第1回 位置づけ

学習・言語心理学(’21)

Psychology of Learning and Language (’21)
主任講師名:高橋 秀明(放送大学教授)

【講義概要】
本科目は、人の行動が変化する過程を扱う学習心理学の領域と、言語の習得における機序を扱う言語心理学の領域とを扱っている。言語を操ることは人間の特質であると同時に、人間の行動とその変化とは人間心理を客観的に研究することのできる対象であり、心理学の中で基礎的な領域といえる。本科目は、このような観点から人間の行動と言語、ならびに研究方法について概説するものである。本科目のターゲットは、主に心理学を専攻し、心理学関連の資格(公認心理師、認定心理士、ならびに本学認証制度「心理学基礎」)を目指すものであるが、心理学に関心を持つ他コースの学生にとっても興味深い科目になると考えられる。

【授業の目標】
人の行動が変化する過程ならびに言語の習得における機序、これらの研究方法について、基礎的な知識を得るとともに、自身の日常生活における課題解決に応用できる力を身につける。

【履修上の留意点】
事前に、学部科目「心理学概論(’18)」「心理学研究法(’20)」を受講しておくことが望ましい。
※この科目は、心理と教育コース開設科目ですが、人間と文化コースで共用科目となっています。


第1回 位置づけ
(1)「学習・言語心理学」の科学・学問全体の中での位置づけを理解する。
(2)「学習・言語心理学」という科目全体としては「言語行動」を対象とするのが適切であることを理解する。
(3)「学習・言語心理学」の最も関連している領域は「感覚心理学」「知覚心理学」「認知心理学」「言語学」であることを理解する。
【キーワード】
学習心理学、言語心理学、心理言語学、感覚心理学、知覚心理学、認知心理学、言語学、言語行動


語源まで遡ると、深いところで、繋がっている。

term(S) 用語
technical term(s) 専門用語

学習 言語 心理学(心の理学)

心理とは 心(こころ)と理(コトワリ)

心の理学 ←→物の理学

心理学 psychology psycho(魂) + logy
-logy (-ロジー) は、英語の接尾辞のひとつ。「〜話」、「〜論」、「〜説」、「〜学」、「〜科学」などを意味する。「〜学」と訳されている場合が多いが、そうでないものもかなり多い。

物理学 physics

「こころ」とはなにか? その定義は?  → 研究者の数だけある。

「研究」とは何か? → 研究=プロジェクト活動

輸入学問 外国語から日本語に翻訳された。

対連合学習(ついれんごうがくしゅう)paired-associate learning・・・・・対連合学習とは2個の項目を対として覚えることである。有意味度の高い語と低い語を対として覚える際どちらを覚えるのが早いか記録した。有意味度の低い語から高い語を覚える方が早くそれは低有意味度は初期の段階で反応の仕方から学習しなければいけなかったからであると考えられる

■位置づけ

学習・言語心理学→公認心理師資格制度の対応のため

「言語行動」(第10回)「言語学習」(第15回)

学習心理学・・・・・学習心理学(がくしゅうしんりがく、psychology of learning)は、学習、すなわちヒトを含む動物が経験を通して行動を変容させていく過程を研究する心理学の一領域である。

言語心理学・・・・・心理言語学(しんりげんごがく、英語:psycholinguistics)は、人間言語を獲得する過程や、言語の認知処理、言語の生成過程や方言の出現など、言語学の中でも特に人間の心理的過程を研究する学問であり、言語学と心理学の中間に位置する。

■学習心理学とは、何か
「学習」・・・・行動の変容、比較的長時間続く行動の変容

学習:learning
行動:behavior(挙動)
行動変容:modification of behavior

系統発生
比較心理学 comparative psychology

個体発生
発達心理学 developmental psychology

過程:process

■言語心理学とは、何か

言語行動・・・・・『言語行動』(げんごこうどう、Verbal Behavior、1957)は、心理学者B.F.スキナーの著書である。この本で彼は、言語行動は他の行動と同様に随伴性によってコントロールされていると主張し、従来、言語文学発話と呼ばれてきた人間の行動を言語行動として機能分析している。

言語学習

言語の習得における機序=言語心理学
(機能)     (構造)

言語獲得language acquisition →言語習得
言語獲得(げんごかくとく、英: language acquisition)とは、人が特定の言語を使用できるようになること。 特に、幼児期に行われる第一言語獲得のこと。 両親の人種や民族に関係なく、一般的に子供はどのような言語でも獲得できる。

