第10回 感情と進化
第10回 感情と進化
第10回の講義では感情を進化論的に理解することを目指す。ひとつの例として嫉妬感情が適応的であると考えられる理由を紹介する。また、感情に伴って表出される表情の進化についても考える。
【キーワード】
基本感情、進化的ミスマッチ仮説、嫉妬、配偶者防衛、表情
1.感情とは、
ある程度はっきりした原因によって引き起こされる意識可能な強い主観的経験を伴う心理状態
・気分ムードは必ずしも強い主観的経験を伴わない
・気分ムードの原因は必ずしも意識的にわからない。
生理的変化
行動傾向の変化
(1)感情<>フィーリングだけ
基本感情(basic emotion)
主観的経験(フィーリング)
気分(ムード)
感情はフィーリングだけでなく身体の生理的変化、行動傾向の変化を伴う
(2)進化心理学にとって感情とは
感情というのは、環境の手がかりに反応して私たちの注意・認知・行動を平常運転モードから緊急事態モードに切り替える調整システムだと(Tooby & Cosmides 2008)
恐怖(fear)
闘争・逃走反応(fight-or-flight response)
(3)平均してうまくいった行動
「今ここ」原理
進化的ミスマッチ仮説(evolutionary mismatch hypothesis)
2.嫉妬
(1)嫉妬の至近要因の性差
嫉妬(jealousy)
配偶者防衛(mate guarding)
男性はパートナーが他の男性と性的関係をもったという場面でより強く嫉妬を感じるのに、女性はパートナーの心が他の女性に移り初めているという場面でより強い嫉妬を感じる(Buss 1992)
(2)配偶者保持行動
配偶者保持行動(mate retention tactics)
パートナーをライバルから奪われないようにし、自分の元に留めておくために役に立つ行為
3.表情
(1)基本感情と表情
ダーウィンは、機能のない表情こそが自身の自然淘汰による進化という考え方の有力な証拠となると考えた。
■■創造論 VS 自然淘汰による進化■■
■ヒトの表情には生物学的な基盤がある。
・ヒトの表情には文化を越えた普遍性がある。
・新生児、先天盲の人たちの表情表出
・顔への電気刺激により特定の表情が表出されることがある
■ある種の表情は役に立つが、まったく役に立たない表情もある。
■感情表出は動物にも見られる
(2)表情の適応的意味
(3)シグナルとしての表情
外適応(exaptation)