第14回 人格と心理療法

感情・人格心理学(’21)

Psychology of Emotion and Personality (’21)

主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)、佐々木 玲仁(九州大学大学院准教授)

【講義概要】
本講義では感情心理学および人格心理学について論ずる。ここで取り扱う感情とは「そのときどきの気持ち」のことであり、人格とは「それぞれの人がら」のことである。これらのことについて、どのような概念なのか、あるいはどのように測定するのか、そしてどのように発達していくのかなどについてそれぞれの観点から述べる。また、感情については、その種類や表し方、記憶との関連など、人格については、それをどのように記述するのか、環境との関連、心理療法との関連など、様々なテーマで論じていく。また、感情と人格の繋がりや日常生活との関連についても取り扱う。

【授業の目標】
感情および人格という日常でも出会う概念について、心理学上の様々な論点から考察できるようになること、また、学術的な理解を得るだけでなく、その理解が日常生活とどのような繋がりがあるのかかについての知見を得ることを目標とする。

第14回 人格と心理療法

人格を理論として論じるときにはその共通性や分類を対象として論じるが、心理療法ではその個別性について焦点を当てることが多い。その心理療法の観点から改めて人格の概念を見直し、論じていく。

【キーワード】
心理療法、個別性、変化


問題 9 心理療法の中で生じることとして,次の①~④の中から適切でないものを一つ選びなさい。

① 心理療法は一人一人の個別性が刻一刻時間を追って変化していくという前提で成り立つものである。
② 「全く同じ人格の 2 人の人間」は,日常レベルとしても想定し難い。
③ 心理療法では,心理臨床家(カウンセラー)が来談者(クライエント)の悩みや苦しみを聴き,それに対して適切な答えを提供することが基本的な形式となっている。 正解です。
④ 精神医学の診断基準はいつでもどこでも成り立つ普遍的なものではない。

フィードバック 正解は③です。

【解説/コメント】

①②④適切な記述である。

③心理療法では心理臨床家は来談者の悩みや苦しみに始めからある答えを与えるのではなく,本人がその答えを見つけるのに伴走するようについていき,またそのようなことができるように状況を整える役割を果たすというのが基本的な形式である。


問題 10 心理療法における人格概念について,次の①~④の中から適切でないものを一つ選びなさい。

① 心理療法では必ずまず始めに来談者の人格がどの類型に当てはまるのかを特定し,その人格に適切なように対応のしかたを選択していくものである。 正解です。
② 心理療法の中では,クライエントの変化が治療者に感じられたとしても,同じ変化がクライエント自身に感じられるとは限らない。
③ 心理療法の中での人格概念は,それが絶対的なものではないと了解しているならば,クライエントを理解するための有効な道具として用いることができる。
④ 人格が変容するという前提も,変容しないという前提も,心理療法の中には容易には持ち込むことはできない。

フィードバック 正解は①です。

【解説/コメント】

①心理療法の前にアセスメントとして人格についての情報を得ることはあるが,必ずそのように進めるとは限らない。また,類型を特定してから心理療法を行うことは必須ではない。

②③④適切な記述である。

Pocket
LINEで送る