第2回 視覚の錯覚 見ることは考えること

第2回 視覚の錯覚 見ることは考えること

人の眼はカメラとほぼ同じ仕組みを持っているが、人はカメラのように世界に忠実に正確な像を写し取るわけではな

 

い。ヘルムホルツが、知覚は「推論」することだと指摘したように、私たちの知覚体験は、推論に似た高度な認知情報処理の産物なのである。特に、視知覚における奥行き知覚や恒常現象は、この知覚の解釈的性格をよく表している。

【キーワード】
知覚的推論、不良設定問題、奥行き知覚、恒常現象


1.人間の眼はどのように世界を知覚するか

(1)人の眼と機械の眼

カメラ・アナロジー

カメラでは、レンズを通して逆さに映し出される。これと人間の眼が同じ仕組みであるのならば、網膜には逆さに映し出されているはずである。

逆さに映し出されている網膜ある情報は、どこで逆さで無くなるのか。

少なくとも、私は逆さに世界を見ていないと思っている。これは、どこで作り出されているのだろうか

(2)人は眼だけで見ているわけではない。

知覚的推論 ホルム・ヘルツ

ヘルムホルツの“無意識的推論”説への接近

ヘルムホルツの無意識的推論には2つの主張が含まれる

1. 知覚は経験の直接的結果である.したがって,その過程は外的に現れることはない=無意識

2. 知覚は推察・論法(reasoning)である=推論

 

推論の間接性

推論過程についてのヘルムホルツとロックの相違点

ヘルムホルツ:大前提→小前提→結論へと一方向的に進行する=無意識過程

ロック:仮の結論に近刺激モード(proximal mode)からの支持や照合を必要とする=意識的過程

 

大前提の構築に際しての“過去経験”の位置づけの違い

ヘルムホルツ:大前提の中身は過去経験により作り上げられる

ロック:過去経験だけでは量的法則性は得られない

知覚
外界を単に再現することではなく、感覚情報パターンから「無意識的な」推論を行った結果であるとした。

視覚世界は、眼から入ってくる視覚情報(網膜像)だけでは決まらない。

(3)知覚とは、「賭け」かもしれない。

等化刺激布置群 さまざまな形の対象物であっても、角度によって網膜上では同じ形になる。

刺激布置  Reizkonstellation[G]; stimulus constellation(configuration)[E]  刺激の時間空間的配置をいう。したがって,刺激の個々の性質を越えて知覚現象を規定する基本的要因となる。ゲシュタルト心理学実験現象学的研究が示したように,ある布置が含む刺激の物理的性質が異なっても同一の効果をもたらす布置がある一方,刺激の物理的性質が同一でも異なる効果をもたらす布置がある。

不良設定問題 客観的に唯一の正解が定まらない。

視覚は、不良設定問題から、一つの解を選択的に導き出し、他の解釈を無視している。

(4)その他の知覚理論

生態学的視覚理論 ジェームズ・ギブソン – Wikipedia 視覚を「脳と眼」の問題として捉えるのではなく,環境の中を動き回る,頭に付いている眼が,環境の中における対象を,「いかに見るか」という,視覚への生態学的アプローチの書.現代知覚心理学のパイオニア,ギブソンによる,古典光学に代わる生態光学の提唱.

【生態学的視覚論】ヒトは何を見ているのか?アフォーダンス理論による知覚の仕組み | ミームは疑似科学の夢を見るか (akirako.com)

視覚の計算理論  デビッド・マー (1945-1980)は、視覚研究において独創的な理論体糸を残し、一つの総合的アブローチを提唱した[1][2]。ここでは、一般の情報処理システムを理解するための3つのレベル、視覚情報処理を理解するための3つのレベルについて紹介した後、視覚情報処理の3段階について具体的に説明する。Marrの視覚研究の枠組みは当時としてはきわめて独創的なものであった。現在でも脳研究は3つのレベルでさまざまな検討がなされている[3]

マーの視覚計算理論 – 脳科学辞典 (neuroinf.jp)

(5)杉原による驚異の立体錯視

変身立体・トポロジー立体

不良設定問題

 

3.視知覚情報の変容

(1)奥行き知覚の手がかり

奥行きを感じるための手がかりには、眼球を動かす時の水晶体調節、両眼の視覚像のズレなどが使われます。 両眼は片方ずつでそれぞれ微妙に異なる情報を捉えていますが、情報のズレ具合などを総合的に判断して、人は奥行きを把握しています。 こうしたことは普段意識されることはなく、眼や脳がいつの間にか情報処理をしてくれているのです。

両眼視情報 両眼視差、輻輳

単眼視情報 運動視差

(2)絵画的手がかり

線遠近法

(3)知覚の恒常現象

恒常現象  暗い所でも白紙白く見えたり離れた所に立つ人物があまり小さく見えなかったりするなど、観察条件変わっても、物の性質変わらないように知覚される現象

(4)恒常性のいろいろ

・位置方向

・明るさ

・色

・形

3.奥行き知覚がもたらす錯覚

(1)奥行き知覚と錯覚

大きさの恒常性 奥行き知覚と線遠近法

ポンゾ錯視

(2)月の錯視

地平の月は、天頂の月より1.3~1.5倍大きく見える。

現在諸説あり、完全には解明されていない。

地平線近くの満月は、なぜ大きく見える? – 生物史から、自然の摂理を読み解く (seibutsushi.net)

低い月はなぜ大きい | 月の錯視とは簡単に | 地平の月と真上の月は、なぜ大きさが違って見えるのか? | Star Walk

 

 

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