第15回 アセスメントから支援へ
心理的アセスメント(’20)
Psychological Assessment (’20)
主任講師名:森田 美弥子(中部大学教授)、永田 雅子(名古屋大学教授)
【講義概要】
心理的アセスメントとは何をすることなのか? 心理的支援実践においてアセスメントは必須の行為である。クライエントがどういう人であるのか、どのような問題を抱えているのか、といったことを把握しないことには支援の方針計画をたてようがない。では、具体的にどのような方法があるのか、そこで何に留意するとよいのか概説する。
【授業の目標】
本講義を通じて、心理支援における心理的アセスメントの基礎知識を得ることを目標とする。
第15回 アセスメントから支援へ
アセスメント結果はどのように活かされていくとよいだろうか? 何よりもクライエントに役立つアセスメントをするために、適応状況や問題となる行動や症状との関連を見ていく必要がある。ここではどのように結果を伝え、支援につなげていくか解説する。
【キーワード】
フィードバック、報告書(所見レポート)
フィードバックの意味
報告書(所見レポート)に何を書くか
何が伝わるとよいのか
心理的アセスメントをクライエントにフィードバックする際の留意点について,次の①~④の文章のうちから,適切なものを一つ選べ。
① アセスメント結果は必ず文書で伝えなければいけない。
② わかったことはすべて伝えなければいけない。
③ 改善すべき問題点を中心に伝えなければいけない。
④ 専門用語よりも日常的な言葉で伝えなければいけない。
フィードバック
正解は④です。
【解説/コメント】
①クライエントの自己理解を促進するためには,文書(所見レポート)があってもなくても,口頭で説明して,意見や感想を聴きながら進めるとよいです。
②その時点で重要と考えられるポイントをいくつか絞って伝えることが効果的です。すべてを聞かされても理解が追い付かない場合もありますし,問題意識に合わせて伝えることが意味をもちます。
③良いところ,健康さや適応力を必ず含めるとよいと言われています。問題点や課題も伝えますが,肯定的な側面は,自信を取り戻し,支援に取り組むことへの動機づけを高めることにつながります。
④これが「適切なもの」です。心理学の専門用語は時として,一般に知られていなかったり,違った意味で誤解されて伝わったりすることもあります。相手に合わせて,かみくだいて説明することが重要です。
問題 10
アセスメント結果を所見レポート(報告)として書く際に気を付けることとして,次の①~④の文章のうちから,誤っているものを一つ選べ。
① クライエント向けの報告と,関係者向け(たとえば職場や学校)の報告は,書き方を変える工夫をする。
② スタッフや関係者からの依頼目的や,所見の使用目的を予め十分把握しておく必要がある。
③ 身近な家族には,心理的影響を考慮して,所見レポートを手渡さない方がよい。
④ クライエントが自覚している内容も含めてレポートを書くとよい。
フィードバック
正解は③です。
【解説/コメント】
①報告書でも口頭でも,相手に合わせた,わかりやすい言葉を使うというのが原則です。内容のポイントは誰に対しても共通していますが,理解しやすいようにという工夫は必要です。
②結果が一人歩きしないように,ということがよく言われます。知的レベルや診断名などを書く際には特に,誤解のないように気をつける必要がありますし,クライエントにとって不当な不利益が生じないように配慮します。
③これが「誤っているもの」です。クライエント自身や家族がアセスメント結果をどう受けとめるか,予測して配慮することは必要ですし,直接説明をして話し合うことが望まれますが,レポートを見ながら説明を行うことでわかりやすいこともあり,渡さない方がよいとは言えません。
④クライエントが既に自覚している自分の特徴と関連させながらレポートが書かれていることは,わかりやすく伝わることになります。自信にもつながると思われますので,そこも含めて書いてください。