第13回 人格と環境

感情・人格心理学(’21)

Psychology of Emotion and Personality (’21)

主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)、佐々木 玲仁(九州大学大学院准教授)

【講義概要】
本講義では感情心理学および人格心理学について論ずる。ここで取り扱う感情とは「そのときどきの気持ち」のことであり、人格とは「それぞれの人がら」のことである。これらのことについて、どのような概念なのか、あるいはどのように測定するのか、そしてどのように発達していくのかなどについてそれぞれの観点から述べる。また、感情については、その種類や表し方、記憶との関連など、人格については、それをどのように記述するのか、環境との関連、心理療法との関連など、様々なテーマで論じていく。また、感情と人格の繋がりや日常生活との関連についても取り扱う。

【授業の目標】
感情および人格という日常でも出会う概念について、心理学上の様々な論点から考察できるようになること、また、学術的な理解を得るだけでなく、その理解が日常生活とどのような繋がりがあるのかかについての知見を得ることを目標とする。

【履修上の留意点】
人間に対する率直な知的好奇心があれば、予備知識等は特に必要としない。

第13回 人格と環境

我々は人格を論じるとき、それを周囲の環境や状況から切り離された、独立したものと想定して扱うことが多い。しかし実際には人格は環境や状況から大きく影響を受けるものでもある。この影響を踏まえつつどのように人格を論じるべきかについて述べていく。

【キーワード】
環境、文化、状況、一貫性

執筆担当講師名:佐々木 玲仁
(九州大学大学院准教授)


「人には一貫した性格がある」

1.人格は独立して存在し得るか

「人間ー状況論」
「地図」が旅行者の動きをコントロールする時代に、「状況論」から学べること:連載「計画を超えて」 第3回

2.人格が影響される環境1 状況論について

(1)一貫性とは何か

・状況的な一貫性

・時間的な一貫性

(2)一貫し、かつ一貫していないということをどのように成り立たせるか

 

3.人格が影響される環境2 文化的背景

4.外部要因の影響を受けない人格


学習課題

・あなたが誰か他の人を指して「◯◯(地名)の人らしい」と言うとき、どのようなことを考えているかについて考えてみよう。

 

・あなたが誰か他の人について「◯◯さんらしい」と思うとき、なぜそのように思うのかについて考えてみよう。

 


問題 8 状況論の説明のうち,次の①~④の中から適切でないものを一つ選びなさい。

① 状況論の考え方は,人格の一貫性を前提として,状況による人格の小さな変化を捉えたものである。 正解です。
② 人格はその状況にかかわらず実在するということは,無条件に前提とすることはできない。
③ 2 つの国,例えば日本とアメリカという国を取り上げてその文化差を論じることは実際は困難である。
④ 人格については,常に一貫しているということも全く一貫性がないということも考えにくい。

フィードバック 正解は①です。

【解説/コメント】

①状況論は,人格の一貫性を前提にするのではなく,むしろ一貫した人格は存在しないと仮定することから始まる。根本的に,一貫した人格を仮定することへの疑義から始まっている理論である。

意味(事柄の内容)がはっきりしないこと。疑問に思われること。「―をただす」

②③④適切な記述である。

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