第14回 福祉場面その他のアセスメント(2)
心理的アセスメント(’20)
Psychological Assessment (’20)
主任講師名:森田 美弥子(中部大学教授)、永田 雅子(名古屋大学教授)
【講義概要】
心理的アセスメントとは何をすることなのか? 心理的支援実践においてアセスメントは必須の行為である。クライエントがどういう人であるのか、どのような問題を抱えているのか、といったことを把握しないことには支援の方針計画をたてようがない。では、具体的にどのような方法があるのか、そこで何に留意するとよいのか概説する。
【授業の目標】
本講義を通じて、心理支援における心理的アセスメントの基礎知識を得ることを目標とする。
第14回 福祉場面その他のアセスメント(2)
虐待対応および高齢者支援におけるアセスメントを取り上げるとともに、司法領域でのアセスメントについても解説する。特に現実生活での適応の見立てという視点から説明を加える。
【キーワード】
高齢者支援、虐待、包括的アセスメント、現実生活での適応
私たちを取り巻く社会状況の変化
高齢者支援
(1) 認知症のアセスメント
(2) 生活の中でのアセスメント
虐待など緊急対応が必要な場合のアセスメント
(1) 虐待とは
(2) 虐待の包括的アセスメント
(3) 施設の中でのアセスメント
(4) 児童相談所における心理的アセスメント
司法領域でのアセスメント
(1) 司法面接
(2) 家庭裁判所におけるアセスメント
(3) 鑑別所等におけるアセスメント
様々な領域におけるアセスメント
次の①~④の文章のうちから,正しいものを一つ選べ。
① 認知症のアセスメントを行う上では,生物―社会―心理学的な側面からアセスメントを考えていく必要があり,生物学的アセスメントは,認知症の原因疾患とその症状のことを指す。
② 高齢者の支援を考えるうえでは,生活の中での支援を考えていく必要がある。
③ 心理の専門家としての高齢者支援に関する活動や役割は,どこの機関に所属していても同じである。
④ 認知症は加齢によるものであり,生活機能が衰えてくることを示すものである。
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正解は②です。
【解説/コメント】
①認知症のアセスメントでは,生物‐社会‐心理的の側面からアセスメントをしていくことが求められますが,生物学的なアセスメントには,認知症のことだけではなく,身体的合併症なども含まれます。
②これが「正しいもの」です。印刷教材の第 14 章を参照して,理解を深めてください。
③心理職が所属する機関が,病院なのか,行政機関なのか,施設なのかによって求められる役割は異なるため,チームの中での位置づけや役割を十分意識をしておく必要があります。
④加齢による物忘れと認知症は別のものであり,認知症は脳の機能障害となります。印刷教材第 8 章の神経心理学的アセスメントの章にも認知症に取り上げていますので参照して,理解を深めてください。
次の①~④の文章のうちから,正しいものを一つ選べ。
① 司法面接とは,法的な判断のために使用することができる精度の高い情報を心理的負担に配慮しつつ得るための面接法とされており,心理的負担を極力少ない形でするために録音・録画はしない。
② 家庭裁判所では,裁判官の決定に基づいて,家庭裁判所調査官(家裁調査官)が心理的アセスメントを含めた調査を,少年審判に限って行っている。
③ 産業領域では,ストレスチェックの実施者として,公認心理師が追加され,資格を持っていれば実施をすることができる。
④ 虐待が疑われる家庭への対応を行う場合のアセスメントでは,近隣や学校,保育園等からの情報収集は本人の同意がなくても実施できる。
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正解は④です。
【解説/コメント】
①司法面接では,一度だけ面接を行い,記録を正確にするために,録画・録音をすることが特色の一つです。印刷教材第 14 章を参照して,理解を深めてください。
②家庭裁判所調査官(家裁調査官)における調査は,少年事件だけではなく,家事事件も対象となり,離婚をめぐる親権をめぐる訴訟や,離婚成立後の面会交流に関する調査も行われます。
③労働安全衛生規則の改正によって,公認心理師が実施者として追加されましたが,厚生労働大臣が定める研修を修了した公認心理師と定められており,資格を持っているだけでは実施できません。
④これが「正しいもの」です。虐待については,当事者からの情報収集だけではなく,子どもを取り巻く関係機関からの情報も収集することでより客観的で包括的なアセスメントが可能となります。虐待については秘密保護の例外として認められています。