心理と教育へのいざない(’18)

心理と教育へのいざない(’18)

Invitation to Psychology and Education (’18)

主任講師名:田中 統治(放送大学特任教授)、向田 久美子(放送大学准教授)、佐藤 仁美(放送大学准教授)

【講義概要】
導入科目としての本科目では、教育学・心理学・臨床心理学に興味を持ち、主に、心理と教育コースを志望する科目履修生や選科履修生、及び本コースに入学した全科履修生を対象に、これらの学問全体のガイダンスと、基礎知識を学ぶ。三領域の各特徴を学びながら、教育学・心理学・臨床心理学に関する導入的な思考方法と視点を身につけること、そして学びを積み上げ、本コース内での自身の専門領域と分野を見つけていくことを目的としている。

【授業の目標】
本科目を通じて、コース全体の学問体系を概観できて、教育学、心理学、及び臨床心理学の三領域の導入的知識を身につけることを目指す。各領域内での対象分野ごとの問題関心やその立場と視点の独自性、アプローチの仕方、及び実践活動を順を追って系統的に考察することを目標とする。

【履修上の留意点】
学部開設の導入科目であるので、心理と教育コースに興味を持ち、また、本コースを志望する科目履修生や選科履修生、及び本コースに入学した全科履修生は履修することが望ましい。

各回のテーマと授業内容

第1回 教育とは

人類史における教育の由来と発展を振り返りながら、教育思想と社会の発展、そこでの教育学の役割を、基礎概念である教育作用、教育文化、教育思想、及び近代教育学の視点から検討し、人間科学としての教育学に誘う。

【キーワード】
通過儀礼、教育作用、教育文化、教育思想、近代教育学

執筆担当講師名:田中 統治(放送大学特任教授)
放送担当講師名:田中 統治(放送大学特任教授)

第2回 教育と社会

わたしたちが見聞し体験する全ての事柄は必ず現実の世界に原因を持ち、さらに他の現実世界の事柄に関わっていく。教育もその例外ではない。全体社会という大きなシステムの中のサブシステムのひとつであって、教育だけが特別な「聖なる営み」だと考えるべきではない。教育を他の事象と同様に社会事象として理解し考察する根拠がそこにある。教育を社会との関わりにおいて理解し分析する学問分野が教育社会学である。

【キーワード】
教育事象、社会事象、教育社会学、ミクロな事象、マクロな事象、社会化、実証主義、解釈

執筆担当講師名:岩永 雅也(放送大学副学長)
放送担当講師名:岩永 雅也(放送大学副学長)

第3回 教育と行政:教育の政策、法・制度、管理・経営

公教育を運営する教育行政について学ぶ。教育行政の研究領域である教育政策、教育法・制度、教育管理・経営について説明したうえで、戦後の各時期における教育行政をめぐる時代的背景と研究課題を概観し、近年の教育行政研究(学)の特徴と重要な研究課題について考える。

【キーワード】
教育行政、教育政策、教育法・制度、教育管理・経営

執筆担当講師名:小川 正人(放送大学特任教授)
放送担当講師名:小川 正人(放送大学特任教授)

第4回 学校教育

近代学校教育制度の成立とともに整備されてきた教育課程と教育方法の発展を検討し、それを支える社会構造や教育実践に関する考え方に注目しながら、組織としての学校、学校文化、教師文化、生徒文化、及びカリキュラム・マネジメントについて考察する。

【キーワード】
学校教育、学校組織、教育課程、教育方法、教師

執筆担当講師名:田中 統治(放送大学特任教授)
放送担当講師名:田中 統治(放送大学特任教授)

第5回 大人が学ぶ理由:生涯学習

子どもと異なる成人学習の特質について整理し、成人学習の理論を紹介しながら、わたしたちがなぜ大人になってからも学習するのかを問うことで、生涯学習の意義について考える。

【キーワード】
成人期の学習、アンドラゴジー、自己決定学習、変容の学習、ナラティヴ学習

執筆担当講師名:岩崎 久美子(放送大学教授)
放送担当講師名:岩崎 久美子(放送大学教授)

第6回 記憶のしくみ:教育心理学

教育心理学は、教育や学習に関する心理学的事実や法則を明らかにし、教育をより効果的に行うことを目的とする学問分野である。第6回では、学習の基盤となる記憶を取り上げ、記憶の働きやしくみ、記憶の内容について概説する。また、どうすればよりよく記憶できるのかについて考察する。

【キーワード】
短期記憶、長期記憶、ワーキングメモリ、手続き的記憶、宣言的記憶、記憶方略

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
ゲスト:進藤 聡彦(放送大学教授)

第7回 赤ちゃんの心:発達心理学

発達心理学は、受精から死に至るまでの人間の心身の変化とそのしくみを研究する学問分野である。第7回では、発達の概念について説明し、その始まりとなる胎生期と乳児期(赤ちゃん)の発達について詳しく紹介する。

