「人生100年時代」は「労働100年時代」!? 定年後に働いている人の割合って実際どのくらいなの?

「人生100年時代」は「労働100年時代」!? 定年後に働いている人の割合って実際どのくらいなの?© ファイナンシャルフィールド

定年制を導入している企業の割合と定年年齢

平成25年に改正された「高年齢者雇用安定法」により、定年年齢を65歳まで引き上げることが可能となりました。さらに令和3年4月からは、事業主は70歳までの定年の引上げや定年制の廃止などの措置を講ずるよう努めることと改正されています。そうしたなか、現状の一律定年制を導入している企業の割合と、その年齢をまずはみてみましょう。

・定年年齢を定める企業は9割以上

厚生労働省のまとめた「令和4年就労条件総合調査」によると、定年制を設けている企業の割合は全体の94.4%となっています。平成29年の同調査では95.5%であったため、若干ではあるものの定年制を設ける企業は減少しています。また、定年制を設けている企業のうち、定年年齢を一律としている企業の割合は96.9%で、これも平成29年の調査と比較すると1ポイントほどの減少という結果でした。

・定年年齢は60歳の企業が最多

一律定年制を設けている企業の中で、60歳で定年としている企業は、同調査によると72.3%で最多です。続いて、65歳が21.1%、66歳以上が3.5%となっています。依然として一般的な企業に勤める従業員は60歳になると定年退職となるといえるでしょう。一方で、平成17年以降では、65歳以上を定年年齢としている企業の割合が24.5%と過去最高となっています。

65歳以上の労働者の割合と傾向

続いて、いわゆる定年年齢に達して以降も働いているとみられる人の割合がどの程度なのかについて解説します。

・労働力人口に占める高齢者の割合

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の労働力人口に占める65歳以上の人の割合は13.4%となっています。人数でみると、65~69歳が410万人、70歳以上が516万人です。労働力人口に占める65歳以上の割合は平成26年に10%を突破し、令和元年に13%を突破。昭和の時代から増え続けています。定年年齢が60~65歳であるとすれば、定年後に働く人も相当な数がいることがわかります。

・65歳以上の労働者は増え続けている

問題は、労働力人口全体と比べた際の65歳以上の労働者の割合です。労働力人口全体はほぼ横ばいであり、むしろ令和元年の6912万人と比べると令和3年は6907万人と減っています。

また、60~64歳の労働人口の割合も令和元年が544万人、令和2年と3年が545万人と、ほとんど変化がみられません。増加傾向のある年代もあるものの、65歳以上の、特に70歳以上の労働人口の全体に占める割合が顕著に増え続けていることが、内閣府のまとめた資料からうかがえます。

定年後も働く人が増えている理由は?

65歳以上になって働く人が増えている理由には個人差があるでしょう。仕事が好きだという人もいないわけではありません。しかし、やはりお金に関する心配がある人も多いとみられます。内閣府の「令和4年版高齢社会白書」では、高齢者世帯の平均年間所得(312万6000円)は、それ以外の世帯の平均年間所得(664万5000円)の半分程度と報告されています。

ちなみに、ここでの高齢者世帯とは、65歳以上のみで構成されるか、もしくはここに18歳未満の未婚の人が同居する世帯です。それ以外の世帯とは、全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いた世帯を指します。この所得の差を埋めるために定年後にも働く人が増えていることは否定できないでしょう。

より長い目でみながらの人生設計が重要

各調査や報告によると、確かに定年してからも働く人の割合が増え続けていることがわかります。「人生100年時代」は「労働100年時代」への入口となっているといえそうです。そこには、やはりお金の問題が尽きないことも理由としてあるでしょう。人生を、より長い目で見ながらの職業の選択や老後の生活プランの構築が重要です。働く理由についても、今一度、見つめ直す必要がありそうです。

出典

厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況

内閣府 令和4年版高齢社会白書 第2節高齢期の暮らしの動向1就業・所得

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部


定年後の再雇用、いくら稼ぐと年金が減る?注意すべき3点とは

再雇用で働くと年金が減るかもしれません。定年後は収入が減ることが多いのに、年金まで減るのでしょうか。再雇用の前と後、何が変わるのか理解していないと、生活費が足りず自分や家族が困ることも。老後の働き方として最低限おさえるべき点が3つあります。

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(画像=Quality Stock Arts / stock.adobe.com)© 定年後の再雇用、月28万円稼ぐと年金が減る?働くときの3つの注意点

■注意点1 収入が多いと年金が減らされる

年金は、老後の生活で困らないようにもらうものなので、収入が多いと減らされてしまいます。基準となる額は、60歳代前半だと28万円、65歳以降だと47万円です。厚生年金と給料の合計額が、1ヵ月あたりで基準額を越すと減額されます。

ただし2022年4月以降は制度が変わり、60歳代前半の人の基準額が28万円から47万円に緩和される予定です。今までは、28万円から47万円の人は年金が減りましたが、4月以降は減らず、満額でもらえます。

60歳以降の年金額はその時代の制度次第で変わります。親や会社の先輩など、上の世代と同じ額の年金がもらえるとは限りません。再雇用後の生活は、最新の制度を踏まえて考える必要があるので、ライフプランを立てる際にはFPなどの専門家に相談しましょう。

■注意点2 再雇用後は基本給が下がり各種手当がなくなる場合が多い

再雇用で60歳以降も働く場合、業務内容や勤務時間が以前と同じでも、収入が減るのが一般的です。基本給が下がるだけでなく、家族手当や住宅手当などがなくなり、収入が半分以下になる人もいます。

ここで、「同じ仕事なのに給料が下がるのは違法では?」と思う人もいるかもしれません。ただ、自動車学校を運営する会社における正職員定年退職時と嘱託職員時の賃金の問題が争われた名古屋自動車学校事件の裁判例(名古屋地判令和2年10月28日労働判例1233号5頁)では、基本給が定年退職前の6割以下かどうかが違法の目安とされました。

給料がどれほど下がると違法なのかは、仕事内容などで違うので一概にはいえませんが、再雇用後の基本給が6割ほどであれば、違法とは言えない可能性があります。

■注意点3 再雇用契約は1年更新のケースが多い

再雇用契約の結び方としてよく見られるのが、1年更新のタイプです。更新されず、翌年に雇止めにあう可能性はあるのでしょうか?

結論としては、正当な理由なく企業が雇止めをすれば基本的に違法です。65歳までの就業機会の確保が、法律で企業に義務化されています。理由なく雇止めはできません。

勤務態度が良くない場合や、業績悪化で整理解雇が必要な場合など、企業が契約更新を拒絶できる場合もありますが、基本的には再雇用後に65歳まで働き続けられます。

ただ、経営者が法律を理解していないなど、不当に雇止めされるケースもあります。万が一再雇用後に契約でトラブルになった場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。

文・大垣秀介(マネーライター)

編集・dメニューマネー編集部

(2022年2月13日公開記事)