#44 今日から役立つ 人生を豊かにする日経の読み方

今週の注目テーマ【① 「私の履歴書」研究、②モルスタ、GS戦略の違い、③年収10万ドルでも余裕なし】1/31(火)P17 東証は憎まれ役になれるか、P33 教員「発音」に不安強く2/1(水)P12 印アダニ窮地不正会計疑惑、夕P7 その日暮らし 嘆く消費者2/2(木)P9 証券大手4社 減益・赤字、P34 石原信雄氏が死去 元副官房長官歴代最多7内閣支える2/3(金)P1 ソニーG社長に十時氏、P12 アダニショック 市場揺らす、P38 相川賢太郎氏死去■私の履歴書で読み解く証券界2人のリーダーの違いやっと終わった野村の古賀さんの巻野村ホールディングス、古賀信行さんの「私の履歴書」が終わった。サラリーマン経営者に共通の「つまらなさ」と「凡庸さ」が満載だった。ちなみに本人の社長時代は紙面にしてわずか2日間分で、その後は経団連の話だ。財界司令塔の中で感じた本音を聞きたいと思ったが、望むほうに無理があると、1カ月間読んでそう思った。1月31日(30回目)では「野村にいた(川田注:過去形だ!)古賀さん」になりたいとか、「私のモットーは『人生最後はチャラ』である~結局のところ、人生はプラスマイナスゼロなのだ。そう考えてこれまで生きてきた。これからもそれは変わらない」とも言って、地位に恋々とせず無欲恬淡に自分のこれまでを振り返っている。ちょっと待てよ!もしそうなら全身全霊で仕事に取り組んでいる社員も彼には“チャラ”に見えているのか?だとしたらどこか虚しくないだろうか?半分、達観そして老成した彼の人生観にはそういう含みが感じられる。大和の鈴木さんは人間味溢れるリーダーところで、私の古巣の大和証券では鈴木茂晴元社長が2020年1月の「私の履歴書」に登場した。彼のほうが古賀さんより人間味があって正直な印象だ。ただし当時の証券界の常識だった「絶対もうかる!」との断定的なセールストークや「ダマテン(=顧客に無断で売買)」など、言語道断な業界“慣行”を面白おかしく語り、「万事おおらかな時代」と切って捨てて読者の苦笑いを誘っていた。私も長く大和にいたから当時の雰囲気は理解できる。それでも、あの“悪行”(私は犯罪だと思うが)をさも得意げに語れる人が大手証券の一角、そして業界の頂点にいたことに違和感を覚える人も多かろう。古賀さんは証券業が嫌いで、鈴木さんは楽しくて仕方ない?さて、古賀さんは、私が証券界で一番重視する個人投資家の利益にどこまで関心があったのか不明のままだ。それよりも業界のリーダー企業に求められる役割の中枢を担っていた。その一方で、証券ビジネスそのものへの興味や熱意がまるで感じられなかった。連載の最後のほうでは、むしろ証券のニオイを消し去りたいとか、業界から消え去りたいというニュアンスだ。一方で、鈴木さんは存分に力を発揮し、サラリーマン生活をエンジョイしている。社長としての鈴木さんは大和証券のDNAと企業文化を熟知した上で社員のモチベーションを上げることに成功したと言われている。なかでも女性社員が活躍できる企業としてのイメージ作りがその功績としてよく挙げられる。野村と大和の違い私が大和にいたころの証券界は大手4社が主導していた。中でも野村証券は「ガリバー」と言われ、その影響力や支配力は絶大で大蔵省とはずいぶんと距離が近かった。野村と大蔵省は密な意思疎通を図りながら、日本の企業金融における直接金融と間接金融の境界や役割分担を協議し、制度や仕組みを作りこんでいった。私は先輩からそう教わった。したがって2人のリーダーの回顧録にも両社の立場の違いが鮮明に現れる。野村は業界全体を考えなければならないが、大和にはそういう役回りは少ない。だからトップに求められる資質も自ずと異なりその差が筆致にも表れるのだろう。ところで大和証券出身で「私の履歴書」に登場したのは2人だけだ。大和証券の前身の藤本ビルブローカー入社で、大和証券になってから社長を務めた福田千里さん(1961年連載)と2020年の鈴木さんだ。一方で野村證券出身者は、私の知っているだけでも奥村綱雄、瀬川美能留、北裏喜一郎、田淵節也、寺澤芳男の各氏、そして古賀さん。それ以外にもいるかもしれないが。2人とも優れたサラリーマン経営者に違いないさて2人とも履歴書の面白さでは、創業者社長や学者、芸術家には及ばない。それでも日本の大組織のサラリーマン社長に求められる資質は備えていることがうかがえる。古賀さんのようなエリート社員のキャリアは誰もが歩めるわけではないし、鈴木さんのような人間味あふれる魅力で顧客と社員をその気にさせる人もまた少ない。2人はそれぞれの組織のそれぞれの立場で時代が求める役割を演じることができる、非凡さを持ち合わせていたと言うべきだろう。*なお私の履歴書を研究している吉田勝昭さんのウエブサイトが参考になる。https://biz-myhistory.com/toujousha-keisai/ところで、最近また参加人数が増加気味だし議論も活発だ。元“野球小僧”の飯村さんは、金曜に送った事前版に対し丁寧な自分の意見をメールで返してくれた。その上、当日は用事で途中退出の直前まで参加して自分の意見を述べてくれた。またシカゴMBA熊倉さんや、リケジョ&考古学の林解説委員は、人生で学んだ教訓をこの会で皆さんに還元しようと積極的に発言してくれる。なんか、いい雰囲気になってきた。

川田重信のありがとうアメリカ株式 [主催者]

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