第14回 ユングの個性化理論―自己を生きるということ

一回目 2023/12/21
二回目 2024/01/23

ユングは、個性化を人生の目的と考えた。個性化とは何か?ユング自身の個性化に関する記述をたどりながら、ユング派の分析家、心理療法家による理解を紹介しつつ、個性化過程において心理療法が果たす役割についてあきらかにする。

【キーワード】
個性化、自己、錬金術研究、転移、結合


1.個性化に向かうとき

ユング(Jung 1937)は、「通常、個性化の過程は、かなり決定的な経験と共に始まります。つまり人は最も分化した機能で失敗をするわけです。手におえない状況に出くわします」

ユング派の分析家 フォン・フランツ (1964)は、

「実際の個性化の過程 ー 自分の内的な中心(心の核)すなわち自己との意識による対話 ー

は、一般に人格が傷つけられ、それに伴う苦悩によってはじまる。」

マリー=ルイズ・フォン・フランツドイツ語Marie-Louise (Ida Margareta Freiherrin) von Franz1915年1月4日 ミュンヘン – 1998年2月17日)は、スイス人ユング派心理学者。父はオーストリア男爵

「人間がそのたましいの中心との接触を失う」「鍛錬された意識は、文明的な行為に必要なものであるが、それは心の中心からの力やメッセージを受け取る障害となりがちであるという著しい不利益をもたらす」

自分本来のエネルギーとつながれなくなり、厳しい人生を生き抜くエネルギーが湧いてこなくなり、無気力に陥る。

2.個性化の始まり

自我意識中心の在り方から脱却

ユングの論じた「影」、誰かの言動に不合理な苛立ちや嫌悪感を感じる時、その相手に認められた利己主義、怠惰、だらしなさ、目立ちたがり、保身、権力欲である。

第12回 ペルソナ形成と影の出現 – LIFE-SHIFT (lifeshift.site)

3.個性化を推進する情動的体験

影を引き受け、闇をくぐり抜けられながらも、新たな生きる力に触れる体験は、心の内なる「私ならざるもの」私とは異質であって、それがゆえに魅惑する存在によってもたらされるもの。それがアニマ/アニムスとの出会いである。

第13回 心の中の異性像アニマ/アニムスがもたらす心の発達過程 – LIFE-SHIFT (lifeshift.site)

ウォルフガング・パウリ (Wolfgang Ernst Pauli1900年4月25日 – 1958年12月15日)は、オーストリア生まれのスイスの物理学者。スピンの理論や、現代化学の基礎となっているパウリの排他律の発見などの業績で知られる。「女性とうまくやっていくことに比べれば、学術的な成功を収めることの方がずっと簡単だということです。」と述べている。

4.錬金術研究において浮かび上がった転移と個性化過程の関連

『黄金の華の秘密』中国の道教の瞑想の書の完訳版。R・ヴィルヘルムのドイツ語訳によって余りにも有名になったこの書は、無意識の素材としても貴重で、ユングが自分の思想を形成するきっかけにもなった。そのユングの序文もつけ、注と解説充実し、一般的な理解を可能にした名著の新装版。

瞑想の本「黄金の華の秘密」 – こころの探検 (kokoronotanken.jp)

「黄金の華の秘密」を正しく読み解くために|G.マルコーニ (note.com)

治療者にアニマ/アニムスを投影する転移が生じることは13回のとおりである。

第13回 心の中の異性像アニマ/アニムスがもたらす心の発達過程 – LIFE-SHIFT (lifeshift.site)

「心理学と錬金術」

「哲学者の薔薇園」錬金術(哲学者の薔薇園)と魂の黄金化とツインレイの関係性│錬金術① | 世明けのツインレイ (olive-olived.com)

自我が「私ならざるもの」の力を交流し、その力を受け取ることで、アニマ/アニムスとの結合を果たす物語として読むことができる。

5.個性化過程の多様なとらえ方

 


夢の道―ユング心理学による夢解釈 ユング派の分析家フレイザー・ボア氏が街頭でさまざまな人に実際に見た夢をインタビューし、ユングの高弟マリー・ルイーズ・フォン・フランツ博士がその夢解釈をボア氏との対談形式ですすめている。ユング心理学の夢解釈を一般の人々が十分理解できるよう、随所で夢の迷信、詩や歴史等にもふれており、豊富な話題からフランツ博士の人がらが感じられ、夢の奥深さ、おもしろさを堪能できる好著である。

男性の誕生―『黄金のろば』の深層 女性は女性で「ある」が、男性は男性に「ならねばならない」。では、男性が精神的な成熟を得るには、何が必要とされるのか。「男らしさ」という概念がますますあいまいになりつつあるいま、男性が精神的に一人前になるのはいっそう困難さをましている。本書は、この難題にユング心理学の立場から迫る。ローマ時代の古典小説『黄金のろば』を題材にとり、ろばの姿に変身した主人公がさまざまな試練を経て人間に戻る、というこの物語を、“男性が母親コンプレックスを克服して成長するプロセス”の象徴ととらえ、“内なる女性性”、ひいては自己を抑圧することなく解放・統合することの重要性を明らかにする。

 

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