第14回 犯罪被害者と贖罪
司法・犯罪心理学(’20)
Forensic and Criminal Psychology (’20)
主任講師名:廣井 亮一(立命館大学教授)
【講義概要】
公認心理師法における「司法・犯罪分野」の要点を踏まえて、少年事件、刑事事件、家庭紛争事件の3部で構成する。
第1部は、司法における犯罪心理学、非行臨床をもとに少年事件を取り上げる(第1回~第4回)。第5回では犯罪者・非行少年の更生に関わる専門家の活動を紹介する。
第2部は、児童虐待、高齢者虐待、離婚と面会交流などの家庭紛争事件、さらに体罰問題など学校に関わる問題への対応を解説する(第6回~第9回)。
第3部は、攻撃性をもとに犯罪の4類型を理解したうえで、ストーカー犯罪、凶悪事件の精神鑑定例、犯罪被害者への贖罪を取り上げる。また、司法における心理臨床家の活動も紹介する。最後に現在の司法の潮流である司法臨床、治療的司法、加害者臨床をもとに、司法・犯罪心理学の展望と課題を解説する(第10回~第15回)。
【授業の目標】
公認心理師法における「司法・犯罪分野」の要点である、少年事件、刑事事件、家庭紛争事件の3部門を学ぶ。そのうえで司法の枠組みを踏まえた、少年への非行臨床、成人への加害者臨床、家庭事件への家族臨床の展開を理解することを目的とする。
【履修上の留意点】
新聞等で少年や成人の事件、家庭での虐待事件等の報道を読み、現代の少年非行、成人犯罪、家庭事件の特徴を考えておく。さらに、講義で関心をもったテーマを各自でさらに深く学ぶこと。
第14回 犯罪被害者と贖罪
・犯罪被害者に対する加害者の贖罪とは何かについて解説する。
・加害者が贖罪を成し遂げるためのプロセスを提示する。
・犯罪被害者の苦しみを理解する。
【キーワード】
贖罪、犯罪被害者、ライフストーリー・インタビュー
執筆担当講師名:廣井 亮一
2000年高速バスジャック事件
西鉄バスジャック事件 – Wikipedia
◆西鉄バス乗っ取り事件 2000年5月3日、刃物を持った佐賀市の無職男性=当時(17)=が、乗客乗員22人乗りの佐賀発福岡行き西鉄高速バスを乗っ取った。バスは広島県の山陽自動車道小谷サービスエリアに停車。4日未明、警官隊が突入し、男性を現行犯逮捕した。刺された乗客3人のうち1人が死亡し、2人が重傷。ほかに2人が逃げる際にけがをした。男性は強盗殺人容疑などで再逮捕され、同年9月、佐賀家裁は「解離性障害の治療が終わるまでは医療的な矯正施設への収容が相当」と医療少年院送致を決定。06年春、同院を本退院した。
「心理学的抵抗理論によれば、人は個人的な自由を侵害されたと感じると、「問題」行動に心惹かれ、その行動を行う頻度が上がる」(William.R.M.,Stephen,r.2002)
光市母子殺害事件
光市母子殺害事件 – Wikipedia
連続幼女誘拐殺人事件
東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件 – Wikipedia
ライフストーリー・インタビューのために必要な 3 つの要因に,該当しないものを次の①~④の記述から一つ選びなさい。
① 心理的な深さ:感情や気持ちの揺れ動きなど複雑な心理状態の一端を把握すること。
② 時間的な経緯:個々の人たちがどのような経験を経て,現在の考えを抱くに至っているかを知ること。
③ 関係性:その人を取り巻く家族関係,友人関係などで,どのような関わり合いをしてきたのかということ。
④ 客観的事実:個人の語りには主観が混じるので,「資料」や「事物」など客観的事実だけを重視すること。
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正解は④です。
【解説/コメント】
ライフストーリー・インタビューのためには,次の 3 つの要因が必要であるとされています。
1 つ,心理的な深さ:感情や気持ちの揺れ動きなど複雑な心理状態の一端を把握することです。
2 つ,時間的な経緯:個々の人たちがどのような経験を経て,現在の考えを抱くに至っているかを知ることです。
3 つ,関係性:その人を取り巻く家族関係,友人関係などで,どのような関わり合いをしてきたのかということです。
その 3 つの要因によって,「資料」や「事物」からだけでなく,その人の語りによる「社会的現実」をとらえていきます。