「イギリスでいちばん退屈な男」と新聞に書かれても、私の人生は情熱に満ちている

「私は『取り憑かれている』と他人は言うが、どうも人聞きが悪い。『情熱的』と言ってほしいところだ」──ケヴィン・ベレスフォードはそう語るPhoto: Stephen Burk​e / Guardian / eyevine

「私は『取り憑かれている』と他人は言うが、どうも人聞きが悪い。『情熱的』と言ってほしいところだ」──ケヴィン・ベレスフォードはそう語る
Photo: Stephen Burk​e / Guardian / eyevine

Text by Kevin Beresford

 

新聞には「イギリスで最も退屈な男」と書かれ、3人の元妻全員には「つまらない男」だと思われた。4人の子供たちには恥ずかしがられている。それでも、彼の人生はどこかうらやましく、豊かなものに思われる──。

普通こそ至高

私はバーミンガムのスモールヒースで育った。ストリートギャング団「ピーキー・ブラインダーズ」の縄張りとして有名な土地だ。

高校まではサッカーと歴史が好きで、アストン大学ではアートとデザインを学んだ。父親が運河船の上で生まれたこともあって、バーミンガム運河に興味をもった。

私が退屈な男として名を馳せるようになったのは2018年、「退屈な男クラブ」から「アノラック・オブ・ザ・イヤー」に選出されたときだ(アノラックは「つまらないことに熱中する人、オタク」の意味)。

このクラブは、平凡さに喜びを見出す人々による国際規模の団体である(男性以外も歓迎)。我々のモットーは「普通を祝福すること」だ。メンバーには排水溝マニアや、2万本の牛乳瓶を集めたコレクターなんかがいる。

アノラック・オブ・ザ・イヤーの受賞後、新聞各紙は私を「イギリスで最も退屈な男」と呼ぶようになった。

ウケ狙いのつもりが大ヒット商品に

私はこれ以前にも、メディアとちょっとした関わりを持ったことがある。私はウスターシャー州レディッチで小さな印刷屋を経営しているのだが、2003年、常連客向けにカレンダーを作ろうと思い立った。

レディッチには刑務所が3つあり、映画館はなく、その代わりラウンドアバウト(環状交差点)がものすごくたくさんある。そこでウケを狙い、私と従業員たちは『レディッチ・ラウンドアバウト・カレンダー』を作ったのだ。

ある金曜日の夜、私がパプで飲んでいると友人から電話があり、「あのカレンダーが(イギリスで人気のトーク番組である)グラハム・ノートン・ショーに出てる」と言われた。

司会のグラハムとゲストが、ゴージャスなギリシャの島々のカレンダーをパラパラとめくった後、それを私たちのラウンドアバウト・カレンダーと比べていたのだ。ものすごく嬉しかった。

これによって私の人生は変わった。カレンダーの注文は激増。当初は100部しか刷らなかったものが、まもなく世界中で売れるようになった。

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ラウンドアバウトも、よく見れば趣深い……? Photo: georgeclerk / Getty Images

ランドアバウトだけでは飽き足らず…

2004年、私は出版社からのオファーを受け『グレートブリテン島のラウンドアバウト』という本を作ることになり、これが初版で2万冊売れた。

2005年には、『空(的な所)から見るラウンドアバウト』を出版した。このタイトルになったのは、私が橋の上や木の上からラウンドアバウトを撮影したからだ。

そして建築業協会が「今度は駐車場でもやりませんか」と言うので、『パーキング・マッド──天国(あるいは地獄)から見る駐車場』という本と、『イギリスの駐車場』と題したカレンダーを出版した。

また、レディッチ・ラウンドアバウト・カレンダーの続編として、『ベスト・ブリティッシュ・ラウンドアバウト・カレンダー』がシリーズ化した。私はラウンドアバウトマニアたちの助言をもとに、カメラを持ってイギリス中を旅して回った。

ケント州のラウンドアバウトを鴨の泳ぐ池とともに撮影し、ヨークシャーのラウンドアバウトには回る風車を添えた。さらにはベンチ、バスの路線、電話ボックス、その他イギリスの日常における一見面白くもないものに焦点を当てたカレンダーをいくつも作った。

刑務所や昔の精神病院のカレンダーを作ったこともある。私は歴史の染み込んだ、薄気味悪い題材が大好きなのだ。とは言いつつ、リサイクル施設のカレンダーも作ってみようかと考えているのだが。

中国とアメリカからテレビの取材班もやってきた。私はお昼のテレビ番組に出演し、そのなかにはあの「シャロン・オズボーン・ショー」もあった。緊張をほぐすため、出番直前の楽屋でワインを1本飲み干したが、番組はつつがなく進行した。

「ロード・オブ・ザ・リング」(非公式)に就任

私は「イギリスラウンドアバウト愛好会」の会長──非公式の称号は「ロード・オブ・ザ・リング(輪の支配者)」──にも就任し、「駐車場愛好会」の創始者(であり唯一の会員)にもなった。私は「取り憑かれている」と他人は言うが、どうも人聞きが悪い。「情熱的」と言ってほしいところだ。

4人の息子は私の趣味をかなり恥ずかしがっているし、3人の元妻全員にはつまらない男だと思われた。寝室での話ではなく、その他すべての家庭生活においてである。

しかし、女性はつまらない男を好むものだと思う。夫が「納屋でマッチ棒細工のウィンチェスター大聖堂を作ってくるよ」と言っているうちは、「本当は何か他のことをしてるんじゃないかしら」などと悩む必要はないのだから。

実のところ、私は自分が退屈な男だとは思わない。私の趣味が退屈なだけだ。私は本当は意外性に溢れる男である。トランスミュージックのファンで、クラブにもこないだ行ったばかりだ。2月に迎えた70歳の誕生日は、男友だち2人とスペインのマラガで過ごした。

いま書いている小説の内容は…

1年に10冊のカレンダーを出すことが、私の目標だ。私は日々の生活からインスピレーションを受ける。イギリスの有名な写真家であるマーティン・パーから「君の作品は素晴らしい」とメッセージをもらったこともある。最高の気分だった。

2021年の『レディッチ・ベンチ・カレンダー』は2000部の売り上げで、私が昨年発行したなかでは2位だった。いちばん売れたのは『(サッカー選手の)ジャック・グリーリッシュのふくらはぎの素晴らしき世界2022』だ。

私はアストン・ヴィラのファンの1人として、グリーリッシュがマンチェスター・シティに移籍したことへの復讐のつもりでやったのだが、多くの人がガールフレンドへのプレゼントに購入したらしい。

私はセミリタイア状態なのだが、こうした趣味のおかげて生きていられる。現在、自分のことは作家であると考えており、エイリアンにさらわれたバーミンガム市民についての小説を書いている。そして、自分が撮った写真がイギリス中、さらには外国の家の壁に飾られていることを思い、良い気分に浸るのだ。

「退屈な男クラブ」には年1回出席するのだが、会員が一堂に会してみると、我々のカリスマ性には素晴らしいものがある。そこで私は「イギリスで最も退屈な男」という名誉ある称号を冠しているのだ。

わたしたちの「数奇な人生」

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