第10回 身近な情報の錯覚
第10回 身近な情報の錯覚
私たちは、身の回りの出来事からさまざまな情報を読み取って解釈し、判断や意思決定の材料としている。その際に、情報が持つ統計的な性質を見落とすと、そこに誤った因果関係を発見してしまうことがある。
【キーワード】
平均への回帰、前後論法、サンプリングバイアス、因果関係
1.身近な情報をしっかり見て、その体験から錯覚してしまう。
(1)褒めることと叱ることの効果
(2)平均への回帰
平均への回帰(regression):データの性質に起因する統計的な現象である。完全ではない関連性のある2つの測定値の片方が極端な値をとった場合、もう片方はより平均的な値に近づく(帰ってくる)傾向が生じることを指す。
偶然差異:あらゆる測定値には誤差がつきものである。
フランシス・ゴールドン(1822-1911)は遺伝の研究の中から平均への回帰を見出した。
直線回帰
(3)身近にある平均への回帰
平均への回帰の錯誤(回帰の誤謬):回帰現象が起こっているだけなのに、値の変化は別の何かが原因だと考えてしまう。
カーネマンによれば、回帰の錯誤を引き起こすのは「起こりうる結果はその対象を最大限に代表する」と考える代表性ヒューリスティックの働きである。
能力の測定値は能力そのものをよく代表すると捉え、回帰による変動の要因が過小評価されてしまうのである。
測定値は、真の値 + 偶然の誤差に分解される
単なる統計的回帰に、複雑な因果関係を想定していまう。(身近に入り込む回帰の誤謬)
あることと同時発生の原因がある場合は、この論法は成立しない。 一般に、ほかの原因として考えられるのは、行なったあることがあってもなくても、対象そのものが自然に変化する場合(何もしなくても変化する可能性)対象外に原因があるとしても、それがランダムな現象における偶然の変化に起因する場合(極端なケースの平均への確率論的な回帰現象。この場合には前後に因果関係は存在しない) さらには、そもそも変化するかしないかを調べている対象自体に、以前と以後という時間の経過とともに、欠落などの変化が生じている可能性がある場合である
「鰯の頭も信心から」(擬似科学) 良くなることもあるし、悪くなるときもある。悪いときに試し、その後良くなるとその療法が効いたと思ってしまう。
(4)社会的な問題を引き起こす回帰の錯覚
誤差の成分が大きいと回帰も大きくなり、それが別の原因に帰属されてしまうと重大な錯誤に陥ることになる。
株価をはじめとした経済状況が落ち込んでいるときや、社会的な問題が多発している際には、偽政者が何らかの措置や対応策を取ったとする。そのあとに状況が変化すれば、その措置が有効だったと解釈されるだろう。
2.前後論法の錯覚を知る
(1)事前と事後の比較から考える
before-and-after arguments
前後論法には弱点がある。実際にはまったく変化の原因にはなっていない可能性を見落とす。
隠された原因としては、平均への回帰、同時発生の原因、自然発生の原因、欠落したケースが考えられる
(2)同時発生や自然な出来事が変化の原因
同時発生の原因 擬似相関
自然な原因
(3)対象が変わってしまったことが変化の原因
欠落したケース ダイエットジムの効果、サンプリングバイアス