動物意識の誕生

「動物意識の誕生」を読み始めた、最近読む速度が遅くなってきているのでいつまでかかることやら。
上・下巻があるので、まず上巻から、

動物意識の誕生 上: 生体システム理論と学習理論から解き明かす心の進化

 

名だたる学者たちが問い続けた「意識」という難問。神経生物学者と哲学者が手をとり、意識の進化研究を新たなステージへ押し上げる!

何があればその生物に「意識」があるといえるのか? 多くの研究者がこの「進化の目印」を求めている。神経機構か、感覚器官か。否。「学習」こそがカギだと喝破する著者二人は、脊椎動物、節足動物、頭足類をも射程に捉え、意識がカンブリア爆発と同時に進化したと推定する。動物意識の源流へと向かう緻密な探究をともに追随する体験!

【目次】

序文
謝辞

I 理由づけと基礎づけ

第一章 目的指向システム──生命と意識に対する進化的アプローチ
レイボヴィッツの試練──カント的な認識論的ギャップ
生命のギャップ──神秘から科学的問題へ
組織化の原理
生命の起源のシナリオとシミュレーション
意識に立ち返る──クオリアのギャップ
三つの説明のギャップ
デネットの階層と系統発生的分布──体験の要素を見つけ出す

第二章 心の組織化と進化──ラマルクから意識の神経科学まで
連合主義者たち
ジャン=バティスト・ラマルクの進化心理学
ハーバート・スペンサーと心理学の進化原理
チャールズ・ダーウィンと、人間と動物の心の連続性
ウィリアム・ジェームズの心理学的探究
意識研究の衰退とゆるやかな復活

第三章 創発主義的合意──神経生物学からの視点
特定の経験の神経相関
「意識の場」説──オシレーターとアトラクター
サイコロの重心ずらし
情動と身体化
概観

第四章 クオリアのギャップを生物学で橋渡し?
いくつかの知る方法──メアリー、フレッド、ダニエル
知覚の学習──ダニエル・キッシュの実例
なぜ角釘は丸穴に合わないのか、影はどのように進化しうるのか
構成的問題──意識のマジックショー
実現可能化システム
目的機能の問題──意識には機能ではなく目的がある

第五章 分布問題──意識はどの動物に備わっているのか?
類比からの論証
「誰問題」──二十一世紀の諸説
進化的移行の目印──進化的移行アプローチ

原注
訳注

Eva Jablonka (右) は、テルアビブの科学と思想の歴史と哲学のためのコーン研究所で働く進化生物学者であり、Sagol School of Neuroscience のメンバーです。彼女の主な関心は、進化の理解、特に非遺伝的遺伝的変異と神経系と意識の進化によって引き起こされる進化です。

シモーナ・ギンズバーグ (左) は神経生物学者で、イスラエルのオープン大学を退職し、そこで生物学的思考 (生物学の哲学) の修士課程を率いていました。彼女の過去の研究対象は、人工膜、シナプスの神経生物学、およびイオン チャネルの確率論でした。最近の研究では、初期の神経系の進化と、動物界における意識への進化的移行に焦点を当てています。

シモーナ・ギンズバーグ(Simona Ginsburg)
イスラエル・オープン大学元准教授。専門は神経科学。

エヴァ・ヤブロンカ(Eva Jablonka)
テルアビブ大学教授。専門は生物学の哲学。共著書にEvolution in Four Dimensions. MIT Press, 2005 など。

鈴木大地
筑波大学生命環境系助教、北海道大学人間知・脳・AI研究教育センター(CHAIN)客員研究員。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、現職。訳書にファインバーグ&マラット『意識の進化的起源』(2017 年、勁草書房)、『意識の神秘を暴く』(2020 年、勁草書房)。


温かなスープから始まったという基本想定は共有していた

単純な有機単量体(モノマー)は絶えず作り組み立てられ、疎水効果疎水力によりまとまって小さな丸いしずくになるとアレクサンドル・オパーリンは言う。

ホールデンは、温かなスープのなかで絶えず作られるウイルスのような自己複製する要素が始まりだとした。


ジャン=バティスト・ラマルクの進化心理学

心の生理学的進化「動物哲学」・・・・・自然が何の原型を示していない。このつくりものの存在(心)のうちに、私は、自然の法則を十分に研究しないために除きえなかったもろもろの困難を解決するべく案出された一つの手段を見るだけである。(動物哲学 (岩波文庫 青 929-1) 文庫 – 1954/10/5)ラマルク(1744‐1829)の「動物哲学」とダーウィンの「種の起原」とは,進化思想のふたつの源泉をなす.ラマルクはここで,諸動物の特性,類縁,体制および種に関する比較研究から動物を分類し,生物全般にわたって「進化現象」と「環境による習性変化」とを区別して認め,生物進化の本来の傾向と人類の由来とをダーウィンに先立って立証する.

