日本の低賃金のままの「労働力不足」が招く、低消費国家。
日本の「労働力不足」を嘆く必要はまったくない理由
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日本では労働力不足が課題と言われている。労働力不足という言葉は、困ったことのように聞こえるが、企業経営者にとっての課題なのであって、労働者にとっては望ましいことともいえる。そうした視点から労働力不足のメリットについて考えてみたい。(経済評論家 塚崎公義)
● 低成長でも労働力不足にあえぐ理由
日本経済はバブル崩壊後の長期低迷期を脱していないが、それでも第2次安倍政権下で実行された経済政策「アベノミクス」によって経済成長を目指す中で、労働力不足となった。そして、いわゆる“新型コロナ不況”から緩やかに回復しつつある今、再び労働力不足が深刻化しつつあるようだ。
従業員が新型コロナに罹患したり、濃厚接触者となって隔離されたりして出勤できない、という足元の労働力不足も話題となっているが、本稿では新型コロナウイルス感染拡大の収束後について考えていきたい。
アベノミクスで低成長下の労働力不足が発生した背景は、少子高齢化である。現役世代の人口が減る一方で、高齢者の人口が増えれば労働力が不足するのは自然なことであるが、それ以外にも理由がある。それは、高齢者の需要は医療や介護など、多くの人手が必要となる労働集約的なものが多いからだ。
そうであれば、今後も少子高齢化が続き、基調としての労働力不足は深刻化していくだろう。実際、新型コロナ不況からの回復の足取りが緩やかであるにもかかわらず、たとえば日銀短観(日銀が定期的に実施している企業に対する大掛かりなアンケート調査)の2022年6月調査によれば、雇用人員判断の項目で過剰という回答の比率はわずか6%、不足という回答の比率は30%で、不足という回答の方が24%ポイント大きい。これは20年6月調査の「過剰=16%」「不足=22%」で、過剰と不足の差6%と比べると大幅な改善であり、コロナ前の20年3月調査によれば数値はそれぞれ「過剰=5%」「不足=33%」、過剰と不足の差28%であったから、おおむねコロナ前の水準まで戻ったと言えるだろう。
● 理屈で考えれば 労働力は不足するはずがないのだが
理屈で考えれば、労働力は不足するはずがない。労働者を募集しても応募がないならば、従来よりも高い賃金で労働者を再募集すれば良いからだ。マクロ的に考えても、需要と供給の一致する価格(労働力の価格である賃金)が実現すれば、定義からして需要と供給は一致するはずだ。
つまり、労働力不足であるのは「賃上げ不足」だからであって、賃金が上がれば労働力不足は解決するわけだ。
「経営が厳しくて賃金を上げる余裕がない」という企業もあるだろうが、そうした企業には事業の縮小や退出を含めて検討してもらう必要があるかもしれない。筆者のことを「冷たい」と感じる読者もいるだろうが、冷静に考えれば、それは仕方のないことだ。
「足りない」ということは、その分、誰かが我慢をしなければならないということだ。「賃上げできずに労働力不足に苦しんでいる企業がかわいそうだから、何とかしてあげたい」と思う人は多いだろうが、そのためには他の企業から労働者を移動させる必要があり、そうすれば他の企業が同様のかわいそうな目に遭うだけである。
では、誰が我慢するべきなのか。
誰かが我慢しなければならないならば、高い賃金が払える効率的な企業よりも、高い賃金が払えない非効率な企業に我慢してもらう方が理にかなっているし、日本経済のためでもあろう。
● 労働力不足は 労働力余剰よりはるかに望ましい
労働力不足という言葉は、困ったことのように聞こえるが、企業経営者にとって困ったことなのであって、労働者にとっては望ましいことである。失業のリスクが小さいし、賃金が上昇する可能性も高い。
特に、パートやアルバイトといった非正規労働者の時給は上がりやすいだろう。正社員は賃上げしなくても辞めないが、非正規労働者は時給を上げないとすぐに辞めてしまうからである。
最も恵まれていない失業者がいなくなり、次に恵まれていない「ワーキング・プア(非正規労働者として生計を立てている人々)」の生活が改善するのは、素晴らしいことではないだろうか。
労働力不足になると、ブラック企業も存続できないだろう。「辞表を出せば失業者だぞ」という脅しで従業員を酷使しているような企業にとって、従業員が容易に転職先を見つけられる状況は“災難”といえるからである。
また、労働力余剰の時には政府が失業対策としての公共投資を行うことで財政赤字が膨らみかねないが、労働力不足であればそうした支出は不要である。
