第14回 消費者の購買意思決定における非合理性

産業・組織心理学(’20)

Industrial and Organizational Psychology (’20)

主任講師名:山口 裕幸(九州大学教授)

【講義概要】
産業・組織心理学は、①組織に所属する人々の行動の特性やその背後にある心理、あるいは人々が組織を形成し、組織としてまとまって行動するときの特性について研究する「組織行動」の領域、②組織経営の鍵を握る人事評価や人事処遇、あるいは人材育成について研究する「人的資源管理」の領域、③働く人々の安全と心身両面の健康を保全し、促進するための方略について研究する「安全衛生」の領域、そして、④よりすぐれたマーケティング戦略に生かすべく消費者心理や宣伝・広告の効果を研究する「消費者行動」の領域からなる。本講義は、それらを全体として統合しつつ、産業・組織心理学の理論と知見を体系的に解説する。

【授業の目標】
①組織における人間行動の特徴とともに、組織体全体に発生する現象の諸特性について理解し、概説できる。
②人材の育成や開発のために必要となる人的資源管理のあり方について理解し、概説できる。
②職場で発生する安全衛生の問題に対して、その解決のための行動や心理学的支援の方法について理解し、概説できる。
④消費者の意思決定や行動の特性ならびに、効果的な宣伝やマーケティングのための心理学的知識について理解し、概説できる。

第14回 消費者の購買意思決定における非合理性

消費者の意思決定は人間が持つ認知的バイアスや感情に左右されて、時には合理性を欠いた形で行われることがある。その特徴を行動経済学を参考にしながら解説する。

【キーワード】
購買意思決定、非合理性、行動経済学、心理的財布、認知的バイアス


1.人間の認知判断における非合理性

(1)商品評価における主観性
バンドワゴン効果
レブレン効果

(2)人間の認知的バイアス

・確証バイアス

・アンカリング効果

・正常性バイアス

・利用可能性ヒューリスティックス

・ネガティビティ・バイアス

・ハロー効果

2.「購買意思決定における非合理性」を説明する理論

(1)行動経済学

・ホモ・エコノミクス

プロスペクト理論(カーネマン&トベルスキー1979)  人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)があるということである。

・フレーミング効果

(2)チャルディー二(Cialdini)の理論

(3)心理的財布理論

3.消費者利益への影響


以下の①~④の記述のうち,トベルスキーとカーネマンによって提唱された行動経済学の説明のうち,誤っているものを一つ選びなさい。

① 金銭の「利得」と「支出」に関して,同額である場合(たとえば 10000 円の利得と 10000 円の支出)による心理的影響の絶対量は異なることがある。

② 同じ金額の値引き(たとえば 1000 円引き)であっても,定価の金額が異なっている場合には(たとえば 5000 円の場合と 10000 円の場合),人間は割安感を異なって感じることがある。

③ 行動経済学の前提にあるのは「ホモ・エコノミクス(合理的経済人)」という概念である。

④ 行動経済学は心理学から派生し,それを応用した学問といえる。

フィードバック
正解は③です。

【解説/コメント】

従来からの伝統的経済学における人間の捉え方として,ホモ・エコノミクス(homo economics)という概念があります。これは人間が自己の利益を最大限に考えその為に常に合理的かつ冷静な判断で一貫した行動を行う「合理的経済人」としての人間のモデルです。しかし「衝動買い」という言葉にみられるように,日頃の消費行動を顧みたときに,この前提をきっちり守っていると言い切れない事例が多くあります。
経済自体はお金とか商品の動きを扱う学問ですが,とくに消費に関わる場面において,人間がつねに合理的,冷静な判断を行うわけではなく「主観的で非合理的で感情に左右される消費者」を前提とした経済学モデルが「行動経済学」です。経済の実態は人間の行動を反映したものであるという考え方を基本において,人間の行動特性,心理特性を前提にしたうえで経済学という学問を作り上げていくという立場を主張しました。
以上のように行動経済学の基本的な考え方は「ホモ・エコノミクス(合理的経済人)」相反するものであり,③が誤りということになります。

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