【キーワード】
生涯発達、胎生期、乳児期、アタッチメント

執筆担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)
放送担当講師名:向田 久美子(放送大学准教授)

第8回 対人認知:社会心理学

社会的動物である人間は、日々、他者と交流し、相手の心のなかを推測しながら、生活している。しかし心が外側から観察できないものである以上、そこにはさまざまな歪みが生じる。第8回では、こうした対人認知の歪みがどのような性質のもので、なぜ生じるのかについて議論を進めながら、社会心理学へと誘う。

【キーワード】
対人認知、基本的な帰属のエラー、ステレオタイプ、自己中心性バイアス、ナイーブ・リアリズム

執筆担当講師名:森 津太子(放送大学教授)
放送担当講師名:森 津太子(放送大学教授)

第9回 「見える」から「見る」へ:心理学と臨床心理学

知覚は実験心理学から、発達心理学や社会心理学、そして臨床心理学まで、心理学の幅広い対象となっている。第9回では、知覚体験を心理学の研究分野によってどう捉えているかについて考え、心理学と臨床心理学についての理解を深める。

【キーワード】
ゲシュタルトの原理、仮現運動、恒常仮定、恒常現象、幾何学的錯視、ニュールック心理学、知覚的防衛、錯覚、幻覚

執筆担当講師名:小川 俊樹(放送大学客員教授、筑波大学名誉教授)
放送担当講師名:小川 俊樹(放送大学客員教授、筑波大学名誉教授)

第10回 臨床心理学と心理療法

臨床心理学のひとつの、そして大きな柱として「心理療法」が挙げられる。第10回では、心理療法のもっとも基本的な特徴を学ぶとともに、心理療法を通した「人間の心」の「学」について検討してみることとしたい。

【キーワード】
臨床心理学、心理療法、「科学の知」と「臨床の知」、事例研究法

執筆担当講師名:大場 登(放送大学名誉教授)
放送担当講師名:大場 登(放送大学名誉教授)

第11回 イメージを用いた心理療法

心理療法というと、言葉によるカウンセリングを思い浮かべる方が多いと思われるが、子どもは自らの心を言葉で表現することが困難であるし、大人も意識と無意識という言葉を用いるなら、意識していることの言語化は可能でも、無意識領域にあるものの言語化は困難である。描画・箱庭・夢といったイメージを用いた心理療法について紹介する。

【キーワード】
イメージ、描画、箱庭、夢

執筆担当講師名:小野 けい子(放送大学名誉教授)
放送担当講師名:小野 けい子(放送大学名誉教授)

第12回 教育現場におけるカウンセリング

第12回では、教育現場におけるカウンセリングについて述べる。カウンセラーの活動は、端的に言うと、クライエントに対する共感的理解と当面の課題の提案である。ここでは、それを目指してどのようにアプローチできるかを、できるだけ具体的に描写してみたい。

【キーワード】
スクールカウンセラー、学生相談、プレイセラピー、エビデンス

執筆担当講師名:倉光 修(放送大学特任教授)
放送担当講師名:倉光 修(放送大学特任教授)
ゲスト:川住 陽児(大阪市スクールカウンセラー)

第13回 医療における心理臨床

医療の進歩に伴って、精神科医療のみならず身体科医療のさまざまな領域で、心のケアが求められるようになり、心理学のニーズが高まってきている。医療現場で行われている心理臨床、チーム医療の中で心理士に求められる役割について学ぶ。

【キーワード】
医療、心理臨床、チーム医療、生物-心理-社会モデル

執筆担当講師名:小林 真理子(放送大学教授)
放送担当講師名:小林 真理子(放送大学教授)
ゲスト:大山 泰宏(放送大学教授)

第14回 あいだの臨床心理学

分野を越えて、あるいは、どの分野にも関わるものとしての臨床心理学、そして、非専門家と専門家のあいだにおける心理臨床家の存在などを含め、心理臨床のあり方について、「あいだ」をキーワードとして考えてみたい。

【キーワード】
あいだ、コミュニケーション、コミュニオン、共視、三角形の構図

執筆担当講師名:佐藤 仁美(放送大学准教授)
放送担当講師名:佐藤 仁美(放送大学准教授)

第15回 課題と展望

教育と心理がどのように未来につながっていくのか、教育・心理・臨床心理の視点から展望をまとめる。

【キーワード】
教育学、心理学、臨床心理学、人間科学

執筆担当講師名:田中 統治(放送大学特任教授)
向田 久美子(放送大学准教授)
佐藤 仁美(放送大学准教授)
放送担当講師名:田中 統治(放送大学特任教授)
向田 久美子(放送大学准教授)
佐藤 仁美(放送大学准教授)

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