上記を総合的に考えれば、労働力余剰よりも労働力不足の方がはるかに好ましいことは明らかであろう。 筆者としては、労働力不足という否定的な語感を持たない別の言葉を使うべきだと考えているが、センスが乏しいので良い案が思いつかない。「仕事潤沢」「求人過多」では今ひとつだろうから、今後も適切な用語を探すこととしたい。
● 労働力不足なら 最低賃金の引き上げは妥当
最低賃金が今年も引き上げられることになったが、労働力不足の現状を考えれば妥当であろう。経営者が自主的に賃上げを行わず、低すぎる賃金で労働者を雇おうとしていることに気づいていないのだとすれば、強制的に賃上げをさせて労働力不足を解消する方向に導く方が良いだろう。
また、経営者の中には、低すぎる賃金であることを知りながら、「情報弱者の労働者が安すぎる賃金であることに気づかずに応募してくれるだろう」といった期待をしている経営者もいるかもしれないので、そうした募集を許さないためにも最低賃金は引き上げるべきである。
もっとも、最低賃金は不況期には失業を増やしかねないので、要注意である。最低賃金を失業率次第で柔軟に引き下げることができる制度にしておかないと、「一度引き上げた最低賃金が引き下げられないので、次の不況期に失業が増えても賃金が下がらない」といったことがないようにしていただきたいものである。
本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解である。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない。
塚崎公義
労働力不足となっている現在、確かに企業は低賃金のまま雇用を維持したいがために、安い賃金の求人をしているため人が集まらないと嘆いている。
そんな企業、労働力が不足している職場で、安い賃金のまま雇用され労働している者は、人が集まらないと嘆いている雇用者より、非常に深刻な状況である。体は疲弊し、日々のムリが蓄積し、そのうち日本全体が精神病になってしまう、もう半分なっている状態である。
確かに、「安い賃金の求人をしているため人が集まらないと嘆いている。」なら賃金を上げて求人すれば話ではあるが、労働力不足のまま、我慢して働いている労働者の賃金は上げられるのだろうか、いや、その求人で増加する賃金よりもっと上げなければ、なにも知らない新人より賃金が下がってしまう。そんな状態で、新人が入社してきても、以前の労働力不足なうえに教育もしなくてはならないため、人が増えたことによるムリが増加するだろう。
求人を高賃金にして人を募集するなら、今残っている労働者の賃金を上げなければその労働者自体も退職してしまいその企業は生き残れなくなってしまうだろう。
早めに現労働者の賃金をアップし、そのアップ率より低い賃金で求人しなければならい。そのため現労働者の賃金を新しく入ってくる労働者より、高いものにしなければ、ワークモチベーションが無くなってしまい退職するのは目に見えている。そのため雇用者は、賃金アップに躊躇してはいけない。と思うのは間違ってはいないはずである。そこを、今の日本は、低賃金のまま、労働者をなだめすかしながら、また、「賃金を上げたいが、上げたら会社は潰れてしまう。」などと、脅しながら働かせているのが現状だろう。
このような状態で、日銀の黒川総裁がいう賃上げなんてムリな話である急激なインフレ、円安により日本が、労働者が潰れてしまうのが、先か、賃上げが先かを考えると圧倒的に前者が先であるように思える。
最近の若者は車を買わずギャンブルもしない!?損をしたくない気持ちが強くなっているのはなぜ?【ゼロからわかる知らないと損する行動経済学】
近年広がる若者の損失回避傾向とは
損失回避傾向はシニア層と女性が強くもつ心理ですが、最近は10代、20代の若者の間にも広まっています。損失回避性が強い層を見ると、10代、20代と60代、70代が高い傾向にあります。人の損失回避性は幅広く広がっています。
最近の若者は車をもたない、海外旅行に行かない、高級ブランド品を買わない、またギャンブルをやらない傾向が顕著です。博報堂生活総研「生活定点1992-2020」によると、ギャンブルが好きなほうだと回答した20代は1996年では23.1%、2000年には19.0%、2010年には16.0%、2020年には8.0%と近年は低い水準で推移しています。
若者(特に男性)は以前に比べ「損をしたくない」という気持ちが強く育っており、ギャンブルのような構造はマッチしないのです。
金銭面・文化面での変化が影響!好景気の時代バブル景気とは?
