第1回 心理学統計法を学ぶにあたって

心理学統計法(’21)
Psychological Statistics (’21)
主任講師名:清水 裕士(関西学院大学教授)
【講義概要】
心理学で用いる統計的手法について、基礎的な理論から、実践的な分析手法まで解説する。具体的には、心理学で用いるデータの種類とその要約方法、推測統計学や統計的因果推論の理論的基礎、そして推測統計学による母集団の性質の推定を実際に行うためのノウハウについて解説を行う。
【授業の目標】
心理統計学の理論的な基礎、とくに推測統計学や統計的因果推論についての理論背景を理解し、そのうえで実際のデータ分析を行うことができるようになることを目標とする。具体的には、データの可視化や要約、相関係数や連関係数、平均値の推定、二つあるいはそれ以上の平均値差の推定、などについて実践できるようになることを目指す。
【履修上の留意点】
特になし。
第1回 心理学統計法を学ぶにあたって

心理学統計法で学ぶこと

講義の目的・・・・・取得したデータを要約するための方法や、部分的なデータから全体の特徴を推測するための方法をみにつける。

学習目標・・・・・心理学で使う推測統計学の基礎を習得し、統計ソフトを使ってそれらの分析を実行できるようになる。

■統計学とはなにか

■心理学でなぜ統計学を使うのか

■統計ソフトウェアについて

■本講義を学ぶ上での留意点

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■統計学とはなにか

データを要約し、そこから推測する方法

データ
・現実に存在するあらゆる資料や記録、調査結果など、情報を符号化したものすべて
・統計学では、主に、カテゴリや数値によってコーディングされた情報のことを指す

二つの統計学・・・・・記述統計学、推測統計学

記述統計学・・・・・えられたデータを要約する手法
・データをそのままでは複雑
・要約することで人間でも理解できるものになる。

◯データの可視化
・グラフや表を使って視覚的に把握
・第2回の講義で学習する

◯統計量の算出・・・・雑多な情報を意味のある1つの値に要約
・1つの変数を要約する(第3回の講義)
・複数の変数の間の関係を要約する(第4〜6回の講義)
統計量・・・・・データから算出された数値(合計値、平均値などの値)
変数・・・・・値が変化する量(個人、個人で値が異なる量、身長、体重、性格特性など)

推測統計学・・・・・えられたデータから、そのデータ発生源である母集団と呼ばれる対象の性質を推測する
◯心理学のデータと母集団
・実験のデータ:多くて100人程度
・知りたい対象:人間全般の心理機構

100人の特徴ではなく、人間全般の特徴を推測するためには、推測統計学が必須
・確率を用いて母集団を推測する枠組みを学習(第7〜8回の講義)

◯統計的推定
・母集団の平均値をデータから推測する
(第9〜11回の講義)

◯統計的検定
・確率の考え方を応用して、実験で得られた効果が母集団でも同様にあるといえるか判断する方法
(第12〜14回の講義)

◯統計分析の注意点
(第15回の講義)

■心理学でなぜ統計学を使うのか

推測統計学の目的・・・・・測定、予測、因果関係の推測、現象の説明
・心理測定学(psychometrics)          測定
・機械学習(machine learning)           予測 (天気予報)
・統計的因果推論(causal inference in statistids)  因果関係
・統計モデリング(statistical modeling)       現象の説明

◯心理学統計法と因果推論
・心理学での統計学の主な使い方
因果関係の推論
・実験による因果関係の推測
実験で得た因果効果が他の人にも当てはまるかを一般化したい
推測統計学の知識が必要
・データのとり方にも工夫が必要
因果関係を得るための方法論(第6回の講義)で解説
心理学研究法も同時に学習する必要がある。

■統計ソフトウェアについて
これまでの統計学の講義
・手計算で統計量や検定を行うことを重視
・利点 統計学の理解が正確になる
・欠点 手計算が可能な範囲しか説明されない
統計ソフトを使うことを前提とした講義
・実際に卒論で使う統計分析を実行でき、またその原理を理解する。
・結果の解釈ができることを目標
・すべての計算方法を理解している必要がある。

心理統計のためのソフト
どの統計ソフトでも同じ結果が出る。
これから学習する人のために
SPSS
R
HAD

HAD:フリーの統計プログラム | Sunny side up! – 清水裕士

 

各回のテーマと授業内容
第1回 心理学統計法を学ぶにあたって

心理学統計法とはなにかについてその概要について理解することを目的とする。また、心理学でなぜ統計学を用いるのかを解説し、本講義で学習する範囲などを明確にする。さらに、本講義を受けるにあたっての注意点などについても説明する。

【キーワード】
データ、変数、記述統計学、推測統計学、因果推論、積み上げ式、数式の和

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

第2回 データの尺度水準と可視化

心理学で用いるデータとは何か、変数の定義を解説し、データの種類、データを要約・可視化することの重要性を説明する。また具体的にデータを可視化する手法についていくつか示し、ソフトウェアを用いて図表を作成する方法を習得することを目的とする。

【キーワード】
尺度水準、量的データ、質的データ、可視化

執筆担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)
放送担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)

第3回 要約統計量

データを代表値や散布度によって要約する手法を解説する。データを要約することの重要性とともに、1つの代表値で要約することの限界についても触れる。具体的には平均値、中央値、最頻値、そして標準偏差、四分位偏差、範囲などの指標について説明する。

