第15回 統計的分析の注意点
第15回 統計的分析の注意点
本講義で解説した手法を復習しながら、適切な統計分析を行うための注意点について解説する。統計分析の過程が満たされないときにどのような問題が生じるのかを理解することを目的とする。
【キーワード】
確率モデルの仮定、独立同分布の仮定、等分散の仮定、球面性の仮定、統計的検定の誤用、p hacking、HARKing
15.1推測統計学に共通する仮定
仮定が満たされない場合にどのような対処法があるのか
15.1.1 確率モデルの仮定
確率モデルは、母数の信頼区間を求めたり、検定したりする場合に必要な仮定。
母集団分布の近似として正規分布を仮定するもの(母平均、母相関係数の推定)
15.1.2 無作為抽出標本の仮定
独立同分布の仮定
マルチレベル分析
15.2 個別の統計分析の仮定
推定対象や方法に依存した仮定
15.2.1 対応のない平均値差の推定における仮定
2つの群の母集団が等しいという仮定
Welchの検定
15.2.2 対応のある分散分析の仮定
球面性の仮定
自由度の補正
15.3 統計的検定の誤用
p hacking : 本来の統計的検定のルールを逸脱し、不当なp値を報告することをいう
15.3.1 標本サイズを、分析結果を見てから増やす
統計的検定では、事前に確率モデルと帰無仮説を設定しておく必要があります。
帰無仮説を決める段階で、標本サイズもあらかじめ決めておく必要があります。
なぜなら、標本サイズが定まらないと検定前に帰無仮説が定まらないからです。
15.3.2 帰無仮説を、結果を見てから変える
HARKing(Hypothesizing After the Results are Known) : 有意な検定結果を求めるがゆえに犯してしまいがちな、問題のある研究実践。
15.3.3 統計的検定の解釈について
統計的検定は、帰無仮説をデータによって棄却して、対立仮説が真であることを主張するための方法です。
検定の結果が有意であったからといって、帰無仮説が必ず棄却できているとは限りません。
15.4 統計学を正しく使うために
検定結果だけを報告することは望ましまはありません。効果量(Cohenのdや相関係数)の95%信頼区間をも合わせて報告するのが望ましい。