、自分個人がつくり出した商品・サービスを直接誰かに買っていただく経験をしてみてください。「雇われない生き方」の予備訓練です。

「会社」のとらえ方次第で人生が楽しくなる!

 

「会社人」の意識を強く持つ人と、「職業人」の意識を強く持つ人とでは、「会社」のとらえ方が変わってきます。

さて、「会社とは何か」の定義ですが、ここでは次のように提示したいと思います。

会社員を定年まで続けるとすると、そのマラソンはまだ20年もあります。「会社人」意識に縮こまって走っていくとつらいマラソンになるでしょう。是非、「個として強い職業人」となるためのマラソンにしてください。そして、会社という学校を卒業した暁にはライフワーク・ソウルワークを手にして、キャリアの第二マラソンを楽しまれんことを願っています。


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