機序:mechanism(機構、構造)
ものごとが起こるメカニズムのこと。

「人の」人間に特有のもののため、人間とは言語を操る動物である。

■心理学と言語学
心理言語学・・・・・心理言語学(しんりげんごがく、英語:psycholinguistics)は、人間言語を獲得する過程や、言語の認知処理、言語の生成過程や方言の出現など、言語学の中でも特に人間の心理的過程を研究する学問であり、言語学と心理学の中間に位置する。

言語心理学・・・・・言語心理学は「言語が人間 (生物体) によって, どのようにコントロールされるか」を明らかにする学問である。 一般言語学が言語を人間行動から切り離し, La Langneとして, その形態や構造を分析する傾向があつたのに対して, 言語心理学では人間の精神物理的行動としてのLe Parlerが対象である。

■知覚・認知心理学について
基礎心理学
・知覚・認知心理学 (考えることの科学)
・神経・生理心理学
心理学関連科目
・人体の構造と機能及び疾病
・精神疾患とその治療

■発達心理学について
障害発達心理学


各回のテーマと授業内容

第1回 位置づけ

(1)「学習・言語心理学」の科学・学問全体の中での位置づけを理解する。

(2)「学習・言語心理学」という科目全体としては「言語行動」を対象とするのが適切であることを理解する。 (3)「学習・言語心理学」の最も関連している領域は「感覚心理学」「知覚心理学」「認知心理学」「言語学」であることを理解する。

【キーワード】 学習心理学、言語心理学、心理言語学、感覚心理学、知覚心理学、認知心理学、言語学、言語行動

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第2回 対象(1)心理学から

(1)活動理論からの学習の分類を理解する。

(2)行動主義からの学習の分類を理解する。

(3)行動分析学の研究対象と方法を理解する。

(4)認知主義からの記憶の分類を理解する。

【キーワード】 学習科学、協調学習、ヴィゴツキー、活動理論、行動主義、生得的行動、習得性(学習性)行動、非連合学習、連合学習、社会的学習、ルール支配行動、行動分析学、ケース研究、シングルケースデザイン、短期記憶、長期記憶、作業記憶、意味記憶、エピソード記憶、意味記憶、顕在記憶、潜在記憶、手続き記憶、宣言的記憶、展望記憶

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第3回 対象(2)言語学から

(1)言語学の研究領域を理解する。

(2)言語学に対する記号論の影響を理解する。

【キーワード】 記号、ド・ソシュール、ランガージュ、ラング、パロール、シニフィアン、シニフィエ、恣意性、二重分節、音声学、音韻論、文法、形態論、統語論、文章論、意味論、語用論、文字論

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第4回 対象(3)生物、生理、障害の観点から

(1)言語行動を支える生物学的、神経生理学的な機構について理解する

(2)言語行動の障害について理解する

(3)言語学の研究領域と心理学との関係を理解する。

【キーワード】 運動性、脳神経系、進化、ヘッブの法則、脳機能の局在化、ブロードマンの脳地図、ブローカ野、ウェルニッケ野、ペンフィールドのホモンクルス、発話の連鎖、障害、視覚障害、聴覚障害、運動障害、内部障害、言語障害、失語症、ブローカ失語(皮質性運動失語)、ウェルニッケ失語(皮質性感覚失語)、超皮質性運動失語、超皮質性感覚失語、伝導失語、健忘(失名詞)失語、読字障害(ディスレクシア)、学習障害、言語産出、言語理解、コンテンツ、活動、ICT

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第5回 目的と方法

(1)「学習・言語心理学」の研究目的について理解する。

(2)「学習・言語心理学」の研究方法について理解する。

【キーワード】 記述、予測、制御、観察、理論構築、仮説生成、仮説検証、因果関係、相関関係、独立関係、経験的研究、理論的研究、心理学研究法、実験法、調査法、観察法、面接法、検査法、介入研究法、実験計画法、準実験、操作化、操作的定義、課題分析、言語材料の基準表、エビングハウス、無意味綴り、言語コーパス、ログデータ

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第6回 生得的行動

(1)生得的行動について理解する。

(2)言語習得の理論について理解する。

【キーワード】 初期学習、反射、向性、動性、走性、固定的活動パターン、生得的反応連鎖、原始的自発反応、ティンバーゲン、刻印づけ(刷り込み)、臨界期、感受期、チョムスキー、言語獲得装置、普遍文法、ブルーナー、言語獲得支援システム、トマセロ、統計的学習、野生児

