第9回 観察法2:観察データの解析
心理学研究法(’20)
Psychological Research Methods (’20)
主任講師名:三浦 麻子(大阪大学大学院教授)
【講義概要】
心理学の諸領域で用いられている基礎的な研究法について講義する。学習者が自らテーマを設定して研究を計画し、一連の科学的実証手続きを経てそれを遂行できるようになることを目指して、心理学の研究者・実践家としての心構えを含めて、スキルとテクニックを教授する。
【授業の目標】
心理学の諸領域で用いられている基礎的な研究法を学び、それらをふまえて自らテーマを設定して研究を計画し、収集したデータを分析・考察するという一連の科学的実証手続きを遂行するためのスキルとテクニックを習得することを目指す。
第9回 観察法2:観察データの解析
定量的に測定された観察データを解析するための手法を理解する。観察データの信頼性と妥当性の評価とグラフ化の方法を身に付けた上で、観察データに適用される統計解析の実際について学ぶ。
【キーワード】
信頼性、正確性、妥当性、グラフ化、観察データの統計解析
信頼性、同じ事象を観察した際に同じデータが一貫して得られる程度のことを指す。観察者間一致(IOA)
正確性、観察記録と真の値との一致の程度。一部のデータを産物記録法と直接観察の両方で測定して一致度を確認すれば正確性が評価できる。
妥当性 測ろうとしている概念を観察データが適切に反映している程度
・観察法におkeる妥当性の代表例が社会的妥当性
・社会的妥当性の評価には質問紙法によるチェックが用いられる
グラフ化
・観察データはグラフ化することでデータの時系列的な変化を視覚的に示すことが可能となる。
・時系列的な変化に加えて、心理学的な介入の実施前後を比較することも可能となる。
ABABデザイン
多層ベースラインデザイン
[PDF] 一事例実験のメタ分析
児童の忘れ物を減らすことを目的とした心理学的支援を実施したとする。第 1 週~第 3 週をベースライン期とし,第 4 週~第 6 週を介入期とした。各週あたりの忘れ物回数は下記の通りであった。Tau-U を用いて下記のデータを分析した場合に,得られる結論として正しいものを次の①~④の中から一つ選べ。
※分析時には“correct baseline”にチェックを入れること
① 忘れ物の回数は,ベースライン期から介入期にかけて有意に減っている 正解です。
② 忘れ物の回数は,ベースライン期から介入期にかけて有意に増えている
③ 忘れ物の回数は,ベースライン期と介入期の間で有意な差はない
④ Tau-U を用いて分析をするにはデータが足りない
フィードバック
正解は①です。
【解説/コメント】
Tau-U を用いて分析をすると,TAU の値は「-1」と負の値になっていることから,忘れ物の回数はベースライン期から介入期にかけて減っていることがわかります。加えて,“P Value”を見ると「0.0495」となっており,「5%=0.05」よりも小さくなっています。このことから,ベースライン期から介入期にかけての忘れ物回数の減少は,統計的に意味のある差(=有意な差)があると判断できます。