こうした背景は不景気による雇用の悪化、所得の低下があるでしょう。リスクが伴う娯楽よりもお金がかからない娯楽に気持ちが向くのは当然です。文化の変化もあります。昭和から平成にかけてのバブル景気では「ムダがカッコイイ」という風潮がありました。見栄で車を買って、博打をする。そうしたスタイルが景気の衰退とともに輝きを失ったのです。
日本におけるバブル景気とは1986年~1991年に起こった好景気と社会現象のことをいいます。株や不動産を中心とした資産の過度な高騰が起こりました。都心には「億ション」が並び、企業でも大量の雇用を生みました。実態と価値がかけ離れていることで泡(バブル)と称されました。
バブル経済期とは大きく異なる今、20代の男女は、損するものに対して興味がなくなり、ギャンブルなどリスクを伴うものを避ける傾向にあります。
最近の若者は車をもたない、海外旅行に行かない、高級ブランド品を買わない、またギャンブルをやらない!?損をしたくない気持ちが強くなっている、というか不景気による雇用の悪化、所得の低下により損なんて出来る経済状態ではない、ましてや貯蓄なんてムリ、ムリ、ムリ、な生活をしている。
バブル期からの長期的な動きを振り返ってみましょう。終値ベースでみた日経平均株価の史上最高値は、バブル景気でつけた3万8,915.87円。1989年12月29日のことでした。バブル経済崩壊後、終値での最安値をつけたのは2009年3月10日。7,054.98円まで下げています。リーマンショックと呼ばれる、世界的な金融危機が発生した時期の出来事です。それらを理由に日本経済は、低成長というか、成長なんてしていない退化経済をしつづけている。その最たる理由が、雇用者による低賃金労働である。
そんなことを続けてきたツケが、最近の若者に消費しない行動として現れてきている。この低消費国家日本では、世界GDPランキングは、2位まで上げたがその後は中国に抜かれ、また、現在はドイツに向かれ、4位に転落、この先10位にすら入らなくなるだろう。
まっ世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキングでは、もうTOP10なんて入っていないし(28位)、退化国家まっしぐらです。
Z世代の50%以上が「恋人がいたことがない」 結婚相手に求める条件は?
BIGLOBEは、全国の18~25歳の男女に「Z世代の結婚に関する意識調査」を実施した
BIGLOBE(東京都品川区)は、全国の18~25歳の男女を対象に「Z世代の結婚に関する意識調査」を実施した。「現在恋人がいるか」を聞いたところ、「恋人がいたことがない」と答えた割合は51.0%だった。 【調査結果】現在の恋人の有無など(計4枚) 「恋人がいる」は24.7%、「過去にいたが現在はいない」は24.3%だった。 結婚相手に求める条件の1位は「趣味や価値観が同じ」(55.2%)だった。2位は「居心地の良さ」(51.8%)、3位は「優しい」(48.6%)、4位は「金銭感覚が同じ」(43.4%)、5位は「経済力がある」(38.8%)だった。
結婚にあたり欲しいと思うもの、したいと思うことは
結婚にあたり欲しいと思うもの、したいと思うことは何か聞いた。「結婚式」については「したい」が19.1%、「ややしたい」が22.2%で、合わせて約4割のZ世代が「結婚式がしたい」と回答、「したくない」派がやや多い結果となった。一方、「結婚指輪が欲しい」は60.0%、「新婚旅行がしたい」は61.4%、「記念写真が欲しい」は59.1%、「持ち家が欲しい」は56.6%と半数を上回った。
結婚観・結婚のかたちについて
結婚観・結婚のかたちについて複数の質問をしたところ、「事実婚でも良いと思う」と答えた割合は「あてはまる」が20.2%、「ややあてはまる」が27.0%という結果に。約半数が事実婚でもいいと考えていることが分かった。
別居婚については、「あてはまる」が18.2%、「ややあてはまる」が26.7%と、こちらも約4割が別居婚でも良いと考えていることが分かった。「財布(家計)は別にしたい」については、「あてはまる」が19.1%、「ややあてはまる」が31.7%と、合わせて5割程度だった。