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第7回 レスポンデント条件づけ

(1)連合および随伴性について理解する。

(2)レスポンデント条件づけの実験手続きについて理解する。

【キーワード】 連合学習、連合、随伴性、随伴性操作、パブロフ、無条件刺激(無条件レスポンデント刺激)、無条件反応(無条件レスポンデント反応)、誘発性行動、中性刺激、レスポンデント強化、レスポンデント消去、条件刺激(条件レスポンデント刺激)、条件反応(条件レスポンデント反応)、同時条件づけ、遅延条件づけ、痕跡条件づけ、逆行条件づけ、隠蔽、阻止、ワトソン、古典的条件づけ、恐怖条件づけ、行動療法、暴露法、味覚嫌悪学習、ガルシア効果、味覚嫌悪条件づけ

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第8回 オペラント条件づけ

(1)試行錯誤学習について理解する。

(2)オペラント条件づけの実験手続きについて理解する。

【キーワード】 ソーンダイク、試行錯誤学習、効果の法則、スキナー箱、自由オペラント、強化子(強化刺激)、弱化子(罰子)(罰刺激)、強化、弱化、シャトル箱、逃避、回避、提示型強化(正の強化)、除去型強化(負の強化)、提示型弱化(正の弱化)、除去型弱化(負の弱化)、反応形成、トークンエコノミー、行動経済学、経済心理学

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第9回 弁別オペラント条件づけ

(1)弁別オペラント条件づけの実験手続きについて理解する。

(2)3項随伴性について理解する。

(3)古典的行動主義、新行動主義、徹底的行動主義について理解する。

【キーワード】 3項随伴性、弁別刺激、弁別オペラント、刺激性制御、強化スケジュール、反応連鎖、確立操作、飽和化、遮断化、見本合わせ訓練、概念形成、プレマックの原理、反応遮断化理論、古典的行動主義、新行動主義、ハル、動因、トールマン、認知地図、バンデューラ、徹底的行動主義

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第10回 言語行動

(1)言語行動について理解する。

(2)ルール支配行動について理解する。

【キーワード】 スキナー、言語行動、ルール支配行動、多重制御、マンド、タクト、言行一致、関係フレーム理論、言語共同体、非言語行動

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第11回 知覚運動学習

(1)知覚運動学習について理解する。

(2)知覚運動学習の位置づけについて理解する。

【キーワード】 感覚・知覚と運動との協応、言語行動と非言語行動との相互作用、技能学習、道具使用、練習曲線(学習曲線)、プラトー(高原状態)、制御、開ループ制御、閉ループ制御、練習、全習法、分習法、分散練習、集中練習、レミニセンス、保持、転移、両側性転移、フィードバックの効果、内的フィードバック、外的フィードバック、結果の知識(KR)、パフォーマンスの知識(KP)、限界的練習(熟慮を伴う練習)

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第12回 観察学習

(1)観察学習について理解する。

(2)観察学習の位置づけについて理解する。

【キーワード】 観察学習、社会的学習、局所強調、刺激強調、観察条件づけ(代理条件づけ)、代理強化、模倣、ミラーニューロン、新生児模倣、般化模倣、バンデューラ、自己調整、自己効力感、メディアの効果

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第13回 マルチメディア学習

(1)eラーニングの位置づけについて理解する。

(2)マルチメディア学習について理解する。

【キーワード】 ICT、eラーニング、学習管理システムLMS、マルチメディア学習

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第14回 動機づけと自己制御

(1)動機づけに関するケラーのARCSモデルについて理解する。

(2)自己制御について理解する。

(3)インストラクショナル・デザインの位置づけについて理解する。

【キーワード】 動機づけ、ケラー、ARCSモデル、インストラクショナル・デザイン、自己調整学習、学習方略、eラーニング、社会関係資本

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

第15回 言語習得

(1)言語習得について理解する。

(2)成人学習について理解する。

【キーワード】 言語習得、熟達、母語、バイリンガル、サーカディアンリズム、前会話、クーイング、話者交代、喃語、子どもに向けられた発話、乳児に向けられた発話、初語、一語文、二語文、語彙の爆発的増加(語彙爆発)、共同注意、絵本の読み聞かせ、遊び、保育、言い淀み、言い間違い、概念形成、推論、思考、問題解決、対連合学習、叡智、エリート、成人学習、加齢(エイジング)、アンドラゴジー、変容的学習、ナラティブ学習、身体化された学習、発達の最近接領域、認知的徒弟性、実践コミュニティ、学習する組織、越境学習

執筆担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授) 放送担当講師名:髙橋 秀明 (放送大学教授)

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