第10回 問題解決 -山頂を目指すには-

知覚・認知心理学(’19)

Psychology of Perception and Cognition (’19)

主任講師名:石口 彰(お茶の水女子大学名誉教授)

【講義概要】
人間は「考える」能力を持っています。考える能力には、大切な事柄を記憶する、問題を解く、どちらが良いか判断する、旅行の計画を立てるなど、意識的に考える能力のほか、見る、聞く、驚くなど、無意識的に考える能力があります。この「考えること」が、広い意味での、認知機能なのです。知覚・認知心理学は、このような、「考えること」の科学です。この講義では、認知の低次過程といえる感覚・知覚等の無意識的な機能から、問題解決や判断・意思決定などのより高次で意識的な認知機能のしくみを解説します。

【授業の目標】
知覚・認知心理学は、実証科学の一員です。実証科学とは、実験を通して得られた事実(エビデンス)に基づいて、仮説やモデルを検証する科学です。この授業では、単に、人間の認知に関する現象や事実を体験し理解するだけでなく、それらの背後に潜む人間の認知のメカニズムを、いかに実証するか、その方法論も併せて理解することが、目標となります。

【履修上の留意点】
履修にあたって、予備知識は特に必要としませんが、高校の生物学の知識があると、理解がより深まると思います。ただし、実証科学の一員として、論理的な思考は、不可欠です。レポートを書くうえでも、論理的なストーリー展開が、求められます。

第10回 問題解決
-山頂を目指すには-

われわれは、常に、様々な「問題」に直面し、それを考え、「解決」している。今回は、知覚・認知心理学で扱う「問題」の分類、問題解決のプロセス、洞察問題や類推に焦点を当て、さらに、問題解決と脳活動との関連を説明する。

【キーワード】
良定義問題、ヒューリスティックス、情報処理アプローチ、問題空間、手段-目標分析、洞察問題、類推


ヒューリスティクス – Wikipedia

ヒューリスティックスとは? 思い込みで失敗しない4つのコツ

ヒューリスティックスとは、人が意思決定をしたり判断を下すときに、厳密な論理で一歩一歩答えに迫るのではなく、直感で素早く解に到達する方法のことをいう。


問題 3 次の①~④のうちから,正しいものを一つ選べ。

① 問題解決における「問題」の分類として,「一般知識問題」,「領域固有知識問題」,「特殊知識問題」がある。
② 問題解決における良定義問題とは,初期状態,ゴール状態,操作,制約が明示的に提供されている問題である。 正解です。
③ 問題解決における「情報処理アプローチ」とは,問題の入力,処理,出力のプロセスを重視するアプローチである。
④ 問題解決で一般的に使われるヒューリスティックスには「山登り法」や「手段-目標分析」があるが,解決に至るには,「山登り法」の方が有効である。

フィードバック 正解は②です。

【解説/コメント】

①印刷教材の第 10 章第 1 節をよく読んでください。問題解決における「問題」の分類として,「一般知識問題」と「領域固有知識問題」があります。「領域固有知識問題」とは医学や法律学など,専門領域の知識を必要とする問題であり,「特殊知識問題」は,それと同義となります。

②よく理解しています。問題解決における良定義問題とは,初期状態,ゴール状態,操作,制約が明示的に提供されている問題です。その一部が欠けていたり,曖昧な問題は,不良定義問題と呼ばれます。「大統領になる」という問題は,ゴール状態は明瞭ですが,操作や制約が不明瞭なので,不良定義問題となります。

③印刷教材の第 10 章第 2 節をよく読んでください。一般に,情報処理アプローチでは,問題の入力,処理,出力のプロセスを重視します。しかし,問題解決における情報処理アプローチでは,問題の入力,処理,出力のプロセスを重視するのではなく,問題の心的表現の形成,適切な心的表現を選択するための探索を重視します。

④印刷教材の第 10 章第 2 節をよく読んでください。問題解決で一般的に使われるヒューリスティックスには山登り法」や「手段-目標分析があり,これらは,ともに,現地点とゴールとの差異を減少させるためのヒューリスティックスです。しかしながら,「山登り法」では,解があっても,それにたどり着けないことがあります。「手段-目標分析」というヒューリスティックスを用いれば,解がある限り,そこにたどり着けます。人は,山登り法ヒューリスティックスを使って,行き詰まることが多いようです。


問題 4 次の①~④のうちから,正しいものを一つ選べ。

洞察問題を解決する過程で,行き詰まり状態に陥ることを,機能的固着という。
② ウェルトハイマーが提唱した再生産的思考とは,問題に直面した時,以前に学習した手続きではなく,再度,新たな手続きを考え直す思考法のことである。
③ 類推は,すでに知っていて理解している問題,概念,状況等を把握し,それを新しい問題や,概念,状況等に適用することである。 正解です。
④ 問題解決機能の脳内基盤は,主として側頭葉内側部の大脳辺縁系である。

フィードバック 正解は③です。

【解説/コメント】

①印刷教材の第 10 章第 3 節をよく読んでください。洞察問題とは,問題解決の過程において,漸近的に解に至るのではなく,手詰まり状態に陥るものの,一瞬のひらめきが生じて,解に至る問題です。その手詰まり状態を,インパスと言います。機能的固着とは,問題解決において手詰まりに陥る一種の思考法であり,モノの使用法は一種類ではないことに気づかない,という特徴を有します。

②印刷教材の第 10 章第 3 節をよく読んでください。ウェルトハイマーが提唱した再生産的思考とは,問題構造を考慮することなく,以前に学習した手続きを使用する思考法です。選択肢の中の,「再度」という用語に惑わされないようにしてください。

③よく理解しています。選択肢は,類推の定義の一種です。「すでに知っていて理解している問題,概念,状況等」ソースまたはベースと呼び,「新しい問題や,概念,状況等」ターゲットと呼びます。つまり,類推とは,ソースの内容をターゲットに適用することです。

④印刷教材の第 10 章後半をよく読んでください。問題解決には,視聴覚機能,過去の記憶を適用する機能,読み書きなど言語機能など,様々な認知機能が関わり,従って,その脳内神経基盤は多岐にわたります。ちなみに,「側頭葉内側部の大脳辺縁系」は,主として,情動発生に関与します。印刷教材第 15 章を参照してください。

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