第15回 認知と感情 -悲しいから泣くのか-
知覚・認知心理学(’19)
Psychology of Perception and Cognition (’19)
主任講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)
【講義概要】
人間は「考える」能力を持っています。考える能力には、大切な事柄を記憶する、問題を解く、どちらが良いか判断する、旅行の計画を立てるなど、意識的に考える能力のほか、見る、聞く、驚くなど、無意識的に考える能力があります。この「考えること」が、広い意味での、認知機能なのです。知覚・認知心理学は、このような、「考えること」の科学です。この講義では、認知の低次過程といえる感覚・知覚等の無意識的な機能から、問題解決や判断・意思決定などのより高次で意識的な認知機能のしくみを解説します。
【授業の目標】
知覚・認知心理学は、実証科学の一員です。実証科学とは、実験を通して得られた事実(エビデンス)に基づいて、仮説やモデルを検証する科学です。この授業では、単に、人間の認知に関する現象や事実を体験し理解するだけでなく、それらの背後に潜む人間の認知のメカニズムを、いかに実証するか、その方法論も併せて理解することが、目標となります。
【履修上の留意点】
履修にあたって、予備知識は特に必要としませんが、高校の生物学の知識があると、理解がより深まると思います。ただし、実証科学の一員として、論理的な思考は、不可欠です。レポートを書くうえでも、論理的なストーリー展開が、求められます。
第15回 認知と感情
-悲しいから泣くのか-
感情は、「考えること」と密接に関係している。今回は、人の認知機能・認知行動に、感情(情動)がいかに関わるのかを以下の3点に絞って説明する。①感情の基本的特性と理論、②感情が認知(記憶や判断・意思決定など)に及ぼす影響、③認知が感情に及ぼす影響。
【キーワード】
情動、気分、基本感情モデル、軸モデル、ジェームズ=ランゲ説、キャノン=バード説、気分一致効果、扁桃体、前頭前野