ダーウィン『種の起源』の50年前、1809年、ジャン=バティスト・ラマルクは本書『動物哲学』のなかで、「獲得形質が次世代に伝えられ、それが進化の原動力となる」とする仮説を発表した。世にいう「獲得形質の遺伝」である。驚くべきことに、この異端視されてきたラマルクの遺伝モデルが、エピジェネティクスというゲノムの分子生物学の分野で再評価されつつある。
DNAの2%、それでも2万個が遺伝子で、残りの98%のDNAはゴミといわれてきたが、このゴミの役割が解明されつつある。また、DNAばかりでなく細胞質も重要な役割がある。人間の体は約50~70兆個の細胞でつくられている。そして、その全ての細胞にDNAがある。これは驚異の世界である。ちなみに「エピ」とは、上とか外という意味であり、エピジェネティクスとは遺伝子の上や外にあるものということになる。

ラマルクの進化論の要点は次のように解説されている(現代表記に改めておく、p.353)。
第一法則は、今日いうところの使用廃用説であり、第二法則は、獲得形質遺伝の説である。そして第一法則の前に付加すべき、環境要約の習性及び形態に及ぼす影響の説をこれに加えて、併せて三つのものがラマルクの進化学説の体系をなすものと見るべきであろう。」と要約される。第一法則の使用廃用説は、今日「用不用説」と呼ばれる。通常、第一と第二法則をもってラマルクの説とされるが、訳者は第三の法則というべき環境要因を加えている。実に慧眼である。また、大変動説を否定し進化は漸変であること、独立の種の形成に今でいうところのニッチの役割を、そして人類と猿猴類(サル)との関係を既に述べているというのである(p.354)。さらに訳者は、ラマルクの「自然」は擬人化されているという(p.355)。これは最近の文化進化の研究にもつながるものである。

さて、神経系を所有する動物の必要性は、それぞれについて、体制(身体の組織化)に相応しており、つぎのようである。

1.これこれの種類の栄養を摂取すること。

2.ある感覚が内から促す性的統合をおこなうこと。

3.苦痛を逃れること。

4.快楽あるいは安楽をもとめること。

動物は、これらの必要性を満たすために、さまざまの種類の習慣(習性:habit)を身につけている。習慣は動物がみずから変化させることのできないもので、それ自体、性向(propensity)にかわるが、動物は性向にも抵抗できない。ここに、動物の習慣的活動の起源があり、本能という名がつけられている特殊な傾向の起源がある。(ラマルク・動物哲学Lamarck1809/1914,p352高橋達明訳)

意識すなわち主観的体験を備えた状態に見られる特徴に関するラマルクの「リスト」は次のとおりになる。

1.神経系が中枢化し(あらゆる感覚が収束する)感覚核をそなえていること、そして電気の流れる求心性、遠心性繊維が豊富に[全身くまなく]配置されていること。

2.世界からやって来る感覚に対する生物全体の状態に関係して、連絡中枢で起こる生理学的な統合プロセス(内的感性はこの統合から構成され、運動中枢の相互作用を導いて動作を誘導する)

3.価値システムまたは必要性(これを満たすように、動物はどう行動するのか決める)

頭部神経節がないので「放射動物」(ウニなど)は体験しないと考えた一方で、頭部神経節と明瞭な感覚器を備えた無脊椎動物に主観的体験の萌芽(ほうが※)的な能力を認めたことは実に明白だ。ひとたび大脳半球が進化し始めれば、推論や発想といった高度な知的機能が現れる。これが脊椎動物で起こった。

 草木のもえ出ること。また、その。めばえ。
 新し物事起こりはじめること。また、物事起こるきざし。「自立心の—」

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