6月14日に公表された内閣府『令和4年版男女共同参画白書』では、デート未経験の20代独身男性は39.8%、20代独身女性は25.1%という結果が大きな注目を集めた。少子高齢化と呼ばれ続ける世の中で、Z世代の若者の結婚観も注視される。
今回の調査は、全国18~25歳の既婚・未婚の男女を対象にインターネットで行った。期間は8月19~23日、有効回答数は500人(うち未婚445人)。
ITmedia ビジネスオンライン
1990年代半ばまで、日本の賃金は世界トップクラスでした。ところが、その後今日に至るまで名目賃金はほとんど上昇せず、物価上昇分を差し引いた実質賃金は1997年を100として2016年には89.7に低下しています(OECD調査)。
また退職金も1997年の2871万円をピークに減少し続け、2018年は1788万円と、21年間で1000万円以上もダウン(厚生労働省「就労条件総合調査」)。
賃金上昇を阻む一つ目の構造問題は、中小企業です。中小企業では規模の経済(生産量が増えると単位当たりのコストが低下する効果)が働かないので生産性が低いからです。ただ日本で特徴的なのは、生産性の低い中小企業がなかなか淘汰されず、存続することです。
もう一つ大きな構造問題が、非正規労働者の増加です。厳しい経営環境の中で生き残るには「正社員をできるだけ雇用したくない」という事情があります。日本では、正社員の解雇が判例で厳しく制限されています。整理解雇の4条件を満たせば余剰人員を解雇できることになっているものの、適用条件が厳しく、労働者の働きが悪いという程度では解雇できません。企業からすると、いったん正社員として雇用したら解雇できないので、不透明な経営環境では解雇しやすい非正規労働者を増やそうとするのです。雇用形態別の賃金をみると、男女計では、正社員・正職員324.2千円(年齢42.2歳、勤続年数12.5年)に対し、非正規労働者214.8千円(年齢48.8歳、勤続年数8.7年)となっています(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2020年)。
国は、非正規労働者の待遇を改善するためにパートタイム・有期雇用労働法などを改正し、昨年4月から大企業に「同一労働同一賃金」を義務付けました(中小企業は今年4月から)。
これによって正社員と非正規労働者の非合理な待遇格差がなくなり、非正規労働者の賃金水準が上昇することが期待されています。
ただ、正社員の解雇規制がある限り、正社員の雇用をできるだけ抑制しようという企業の姿勢は変わらず、非正規労働者の正社員への転換が進むことはありません。もし非正規労働者の賃金が大きく上がったら、企業は非正規労働者の雇用を減らして外国人労働者などの雇用を増やすか、それも難しいなら事業所を海外移転させます。
したがって同一労働同一賃金で全従業の賃金水準が大きく改善することはないでしょう。経団連が過去3度にわたって政府に要望しているとおり、解雇規制を緩和することによって、初めて企業は安心して正社員を増やすことができ、平均賃金が上がります。
このように日本では、中小企業と正社員を守る法規制・政策支援が存在することで、なかなか賃金が上がらない構造になっているのです。
2020年における非正規労働者は2090万人で、雇用者全体5620万人に占める比率は37.2%に達しています(総務省「労働力調査」2020年)。1989年(平成元年)には約20%だったので、平成の期間に非正規労働者が激増しました。平成の時代に低賃金の非正規労働者が増えたことが、平均賃金を下押ししたのです。
このような低賃金が続いて、その間に成長した若者は、ますます、低所得、低消費国民となり、そのため車をもたない、海外旅行に行かない、高級ブランド品を買わない、またギャンブルをやらないだけではなく、恋人すらつくらなくなってきた。そのため結婚はしなくなり、婚姻率は低下し、それにより少子化がますます加速している状態である。その少子化にもとない高齢化が世界一の速度で進行している。