第2回 基本的な病変の発生機序
各器官系に発生する様々な疾病を理解する上で基礎となる基本的な病変とその機序について学ぶ。
【キーワード】
循環障害、炎症、腫瘍、代謝異常、先天異常、老年症候群
第2回 基本的な病変の発生機序
1.基本的な病変
2.循環障害
(1)充血とうっ血
(2)出血と出血傾向
(3)血栓症と寒栓症、梗塞
a)血栓の原因
b)梗塞
(4)傍側循環
(5)浮腫
(6)ショック
3.炎症
(1)急性炎症
(2)全身性炎症反応症候群(SIRS)と代償性抗炎症反応症候群(CARS)
(3)慢性炎症
4.代謝異常
(1)資質異常症と脂肪肝
(2)糖尿病
(3)低タンパク血症・低アルブミン血症
(4)アミロイドーシス
(5)痛風
5.先天異常
(1)単一遺伝子疾患
(2)染色体異常
(3)単発奇形
6.老化と老年症候群
7.腫瘍
(1)腫瘍とは
(2)腫瘍の形態
(3)腫瘍の増殖
(4)腫瘍の及ぼす影響
1.基本的な病変
基本的な病変の概要
2.循環障害
循環障害は、体液(主に血液)の循環の異常、その結果生じる病変である。
(1)充血とうっ血
充血・・・・・組織に流入する動脈血が増加した状態
うっ血・・・組織からの静脈の還流が障害された結果、組織に静脈血がうっ滞した状態
(2)出血と出血傾向
出血(しゅっけつ、hemorrhage)とは、血液が血管外に流出することである。
出血の分類
発生機序・・・・・破綻性出血 血管の損傷による出血
漏出性出血 血管の損傷を伴わない出血
血管・・・・・静脈性 動脈からの出血
静脈性 静脈からの出血
毛細血管性 毛細血管からの出血
出血部位 外出血 体外への出血
内出血 体の内部でおこる出血
出血の性状 点状出血・紫斑 皮下の小出血、出血傾向と関係。紫斑は点状出血よりも大きな出血班
血腫 血液の塊が形成されたもの
さまざまな出血の定義
吐血 消化間(十二指腸よりも上部)からの出血が口から吐出されたもの
下血 消化管からの出血で便に血液が混じる
喀血(かっけつ) 肺や気管支からの出血が口から喀出されたもの
心タンボナーデ 心のう腔への出血
血胸 胸腔への血液の貯留
血尿 尿路の出血で尿に血液が混入した状態
(3)血栓症と寒栓(そくせん)症、梗塞
過剰な凝固を抑制したり、凝固した血液を除去するしくみ
・抗血小板・・・・・血小板の過剰な凝集を抑える仕組み。内皮細胞の産生するプロスタサイクリンや一酸化窒素
・抗凝固系・・・・・凝固因子の過剰な活性化を抑える仕組み。アンチトロンビンや内皮細胞のトロンボモジュリン
・繊維素溶解系(線溶系)・・・・・凝固系の最終産物のフィブリンの融解する仕組み。内皮細胞の産生するプラスミノゲンアクチベータによって活性化したプラスミン
a)血栓の原因
DIC(Disseminated Intravascular Coagulation):播種性血管内凝固症候群:血が著しく固まりやすくなることによる臓器の障害や血のかたまり(血栓けっせん)を溶かす過剰な生理的反応による著しい出血傾向をきたす「播種性血管内凝固はしゅせいけっかんないぎょうこ」は、がん、感染症などの悪化により引き起こされる場合があります。
b)梗塞
(4)傍側循環
(5)浮腫
(6)ショック
3.炎症
ケミカルメディエータの働きと代表的なケミカルメディエータ
血管の拡張・血管透過性の亢進・・・ヒスタミン・セロトニン・プロスタグランジン
炎症細胞の活性化、白血球の遊走・・・補体成分(C5a)、ロイコトリエン、IL-1,IL-8,TNFなどの炎症サイトカイン
組織の修復・・・FGFなどの成長因子
※亢進(こうしん)とは、病勢などが高い度合いまで進むことである。
※白血球遊走 leucocytoplania はっけっきゅうゆうそう
(1)急性炎症
(2)全身性炎症反応症候群(SIRS)と代償性抗炎症反応症候群(CARS)
(3)慢性炎症
慢性炎症が起こるとき
・急性炎症で炎症の原因を排除できない。
・生体防御能が低下しているため治癒が遷延(せんえん)する
・急性炎症で生じた免疫応答がさらに次の炎症をひきおこす
・炎症をおこす刺激が徐々に細胞・組織を傷害する。
肉芽組織(にくげそしき)・・・・・「肉芽組織」とは、軟部組織の損傷が治癒する過程で発生する増殖力の高い結合組織で、毛細血管と線維芽細胞(せんいがさいぼう、英: fibroblast)からできている。軟部組織が損傷を受けると、マクロファージが創傷面の死んだ細胞を貪食する。その際に放出される「bFGF」(線維芽細胞増殖因子)によって線維芽細胞が増殖し、血管新生が促進され、損傷部分を埋めていく。肉芽組織内は新生血管が多いことから、赤い鮮やかな色をしているが、治癒が遅れているものは白っぽく、「不良肉芽」や「病的肉芽」と呼ばれる。骨折においては、骨膜や周囲の軟部組織に出血が起こり、その血腫部分に肉芽組織が形成される。肉芽組織の部分に骨芽細胞や軟骨細胞の分裂が始まり、繊維性仮骨及び軟骨性仮骨が形成されていく。
