第14回 生体の防御機構

人体の構造と機能(’22)-人体の構造と機能及び疾病A-

Structure and Function of the Human Body (’22)

主任講師名:坂井 建雄(順天堂大学特任教授)、岡田 隆夫(順天堂大学特任教授)

【講義概要】
私たちの健康は正常な構造が正常に機能して初めて可能となる。看護師などの医療職に就くためには私たちの身体の正常な構造を知り、それがどのように機能しているかを理解しておく必要がある。私たちの身体の中には胃や腸、心臓、筋肉等々さまざまな器官・組織があるが、これらは互いに独立して働いているわけではなく、筋運動をすると心拍が速くなることからもわかるように、相互に密接に関連しながら機能している。このような機能の調節をも含めて、トータルとしての人体の構造と機能を理解することを目標とする。

【授業の目標】
人体の構造をマクロ・ミクロの両面から系統的に学ぶ。
人体の各器官系の機能を調節系も含めて系統的に学ぶ。

【履修上の留意点】
限られた時間内で全てを講義することは不可能であり、教科書による自己学習が必須である。予習をしてあることを前提として授業を展開する。疑問の点、わからない点は積極的に質問するよう、心がけてほしい。
「動物の科学」「生命分子と細胞の科学」(いずれも学部開設科目)を学んでおくと理解しやすい。また、発展・応用科目としての「健康長寿のためのスポートロジー」の受講もお薦めする。
※この科目の通信指導問題の解答および提出はWebのみとなります。通信指導問題冊子は送付されませんのでご注意ください。

第14回 生体の防御機構

生体の防御機能と体温調節、特に免疫系を中心に解説する。

【キーワード】
非特異的防御機構、リンパ球、液性免疫、細胞性免疫

執筆担当講師名:岡田 隆夫(順天堂大学特任教授)
放送担当講師名:岡田 隆夫(順天堂大学特任教授)


1.体温調節
2.非特異的防御機構
3.特異的防御機構(獲得免疫)


1.体温調節
(1)熱の出納
1)熱の産生 運動、ふるえ、食事、ホルモンの作用、褐色脂肪組織
2)熱の放散 皮膚血流、発汗
3)行動性体温調節
(2)体温調節中枢 核心温、皮膚温、腋窩温
(3)発熱 セットポイント

2.非特異的防御機構
(1)皮膚と粘膜による防御
(2)白血球による防御(自然免疫)
白血球は、顆粒球、リンパ球、単球の3系統に分かれる。その顆粒球の一種である好中球が主役であるが、単球が組織中に潜り込んだマクロファージやリンパ球の一種であるNK細胞も重要な役割を演じる。

マクロファージは、直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っています。 この細胞は、体内に侵入した細菌などの異物を食べる能力に優れており、食べた細菌を消化・殺菌することで、細菌感染を防いでいます。

NK(natural killer)細胞は、がん細胞を攻撃する兵隊役である、リンパ球の一種です。直訳すると『生まれながらの殺し屋』という名前の通り、がん細胞やウイルスに感染した細胞などの異常な細胞を見つけ次第、攻撃します。リンパ球の10~30%を占め、自分以外の細胞を殺してしまうほどの高い攻撃力を持つ細胞です。

化学走性 遊走能 貪食能

3.特異的防御機構(獲得免疫)
細胞性免疫と液性免疫 | MBLライフサイエンス
(1)液性免疫
液性免疫 – Wikipedia
(2)細胞性免疫
細胞性免疫 – Wikipedia
(3)予防接種
予防接種とは? | 公益社団法人 東京都医師会
メモリーB細胞 メモリーB細胞が再感染から速やかに体を守る仕組みを解明


問題 15 熱産生を増加させるものを①~⑤のうちから一つ選べ。

① 発 汗
② ふるえ 正解です。
③ 皮膚血管の拡張
④ 皮膚血管の収縮
⑤ 甲状腺機能低下

フィードバック正解は②です。

【解説/コメント】

①発汗により気化熱が奪われて熱放散が増加します。
②ふるえは細かい筋収縮で、熱産生が増加します。ふるえでなくても筋運動によって熱産生が増加することは体験していると思います(運動をすると体が温まる)。また食事をすると吸収された栄養素の分解、合成、解毒のために肝臓が働きますので熱産生が増加します。食事をすると温まるのはこのせいです。これを特異動的作用と言います。
③皮膚血管の拡張は熱放散を増加させます。
④皮膚血管の収縮は熱放散の減少を引き起こします。
⑤甲状腺機能低下では代謝が低下しますので、熱産生が減少します。


問題 16 抗体の主役であり、胎盤を通過する免疫グロブリン(Ig)を①~⑤のうちから一つ選べ。

① Ig A
② Ig E
③ Ig G 正解です。
④ Ig M
⑤ Ig D

フィードバック正解は③です。

【解説/コメント】

①母乳や気道分泌物に含まれ、管腔での防御に働きます。
②アレルギーに際し、肥満細胞に結合してヒスタミンを放出させます。
③妊娠中に母体が持つ Ig G は胎盤を通過して胎児に移行するので、新生児は感染症に対して母体と同等の高い抵抗力を持っています。
④ABO式血液型の抗体であり、胎盤を通過しません。
⑤ごく微量にある免疫グロブリンです。

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