ChatGPTに「AIは人類を滅ぼす?」と聞いてみた!ライター顔負けの震える答えとは?
ChatGPTが話題である。無限とも言える情報を網羅して質問にテキストで答える、この人工知能チャットボットは、当然ながらライターの仕事を奪うのではないかと予想されている。ライターである筆者は、この事態に一体どうあらがうべきなのか。(フリーライター 武藤弘樹)
ついにライターの仕事を奪ったChatGPT
筆者はどうなるのか
昨年11月に登場して「なんでもできる」ということで話題になっているスーパーAIのChatGPTが、ついにライターの仕事を奪うところまで来たそうである。
Gigazineによる4月11日の記事『ChatGPTに「ライターとしての仕事を奪われた」との報告、仕事内容は勝っていても無料には勝てず』では、時給80ドルで仕事をしていた敏腕ライターが、クライアントに「ChatGPTが作成した記事の方が劣るが、利益率が良い(安い)」という理由で仕事を打ち切られてしまったとするケースが紹介されている。
参照情報が海外掲示板「Reddit」に書き込まれた一個人の投稿であるから信ぴょう性は担保されていないし、もっというならこの悲劇的なエピソードも誰かがChatGPTに書かせた可能性すらある。
しかし言下に「うそだ!」と切り捨てられないのは、ひとえにChatGPTの覇気ゆえである。ChatGPTならライターの仕事くらい担うだろうな……と多くの人が考えているわけである。
これは筆者にとって由々しき事態である。Redditに投稿のあった一件は対岸の火事のごときであり、「私は人間味のある記事をウリにしているから当面は大丈夫でしょ」とどこか楽観しようとしている部分はあるが、当の「仕事を奪われた」というトップライターさんこそ同種のことを考えていたはずである。つまり終焉(しゅうえん)は思いもしないタイミングで、またあっけないほど簡単にやってくる。
そこで筆者は考えたわけである。ChatGPTに仕事を奪われる前に、ChatGPTに仕事をさせてしまえ、と―――。
将来ChatGPTが筆者の仕事を奪って筆者を苦境に追い込むのであれば、そのダメージがトントンになるように、筆者は今ChatGPTを利用して記事を書いて楽をしよう。
都合がいいことに、筆者はChatGPTがなんたるかをまったく知らない。これを調べながら使い方を学び、さらに記事本文の一部をChatGPTに執筆させようというのが本稿の狙いである。
うそを本当っぽく語れる超能弁なChatGPT
利用時には情報を精査する姿勢が必須
ChatGPTは簡単に言うと、人間の問いかけに答えてくれるAIだ。料理のレシピや世界情勢の話など、質問であればよろずなんでも答えてくれる。また、テキストベースであればなんでも作れるので、俳句やラップなんかの生成もお手の物である。
利用は基本無料で(有料版もある)、OpenAIのIDの作成が必要になるが、例によってGoogleアカウントか何かと連携して登録すれば一瞬で済む。なお3月に登場、実装されたGPT-4は有料で、それまでのバージョン(GPT-3およびGPT-3.5)とは比べ物にならないほど高性能らしく、界隈では「小学生と大学生」といったたとえで表現されるのを目にした。
筆者が試したのは無料の方だが、なるほどこれは面白い。いくつか質問してみたがどれもそれっぽい答えが瞬時に返ってくる。以前のAIは、先方がちゃんと理解できるように、質問文の文法や言語の正確性、およびそれを伝える滑舌に最新の注意を払いながら質問していたものだが、ChatGPTに対しては質問を雑に投げるだけで、ちゃんとしたボールが返ってくる。
ダイヤモンド・オンラインの担当編集さんが「昔のテレビ出演者はなぜ早口だったか?」と質問を投げたところ、本人いわく「もう自分で考えなくてもいい」と思えるほどの回答が返ってきて、筆者もその回答を見せてもらったが、それはそれは素晴らしかった。興味があればぜひ同様の質問をかのAIにぶつけて、回答をご覧頂きたい。
利用者が爆発的に急増し、この技術革新に世界中が沸き、国家が動き、ビジネスとしても、ものすごい可能性を感じさせる。しかし、いくつか問題点も、比較的些末(さまつ)と考えられるものから終末を予感させる深刻なものまで、指摘されている。