【キーワード】
要約、要約統計量、代表値、散布度

執筆担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)
放送担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)

第4回 2変数間の関係

2変数の関係について、図表などで視覚的に表現する方法と数値によって要約的に表現する方法について解説する。可視化する方法として散布図、クロス表を紹介する。また、数値によって要約する方法として、測定単位やクロス集計表のサイズといった2変数の関係の大きさとは関係のない要素によって変動する指標(共分散、χ2値)と、関係の大きさのみを反映する指標(相関係数、クラメールの連関係数)を紹介する。

【キーワード】
散布図、共分散、相関係数、クロス集計表、χ2値、クラメールの連関係数

執筆担当講師名:平川 真
(広島大学講師)
放送担当講師名:平川 真
(広島大学講師)

第5回 直線回帰

2変数の関係における一方向的な関係を記述する方法として、データに1次関数を当てはめる、回帰分析を解説する。回帰分析によって表される一方向的な関係は、必ずしも因果関係とは言えないことを説明し、「ある変数からある変数の影響を取り除いた部分」に注目することの重要性を解説する。

【キーワード】
回帰分析、回帰直線、決定係数、残差

執筆担当講師名:平川 真
(広島大学講師)
放送担当講師名:平川 真
(広島大学講師)

第6回 偏相関係数と因果効果

心理学実験で因果関係を知る方法について解説する。因果関係を知るにはどうすればいいか、具体的にどのようにデータを取得すればいいのかについて理解することを目指す。

【キーワード】
因果推論、疑似相関、交絡、共変量、偏相関係数、統制群と実験群、無作為割当、平均因果効果

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

第7回 母集団と標本

推測統計学の基礎について解説する。そのために母集団と標本、確率など、推測統計学を理解するために必要な用語や数学的な概念の定義を理解することを目指す。また、標本抽出の考え方から、母集団の性質を標本から推測することの基本について学ぶ。

【キーワード】
推測統計学、母集団、標本、確率、確率変数、確率分布、無作為抽出、標本統計量、標本分布

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

第8回 確率モデルを用いた区間推定の考え方

標本から母集団の性質を理解する枠組みを解説する。確率モデルとして正規分布を用いた母数の推論、とくに区間推定の考え方について理解することを目指す。

【キーワード】
確率モデル、正規分布、期待値、標準誤差、区間推定、信頼度、信頼区間

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

第9回 母平均の区間推定

母分散がわからないときの母平均の信頼区間の推定方法を学ぶ。そのために、推定量と推定値の区別、推定量が持つ性質、t分布による区間推定の理解を目的とする。

【キーワード】
推定量、推定値、不偏性、母分散が未知のときの区間推定、標準化、標準正規分布、t分布、t値、自由度

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

第10回 2変数の関係を表す統計量の推定

2変数の関係を表す統計量、具体的には相関係数とクラメールの連関係数について、手元のデータの2変数の関係性から母集団における2変数の関係性を区間推定する方法を解説する。95%信頼区間について、相関係数を例にとり、その意味を解説する。

【キーワード】
相関係数、クラメールの連関係数、区間推定

執筆担当講師名:平川 真
(広島大学講師)
放送担当講師名:平川 真
(広島大学講師)

第11回 2条件の平均値の差の推定

心理学の研究において利用される頻度の高い、2条件の平均値の差の推定について解説する。データに対応がない場合と対応がある場合についてそれぞれ、2条件の平均値の差の区間推定および標準化平均値差の区間推定について解説する。

【キーワード】
2条件の平均値の差、標準化平均値差、区間推定

執筆担当講師名:平川 真
(広島大学講師)
放送担当講師名:平川 真
(広島大学講師)

第12回 統計的検定

統計的検定について解説する。統計的検定の考え方、帰無仮説と対立仮説の関係、検定の論理などについて理解することを目的とする。また、検定の使い所と注意点についても学ぶ。

【キーワード】
統計的検定、帰無仮説、対立仮説、検定統計量、帰無分布、棄却域、有意水準、p値、統計的誤りの確率、2群の平均値差の検定、無相関検定、独立性の検定

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

第13回 3つ以上の平均値差の検定

3群以上の間で平均値の差を検定する方法について解説する。検定の多重性の問題を説明したのち、分散分析を利用した平均値差の検定方法を説明する。

【キーワード】
検定の繰り返し、有意水準の調整、分散分析、F分布

執筆担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)
放送担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)

第14回 対応のある3つ以上の平均値差の検定

対応のある3条件以上の間で平均値の差を検定する方法について解説する。分散分析を利用して条件間で平均値差の検定を行う方法を説明する。また、多重比較によりどの条件間に差が認められるか検定する方法を紹介する。

【キーワード】
分散分析、F分布、多重比較、球面性の仮定

執筆担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)
放送担当講師名:紀ノ定 保礼
(静岡理工科大学准教授)

第15回 統計的分析の注意点

本講義で解説した手法を復習しながら、適切な統計分析を行うための注意点について解説する。統計分析の過程が満たされないときにどのような問題が生じるのかを理解することを目的とする。

【キーワード】
確率モデルの仮定、独立同分布の仮定、等分散の仮定、球面性の仮定、統計的検定の誤用、p hacking、HARKing

執筆担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)
放送担当講師名:清水 裕士
(関西学院大学教授)

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