結核結節【けっかくけっせつ】・・・・・結核菌の感染により形成される結節。黄白〜灰白色で,比較的かたく,普通アワ粒大から米粒大。構造は中心に結核菌,フィブリン,脂肪などを含む乾酪巣ができ,それを囲んで類上皮細胞(普通の上皮細胞に似るが,組織球または血液の単球由来とされる)とこれに混じて,ラングハンス細胞があり,この部に格子繊維が網目状にふえている。最外層にリンパ球,繊維芽細胞がある。結核結節は古くなると石灰が沈着したり,繊維がふえ瘢痕(はんこん)化して治癒する。また乾酪巣が崩壊して空洞ができたり,膿瘍(のうよう)となったりする。集合または膨張により大結節となることもある。
→関連項目結核|粟粒結核
4.代謝異常
代謝異常・・・・・異化(分解、排泄)と同化(合成、摂取)のバランスが崩れるとこれらの物質の過剰や不足がが起こり、その結果としてさまざまな症状をきたした状態
(1)資質異常症と脂肪肝
脂肪肝・・・・肝臓に中性脂肪がたまった状態。メタボリックシンドロームに合併しやすく、放置すると肝炎などを引き起こす。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余分なエネルギーはグリコーゲンや中性脂肪につくり替えられ、体にたくわえられます。中性脂肪は腸間膜(内臓脂肪)や皮下脂肪組織にたくわえられるほか、肝臓にも貯蔵され、肝細胞の30%以上に中性脂肪がたまると脂肪肝と診断されます。
肝臓にたまる脂肪そのものは内臓脂肪から区別されますが、脂肪肝の多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を合併しており、脂質異常(高中性脂肪・高LDLコレステロール・低HDLコレステロール)を起こしやすく、動脈硬化の重要な原因になります。糖尿病を合併する人も少なくありません。
脂肪肝の初期にはほとんど症状はありませんが、やがて肝炎を起こし肝硬変に進行することもあります。
原因のほとんどは過食と多量飲酒ですが、糖尿病・ステロイド剤の服用・栄養障害による代謝異常なども原因になります。特にアルコールではなく過食が原因で脂肪肝から肝炎・肝硬変となる病気はNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)と呼ばれ、注目されています。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH: nonalcoholic steatohepatitis)は、過食・運動不足・肥満(特に内臓脂肪型)・糖尿病・脂質異常症などに合併した脂肪肝を背景として発症する肝炎です。飲酒しない人であれば非アルコール性ということは明白ですが、多くの脂肪肝は飲酒と飲酒以外の要因の両者が関しており、アルコール性肝炎や非アルコール性脂肪性肝炎にもオーバーラップする部分があるはずです。
アルコールが原因の主であれば、通常は肝酵素のAST/ALD(GOT/GPT)比が1以上となります。脂肪肝が診断されると、従来は主に動脈硬化による生活習慣病の予防の観点から生活指導や肥満・糖尿病・脂質異常症の治療が行われてきました。しかしNASHは単なる脂肪肝ではなく、肝硬変へと進行したり肝臓癌になるケースがあるため、肝臓自体の予防の観点からも治療の重要性が強調されています。
NASHは比較的新しい疾患概念であり、日本には経過を追った大規模な研究がなく、どの程度の頻度で発症し、どの程度の人が肝硬変や肝臓癌にまで進行するのが明らかになるまでには、今後の多くの研究を待たなければなりません。しかし肥満人口の増加とともに今後NASHの増加が予想されています。
(2)糖尿病
(3)低タンパク血症・低アルブミン血症
(4)アミロイドーシス
(5)痛風
5.先天異常
(1)単一遺伝子疾患
(2)染色体異常
(3)単発奇形
6.老化と老年症候群
7.腫瘍
(1)腫瘍とは
腫瘍とは、体の中にできた細胞のかたまりのことです。 正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて、増えたり、増えることをやめたりします。 しかし、何らかの原因でできた異常な細胞が、体の中に細胞のかたまりを作ることがあります。 これが腫瘍です。
(2)腫瘍の形態
腫瘍の塊(小さいものを結節(結節)nodule 丘疹より大型の,皮膚の盛り上がった病変で,とくに大型のものを腫瘤(しゅりゅう:tumor)ともいう。)
(3)腫瘍の増殖
(4)腫瘍の及ぼす影響
基本的な病変の概要
疾病の成り立ちの枠組みを理解している状態
循環障害(くも膜下出血、心筋梗塞、肺動脈寒栓症、エンドトキシンショック)
炎症(小葉性肺炎、C型肺炎、結核)
腫瘍(白血病、乳がん、胃がん)
代謝異常(糖尿病、脂質異常症、痛風)
先天異常(フェニルケトン尿症、ダウン症候群、二分脊髄)
老年病(白内障、変形性関節症、前立腺肥大)