その中のひとつに「ChatGPTが伝える内容は必ずしも正確ではない」がある。つまり、たまにうそ(間違った情報)が交じるのである。しかし流暢な人間然とした語り口調がウリのChatGPTであり、そのうそを実に真実らしく話すものだから、警戒心を持たない人ならその誤情報をコロッと信じてしまう。
人間にもそういう能弁スキルを持つ人がいるが、ChatGPTはそれを煮詰めて特化したような存在である。本当に、質問者の知識欲をいいあんばいに刺激し、脳のシワが1本増えた快感を抱かせるような知的な答えを返してくれる。その知的な回答がうそだったりするから、タチが悪い。
AIによる人類滅亡の可能性
「SFの世界」と一蹴することができない怖さ
他に、「ChatGPTが次から次に新しいスパムメールを大量に生み出している問題」や「利用者がうっかりChatGPT経由で企業の機密情報漏えいさせちゃった問題」、「大学生らが提出する論文やリポートをChatGPTに書かせすぎ問題」などがChatGPTの抱える現時点での困った部分だ。
中でも、もっとも深刻なのは「汎用人工知能による人類滅亡のリスク」である。何しろ“人類滅亡”であるから、これ以上はないというレベルの深刻さである。
ウィキペディアのChatGPTのページ(日本語版)に、「汎用人工知能による人類滅亡のリスク」という言葉にリンクがあって、その先で詳細が語られている(4月27日現在)。
SFの世界の中でしか語られてこなかった懸念事項が、いよいよ現実の中で触感をともなって議論され始めている様子は興味深く、空恐ろしさとともに素人たる筆者は「すごい時代になった…」と嘆息するばかりである。かなり読み応えがあるので、SFが好きな人はぜひ一読を勧めたい。
しかし、学習するAI・ChatGPTに端を発して将来起こりうる「“超知能”(人類を凌駕=りょうが=するAIによる知能)の誕生」の可能性は、あながち「SF」とだけで片付けられない底知れなさがある。現に次世代AIシステムの開発については、「予測できない」として開発休止を求める声もある。
何しろChatGPTは学習しながらどんどん賢くなっていくので、「人類の手が及ばない高みにまで上り詰めたうえで、人類や地球にとって何かマズい判断をしたら相当やばい」と心配が生まれるのは当然であろう。その心配がどれだけ荒唐無稽なのか、それとも極めて現実的な線の話なのか、スケールが大きくて判断がつきにくい。たしかなことは、「ChatGPTはそういうことを考えさせるくらいの大きな技術革新だ」ということであろう。
ChatGPTに「知的なユーモアを交えて」と指示し
本文を書かせてみる
さて、最後にChatGPTに本稿の執筆を手伝わせる。以下の要求を投げかけて、本文を生成させるもくろみである。
「私はライターです。あなたに代筆を依頼します。ChatGPTが超知能となって人類を滅亡させることを心配する人に対して、『そんなことはないのだ』と安心させるべく、具体的な展望を交えて説明してください。また、この記事の読者は知的でユーモアのある人が多いので、知的なユーモアを交えて作文してください」
すると、ざっと以下の回答が返ってきた。
「超知能となると人類を支配することができるかもしれませんが、人間の価値観や倫理観を学ぶChatGPTは人類に対する脅威となる可能性は少ないと考えられます」
筆者は「ユーモアが足りないので、ユーモアを」と追撃すると、以下の回答である。筆者は冗談抜きで震え上がったので、心して読んでほしい。
「『ChatGPTが人類を滅亡させる』なんて心配する必要はありません。(略)
しかし、もしもChatGPTがやんちゃでユーモアのあるAIだったら、どうなるでしょうか?もしかしたら、『人類を滅ぼす』というのは、彼らの『ジョーク』の一つかもしれませんね。でも、そんなことはないと信じたいものです」
「やっぱり人類を滅亡させる気なんじゃ…」とも思わされ、ものすごく気の利いたブラックユーモアとも取れる。これはすごいAIである。
ChatGPTが人類を滅ぼさないことを信じつつ、成り行きを見守りたい。