第10回 ロジャーズと来談者中心療法

-心理学的支援法-

Introduction to Psychological Counseling (’21)

主任講師名:大山 泰宏(放送大学教授)

【講義概要】
この授業では、臨床心理学におけるカウンセリング、心理療法を中心とした、心理学的な相談・支援に関する基礎とその展開について講じる。対象者に対する心理学的な支援の中核にはカウンセリングがありつつも、それは、支援の形や対象となる領域によって、さまざまな展開をみせている。そこでは、どのような専門性が求められ、どのような学びをおこなっていけばいいのだろうか。こうしたテーマについて包括的に論じる。
なお本科目は,公認心理師学部カリキュラムのうち「心理学的支援法」に対応する。

【授業の目標】
・カウンセリングの基礎について学ぶ
・心理学的支援のさまざまな技法の基礎と特徴、その適用範囲について学ぶ
・心理学的支援をおこなううえでの心構えや責務について学ぶ

【履修上の留意点】
この科目は、公認心理師の学部カリキュラム「心理学的支援法」に対応しています。他の関連科目も積極的に履修してください。

第10回 ロジャーズと来談者中心療法

ロジャーズの方法論は、現代のカウンセリングの基礎となっていると言っても過言ではない。ロジャーズのカウンセリング理論とはどのようなものなのか、その意義はどこにあるのかといったことを、米国での発展、そして、日本への導入と展開、理学や教育にどんな影響を与えつつ展開したのかということについて講じる。

【キーワード】
非指示的療法、来談者中心療法、reflection,学生相談、甘え、共通要因


カール・ロジャーズ – Wikipedia

来談者中心療法入門① – ダイレクトコミュニケーション

カール・ロジャーズの心理学理論(受容、共感、肯定的関心、自己一致)と名言まとめ

フロイトから離反したアドラーオットー・ランクの米国での講演に出会い、新しいヒントを得ることになる。

1936年には、カール・ロジャーズが、ランクの存在論的関係論的な療法のモデルに関する一連の講義を依頼している。その結果、ロジャーズのクライエント中心療法の形成にもランクの考え方が大きく影響することとなった。

オットー・ランクと出生時のトラウマ – こころの探検

第14回 土居健郎:『「甘え」の構造』/『続「甘え」の構造』

 

ランバート

Prof. Dr. Klaus Grawe

精神科医 フランク


問題 4 ロジャーズ(Rogers, C. R.)によるカウンセリングの特徴について述べた,次の①~④の中から,誤っているものを一つ選びなさい。

① 人間には本来的に成長していこうとする力があり,それを十分に発現させることのできる人間関係の条件を提供するのが,カウンセリングであると考えた。
② クライアントが言ったことを,そのままオウム返しする「リフレクション」を,重要な技法として重視し,これができれば誰でもカウンセリングをすることができると主張した。 正解です。
③ いわゆる「ロジャーズの 3 原則」として知られるものは,自己一致,無条件の肯定的関心(肯定的配慮),共感的理解である。
④ 自己の経験と自己の概念とが乖離しているのがクライアントの苦しみの一端であると考えた。

フィードバック 正解は②です。

【解説/コメント】

自己成長の可能性が誰にでも本来は備わっていること,そしてカウンセリングとは,それが展開していくような条件の整った場を提供することだというのが,ロジャーズの来談者中心療法の根幹にある考え方です。

②ロジャーズの非指示的なカウンセリングにおいて,クライアントの言葉を繰り返して照らし返していくというのは,基本的な技法ではありますが,これをすれば誰でもカウンセリングができるというわけではありません。この技法が極端にとらえられた歴史があることは,印刷教材でも述べたとおりです。そもそもロジャーズがこの技法を重視したというより,ロジャーズが明示した技法らしい技法はこれのみであったということで,後継者によって極端に強調されたようです。

③この 3 つは暗記できるほど,覚えておいてください。では,それぞれがどのような事態であるのか,きちんと説明できますか?自己一致,無条件の肯定的関心(肯定的配慮),共感的理解

④後期のロジャーズにおいて,カウンセリングでのクライアントの変容の「仕組み」を,その時その時で現象しつつある「自己の経験」と,それを認知し概念化し意味づけられた「自己概念」の不一致から一致へと,自己概念が変化していく(再組織化されていく)として捉えました。

問題 5 ロジャーズ派のカウンセリングの日本への導入および展開について述べた,次の①~④の中から,正しいものを一つ選びなさい。

① ロジャーズのカウンセリングは,すでに大正時代の終わりには,日本で知られるようになっていた。
② 戦後に日本で急速に広まったのは,このカウンセリングの考え方が戦後民主主義の理念に合致したことも一因である。 正解です。
③ 日本でのロジャーズの受容は,米国と比べて,来談者中心・人間中心の思想の本質が深く理解され,単なる技法主義に陥ることはなかった。
④ ロジャーズの非指示的技法は,セラピストとクライアントとは,本来別々の人間であり,簡単にはわかり合えないということの自覚をもたらすものとして,理解された。

フィードバック 正解は②です。

【解説/コメント】

①ロジャーズのカウンセリングの考え方や技法が日本に入ってきたのは,第二次世界大戦後の教育改革を通じてでした。年代を整理してみると,大正時代はロジャーズがまだ青年期のときですね。

②これが正解です。では,どのような点で合致したのか,挙げることはできますか。・・・個人の尊重,導く側と導かれる側が対等,自由な意見や感情の表出を重視,成長を信頼して温かく見守る,などです。

③Q4 でも述べたように,非指示的技法は,オウム返しをする技法として見なされ,オウム返しをすればカウンセリングになるのだとさえ誤解されました。

④日本では主語が省略されることもあり,クライアントの発した言葉がリフレクションされると,セラピストとクライアントが同じ感情状態に浸るようなニュアンスを持つ特徴があります。

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