お金を「貯める」ことではなく「使い切る」ことに焦点を当てた、これまでにないお金の教科書が、注目を集めている。DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルールという翻訳書だ。昨年の発売からじわじわと口コミで話題となり、続々と重版が決まっている。現地では経済学者、起業家、ニューヨークタイムズ紙など多方面から絶賛を受け、日本でも著名な起業家、書評家、投資家、マネー系YouTuberなどから「滅多にない超良書」「これぞ理想の生き方」と絶賛の声が相次いでる。人生を最大化するために、金と時間をどう使うべきか? タイトルにある「ゼロで死ね」の真意とは? さまざまな気づきを与えてくれる本書から、その一部を抜粋して紹介する。

定年後に人はどれくらいのお金を使うのか? 驚きの調査結果Photo: Adobe Stock

人は「老後のため」に貯めた資産を
いざ老後になったらほとんど使わない

アメリカ従業員給付研究所は、2018年、高齢のアメリカ人の資産と支出に関するデータをもとに、退職後の20年間で(または20年未満に死ぬまでに)どれだけ資産が減少したかを調査した。

人々は老後に資産を使い果たすのだろうか? それとも手をつけないままでいるのか? 主な調査結果の一部を以下に示す。

●概して、人々は自分の資産を使い始める(取り崩す)のが非常に遅い

●60代から90代までの退職者全体で、年齢を問わず世帯支出と世帯収入の中央値比はほぼ1:1だった。つまり、いつまでも収入と同程度の支出を続ける傾向にあり、退職しても資産には手をつけないという傾向を示している

●資産額が多い人々(退職前に50万ドル以上)は、20年後または死亡するまでにその金額の11.8%しか使っておらず、88%以上を残して亡くなっている。つまり、65歳に引退したときに50万ドルだった資産は、86歳の時点でまだ44万ドル以上残っている

●資産額が少ない人々(退職前に20万ドル未満)は、老後に資産を使う割合が高い(同額の支出でも、資産が多い人に比べて支出の割合が大きくなるためだろう)。だがこのグループでも、退職後の18年間で資産の4分の1しか減っていない

●全退職者の3分の1が、なんと退職後に資産を増やしている。資産を取り崩すのではなく、反対に富を増やし続けていた

●退職後も安定した収入源が保証されている年金受給者の場合、退職後の18年間で使った資産はわずか4%と、非年金受給者の34%に比べてはるかに少なかった

つまり、現役時代に「老後のために貯蓄する」と言っていた人も、いざ退職したらその金を十分に使っていない。「ゼロで死ぬ」どころか、そもそも生きているうちにできるだけ金を使おうとすらしていないように見える。

これは年金をもらっている人の場合、より明白になる。年金受給者は老後も安定した収入が保証されている。だから、年金をもらっていない人に比べて貯金を取り崩しやすいように思える。だが、調査結果の通り、年金受給者が老後に資産を減らす割合はとても低い。

(本原稿は、ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』からの抜粋です)

ビル・パーキンス1969年、アメリカテキサス州ヒューストン生まれ。アメリカ領ヴァージン諸島を拠点とするコンサルティング会社BrisaMaxホールディングスCEO。アイオワ大学を卒業後、ウォールストリートで働いたのち、エネルギー分野のトレーダーとして成功を収める。現在は、1億2000万ドル超の資産を抱えるヘッジファンドのマネージャーでありながら、ハリウッド映画プロデューサー、ポーカープレーヤーなど、さまざまな分野に活躍の場を広げている。

なぜ、この本は読むべき価値があるのか?
この不確かな時代に、誰も気にしている2つの極めて重要な問題の核心に触れているからだ。それは、「何のために貯金するのか」そして「どのように生きるのか」だ。
――ニューヨーク・タイムズ紙

本書は、お金を“最も価値あるもの”と交換する方法を教えてくれる。それは「経験」という名の、人生に喜びをもたらす究極の宝物のことだ。
――ボストン大学経済学部教授ローレンス・コトリコフ

絶賛の声、多数! あなたの価値観と人生の景色をガラリと変えてしまう、経済学者も絶賛した「最上級に人生に響く生き方」とは?

「一刻も早く経験に金を使う」「ゼロで死ぬ」「子どもには死ぬ前に与える」……など、人生を豊かにするために、私たちが心に刻むべき9つのルールを紹介します。

【本書のもくじ】
ルール1――「今しかできないこと」に投資する
ルール2――一刻も早く経験に投資する
ルール3――ゼロで死ぬ
ルール4――人生最後の日を意識する
ルール5――子どもには死ぬ「前」に与える
ルール6――金、健康、時間のバランスを最適化する
ルール7――やりたいことの「賞味期限」を意識する
ルール8――40~60歳に資産を取り崩し始める
ルール9――大胆にリスクを取る

【本書「まえがき」より】

まずは、有名なアリとキリギリスのイソップ寓話から始めよう。

夏の間、勤勉なアリは冬の食料を蓄えるためにせっせと働いた。
一方の気楽なバッタは、自由に遊んで過ごした。

やがて冬が到来した。アリは生き残ることができたが、
バッタには悲惨な現実が待っていた――。

この寓話の教訓は、
人生には働くべきときと遊んでもいいときがある、というものだ。
もっともな話だ。

でも、ここで疑問は生じないだろうか?
つまり、アリは"いつ"遊ぶことができるのだろう? ということである。
それが、この本で提起したい問題だ。

私たちは、キリギリスの末路を知っている。
そう、飢え死にだ。
だが、アリはどうなったのか?
短い人生を奴隷のように働いて過ごし、
そのまま死んでいくのだろうか?
いつ、楽しい時を過すのか?

もちろん、誰もが生きるために働かなければならない。
だが、ただ生きる以上のことをしたいとも望んでいる。

「本当の人生」を生きたいのだ。

この本のテーマはそれだ。
ただ生きるだけではなく、十分に生きる。
経済的に豊かになるだけではなく、人生を豊かにするためにどうすればいいかを考える。

そう、自分の人生を最大化するための一冊なのだ。
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